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本当のはじまり

18話 店と周りの人々と

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二人が働く店は、オーナーがちょっと変わっていて
客の事だけじゃなく、従業員の事を考えて、風変わりな店休日を設けている。
平日に来たい客もいれば、休日にしか来れない客もいる
曜日を固定して休みにすれば、その同じ曜日が休みの人たちは店を利用出来ないではないか。
だからと言って、年中無休にすると従業員全員でどこかに行ったりも出来ないだろう。
それに、子持ちの場合は休日に休みが欲しいこともあるだろうし。

そんなわけで、カフェも雑貨屋も「1」のつく日は店休日と決まっている。
これにより、大晦日と元旦は休みだし、31日と翌月の1日も休みだから、連休になる。
従業員同士の交流を深めるもよし、家族サービスに努めるもよし、旅行に行くことも出来るし、気になる店に行くことも出来る。
もちろん、自宅でのんびりするもよし。

その代り、そんなに給料は良くないかもしれない。でも、そんな姿勢のオーナーの元だからこそ、働きやすく長く続けられる。離職率は低く、バイトの募集もすぐ埋まる。
早朝から深夜にかけての長い営業時間も、それぞれに客がついていて、カフェはいつもにぎわっている。

朝番のシェフは、前日に仕込まれたパンを焼き、スープの仕上げをして、客のオーダーに沿って料理を仕上げる他、ランチの仕込みもおこなう。
昼番のシェフは、その仕込まれた料理の仕上げをして、都度の注文に応えつつ、時にはパン生地をこね、夜の仕込みもおこなう。
遅番のシェフは、仕込まれた料理の仕上げをして、都度の注文に応えつつ、翌朝の仕込みを行う。
誰かが休みの日は、アシスタントスタッフと共にその穴を補う。

スイーツ担当は別にいて、日々のスイーツやペストリーなどを作りつつ、料理のフォローもおこなう。

それでなんとか賄っているので、店休日以外の個々の休みも取りやすくなっている。

タモツは基本昼番で、10時ごろから19時頃までの勤務だ。
ランチタイムには、少食の人から大食の人までを対応すべく、作り置きで冷たくても美味しいデリも豊富で、持ち帰りの対応も行っており、週末などは貸切パーティも入り、昼番が一番忙しい。
それでも、効率よく作業を行えば、残業はほぼなしで帰宅出来る。

メグミと付き合うようになって(つまり、毎日メグミが家に来るようになって)、タモツの作業スピードはアップして、効率もどんどん良くなっている。
もちろん味は一切落ちておらず、むしろ洗練されてきているのでは?と、周りは「シェフにいったい何が?」と思っているところだ。

そんな中でも、昼番のシェフのタモツが挙動不審になる時間がある。
それは、雑貨屋のメグミがランチ休憩に来るときで、「隣のメグミさんのランチお願いします」とフロアースタッフの声が聞こえると、いつにもまして素早く調理盛り付けを行い、自らが席まで持っていく。そして、なんやかんやと理由をつけてはカフェカウンターやデリケースの辺りをうろうろするのだ。

それを数日目撃したスタッフは「もしかして、シェフは片思い中なのでは?」と思うのだが、人生経験豊富でパートナーのいるスタッフは、また違う印象を持って見ていた。

というのも、地味で大人しい印象だったメグミの雰囲気が最近ガラッと変わり、下向きだった目線が上向きになり、瞳はキラキラと輝き、とても楽しげに見えるようになったため、この変化を「彼氏が出来た」ことによるものではないか?と想像していたからだ。

つまり、挙動不審ながらも残業なしになるようてきぱきと働くシェフと、突然開花したスタッフを結び付けて考えたのだった。
すごい観察眼である。

しかし挙動不審なのはシェフだけで、当のメグミの対応はいつも通り、スタッフににこやかに接し、客の邪魔にならないようにひっそりと隅の席に座り、大人しくランチを食べ(相変わらず美しい所作で)、自分で食器を下げてくる。

そして、開花したメグミは顔立ちは地味ながらも、人を惹きつける何かが出てきたのか、男性客や男性スタッフの注目を浴びるようになっていて、率先してオーダーを取りに行ったり(スタッフのランチは決まっているのだが)、ちらちらとメグミがランチを食べるさまを見ていたり、雑貨屋に行って何か尋ねたり、注文したり購入したりと、少しだけ騒がしくなっていた。

それをやきもきしながら見ているタモツは、今日もカフェカウンターでうろうろしている。
「また、イケメンがそんな顔してー」
と、やってきたのは雑貨屋の店長リョウコ。
「リョウコさん、ランチですか?」
「うんにゃ。今日は休日返上で事務仕事なのーだから、頭すっきりブレンドちょうだい」
「ありませんよ。そんなブレンド」
「なきゃ作ってよー。テキトーに作って、頭すっきりしますよ。って言って出してくれたら、プラシーボ効果とかなんとかで利くかもしれないじゃない」
めちゃくちゃなことを言うなぁと思いながらも
「じゃあ、フレンチプレスでお出ししますよ」
と、珈琲を淹れる用意をする。
通常はエスプレッソも抽出できるコーヒーマシンで珈琲を出すが、客の希望によりネルドリップやフレンチプレスも出しているのだ。

ランチを食べ終えたメグミが、カウンター席に座るリョウコと目があい、おいでおいでと手招きされるまま、リョウコの所に行く。
「店長、お疲れ様です。今日はお休みのはずじゃ?」
「事務仕事たまっててね、しぶしぶ今さっき来たところなんだけど、頭が回らないから珈琲飲んでからって思って。えへへ。メグちゃん休憩何時まで?」
「まだあと20分くらいあります」
「じゃあ、隣においで」
言われて席に戻り、食べ終わったお皿を持っていこうとすると、男性スタッフが飛んできて片付けてくれる。にっこり笑顔で礼と詫びを言うと、すこし照れたように応じられた。
水のグラスだけを持ってリョウコの隣に座る。
「今日のランチはなんだったの?」
「今日は、デミグラスソースのかかったオムライスでした。ごちそうさまです」
「美味しかった?」
「はい。いつも美味しくて幸せです」
嬉しそうに微笑むメグミを見て、にっこりと笑い返し
「それは良かったね。最近、すごく楽しそうだけど、何かいいことあった?」
「そう見えます?」
「見えるよー。なんだかイキイキしてるもん。わたしなんかへとへとー」
「大丈夫ですか?事務仕事だけは代わって差し上げられませんもんね」
カフェカウンターに突っ伏していたリョウコが、メグミのその言葉を聞いて笑う。
「ありがとう。その言葉だけでも嬉しいよ。だからランチデザートをごちそうしてあげよう」
「やったー」
リョウコはこうしてたまにスタッフと交流して、親睦を深め店の雰囲気を良くするように努めていた。もちろん、ひいきはせずに平等にふるまっているので、この後の短い休憩時にほかのスタッフにもデザートが供される。

「今日のデザートは、クリームブリュレかショートケーキですよ」
カウンターにやって来たスイーツ担当のミサキが教えてくれる。
カフェランチのデザートは数種類用意され、こちらも少量食べたい人から、ふつうに食べたい人まで対応すべく、S、M、Lの設定があり、ランチデザートはSで、大きく作られたデザートをディナースプーン一掬い分としている。
「むむっ、それは悩みますね。でも、さっきオムライスで卵を食べたから、ショートケーキにしようかな」
「了解。でもケーキにも卵、使っているよ?」
「わかってますけど、ブリュレの方が卵っぽいですよね?」
「ふふふ。たしかに」
ケーキをすくって皿に乗せて、メグミの前に出してくれる。
そしてリョウコの前に、フレンチプレスの珈琲が出てくる。
「頭すっきりはっきりブレンド、お待たせしました」
「ありがとー。すっきりはっきりしたら、事務仕事もはかどるよ。しかし、メグミが溌剌としているのは、やっぱり若さかなぁ。最近、何かした?」
「言え、とくには・・・あっでも」
「なになに?」
リョウコもミサキも、シェフとメグミが付き合っていると思っているので、ここで打ち明けられることをちょっとだけ期待した。
「最近、すごくよく眠れるんです。前は寝つきも悪くて、やっと寝てもちょっとした物音で起きたりして浅かったのが、朝までぐっすりなんです」
にこにこ笑いながら答えられたが、それにより、リョウコの頭の中ではさらに妄想が膨らむ。
(セックスの後って、よく眠れるんだよなーまさか、そこまで進んでいるとは)
「へーわたしはてっきり彼氏でも出来たかと思ったよ」

「「「「「「えっ」」」」」」
(リョウコさん、我慢できなかったの?)とミサキは思った
聞き耳を立てている男性客やスタッフは、その線を全く考えていなかったので驚いてつい声を出してしまった。
周囲やミサキの反応も、固まったまま動かないタモツのことも、にやにやと笑うリョウコのことにもメグミは気づかず、頬を赤らめて
「あ、それはソウデス」と答えた。
「やっぱりー」(相手を追及したいところだけど、今日のところはやめておこう)とリョウコ
「そうなんだー」(シェフ、顔がにやけてますけど?つっこみませんよ)とミサキ。

二人が付き合い始めたことは、特に隠すつもりもないけれど、あえて言うことでもないとして、誰にも言っていなかったけど、とりあえず恋人が出来たことくらい自分で言ってもいいかなぁとメグミは思っていたので、いい機会だから認めてしまった。
相手が誰かはそのうち分かるだろうし、なんとなく恥ずかしいから自分からは言わないでおこう。そう思った。
そして、タモツのことをチラリとも見なかった。もし見たら、勘のいい二人にはすぐにばれてしまうだろう。そう思ったけれど、すでに勘付かれていることにまで思いが至らなかったのは人生経験の差というものだ。

「あ、そろそろ戻らないと。ごちそうさまでした。ランチもケーキも美味しかったです」
さっと立ち上がると、跳ねるようにしてカフェを後にする。

がっかりした表情でその姿を見送る男性客とスタッフを、呆れ顔で見たミサキは心の中で
(他人が見つけて磨いたダイヤモンドを、ただで拾えると思うな)などと思っていた。

「あの子、うちの子とあんまり歳変わらないんだよね・・・そうかなぁって思ってたけど、複雑な気持ちになったわ」
言いながらリョウコはシェフをジト目で見るが、シェフは嬉しそうに厨房に引っ込んで行ってしまった。
「リョウコさんも、早く始めれば早く終わりますよ」
「そうね、頑張るよ」
ため息をつきつつ、しぶしぶ事務作業に戻ることにしたリョウコは、頭の中の妄想を吹き飛ばすように数字と格闘して作業を終えるのだった。

メグミが働く雑貨屋は、店長リョウコの手腕がいかんなく発揮され、店には季節に応じた品々や、全国から届く手作りのアーティスト作品が委託販売という形で置かれているため、定期的に覗くファンも少なくない。
ただ、この委託販売のせいで事務作業が煩雑になっている事実は否めないが、リョウコが好きで取り扱っているため、誰にも文句が言えない。

カフェでブレンドされた珈琲豆や、茶葉、クッキーなども並んでいるため、カフェの客が流れてくることもあり、ついでにと、おしゃれな文房具などを買い求めてもらっている。

雑貨屋の店員は店長と、メグミを含めた社員が二人、フリーターが一人、学生バイトが一人で、常時最低二人という体制だ。

メグミは最初、バイトで雇ってもらったが、その頑張りが認められて今年から正社員に雇用された。これは店長のおかげで、とても感謝している。

その日の夜、いつも通り駅前のスーパーで待ち合わせをしてタモツの家に帰り、二人で食事の用意をして、二人で食べ、愛し合った。
メグミだけが仕事の日は、メグミを送り出した後、タモツは洗濯をして掃除をして、手の込んだ料理をしたりして、メグミの帰りを待つ。
タモツだけが仕事の日は、タモツと一緒に家を出て、メグミは自宅に戻って洗濯をして、掃除をして、洋服の雑誌などを見ながら次に作る服を考えたりするものの、ここのところ制作意欲はなく、そわそわとタモツからの電話を待って過ごしている。恋愛ボケ状態だ。

しかし、メグミに新たな悩みが発生した。
食べ過ぎ。である。

今までは、カフェでランチをしっかり食べることから、朝食は抜き、もしくは果物や飲み物だけで軽くすませ、夕食もごく軽くすませていたのに、タモツと一緒にいるようになってからは、朝も夜もしっかり食べている。
運動量は変わらないのに、食事量が増えれば、当然体重も増えるし、肉もつく。
ただでさえ、細マッチョなタモツを見て、自分のぽよんとしたお腹を気にしていたメグミにとって、かなり重大な問題だ。
鏡を見ると、こころなしかほっぺたもふっくらしてきたように思う。

でも、タモツの美味しいご飯を食べないという選択は絶対に出来ない。すっかり餌付けされたような状態だ。
これはタモツにも相談できない。前にも言ったことがあったけど、
「ぽよんとしたお腹も可愛い」の一言で済まされてしまったのだ。
やっぱり運動するしかないかなぁ、
タモツのように、自転車通勤するというのも手かもしれないけれど、電車で3駅という距離は近いようで遠い。しかも途中になかなか手ごわい坂道がある。

「はぁー」
品出しをしながら、思わずため息をもらすと、近くにいた先輩社員のカオリに、すかさず突っ込まれる。
「あらら、最近可愛くなったと評判のメグちゃんがため息をつくなんて?」
「えっ?」
可愛くなったなんて、タモツ以外の誰が言うというのだろう?とメグミは心の底から不思議に思った。
「恋人が出来て、生意気に眉毛を整えたりしてねー」と、ニヤニヤとからかってくる。
「こっこれは、美容室のおねえさんがサービスって言って、やってくれただけですよ」
今までは、あまり自分の見た目に手をかけてこなかったメグミだけど、可愛いと言ってくれる人が出来たら、もっと可愛く見せたくなるものなのか、本当は眉毛カット(500円)を受けたのだ。
「ふーん。で、そのため息はなぁに?」
「えっと、食べても太らない方法はないかなぁって」
「ないわ!それはみんな思うことだけど、その答えはない!」
やけにきっぱりと答えられた。
スリムだけど出るところは出ているカオリにも、人知れない努力があるのかもしれない。
「そうですよねー」
がっくりと肩を落とすメグミ。
「そうだ、カフェのランチに『少食プレート』ってのがあるから、これからそっちにしたら?」
「そんなこと出来るんですか?」
「出来るよ。少食プレートは基本作り置きデリとスープだから、手間もかからないみたいだし。なのにいろいろ食べられるからいいんだよね。わたしもたまに頼んでるよ」
「えっじゃあ、わたしもこれからはそれにします!」
今までは席に座ったら勝手に出てくるものを食べていたので、全然知らなかった。

そして昼休憩。
いつものように隅の席に座ったメグミは、水を持ってきてくれたスタッフに
「今日は、少食プレートをお願いできますか?」
と、おずおずと尋ねた。
カオリから注文出来ると言われたものの、初めての注文なので一応確認したのだ。
「もちろん、出来ますよ。・・・でも、ダイエット?」
いぶかしげな顔で答えられ
「あっいえ、ダイエットってわけじゃ、でも、最近食べ過ぎかなぁって思って」
と、苦笑交じりに答えた。
「そうなんだ。・・・少食プレートは、ご飯かトーストが選べますけど、今日のデリに会うのはトーストだと思いますけど、どうします?」
「あっでは、そのお勧めのトーストをお願いします」
用意してきますと答えてスタッフは厨房へ。
いつも出されたものを食べていたので、不思議がられたのかなとメグミは思ったのだが
その男性スタッフは厨房に入ると
「隣のメグミさんのランチ、今日は少食プレートをトーストで希望だそうです」と伝えたのち
「ダイエットなんて必要ないのに。そんなことさせる恋人なんてやめちゃえばいい」と、ぶつぶつ文句を言っていた。
「女の子って、標準より痩せていたいものよ。シェフ、わたしもランチ休憩、少食プレートでお願いします。パン、二人分焼きますねー」
ミサキが便乗して、プレートを頼む。
タモツは
(メグミがダイエット?太ってなんかいないし、そんなこと言ったことも思ったこともないぞ?)と不思議に思いつつ、フロアースタッフの言動に軽い怒りを覚えて顔をしかめながら、プレートに料理を盛り付けていった。

「メグちゃん、私もここで一緒に食べていい?」
メグミと自分の分のプレートを持って、メグミの席にやってきて答えも待たずに目の前に座る
「ミサキさん、お疲れ様です。珍しいですね。こっちで召し上がるの」
カフェのスタッフは基本、裏の休憩室で休憩するため、表の席に来るのは珍しく、メグミが誰かほかのスタッフとランチを取ることはなかった。
「たまにはね。それに、最近愛されオーラがすごいメグちゃんに、ちょっとパワーを分けてもらいたくって」
と、ふふふと笑う。
「アイサレオーラ???」
「そう。愛されオーラ。恋人が出来たんでしょー。ぴかぴかとまぶしいくらいに輝いて見えるわよ。メグちゃん」
自分では分からないことなので、首をかしげるばかりだが、素敵な先輩とランチ出来るのは嬉しいので、そのまま受け入れることにした。

「それにしても、少食プレートで足りるの?いつもは普通のランチを食べているじゃない?」
「大丈夫です。実は、その、食事量が増えているんです。だから、どこかで調整しないと食べ過ぎになっちゃうんです」
「あー」
恋人がシェフなら、それもあり得る話だと勝手に納得するミサキ。
「まぁ、このプレートも量は少ないけど品数が多いし、満足感は得られるよね」
「はい。どれもすごく美味しいです」
「そうだ、実はこれはねぇ、デザートも食べたいけど、それだと食べ過ぎだしお財布にも厳しくなるっていう女性の為に開発されたものなのよね」
「へぇー」
「で、ご飯かパンを選べるけれど、ちょっと料金を追加すると、マフィンに変えられるのね」
「デザートの代わりになる?」
「そうなの。だから、おからとかオートミールを使って、砂糖を使わないで満足感を得られれつつヘルシーなマフィンをいくつか用意してあるのよ。知らなかった?」
「知りませんでした。初めて来たときに、何を食べるかすごく悩んだので、ここで賄いランチを食べるときはいつもお任せにしてたのです。何を食べても美味しいですし」
「いろんなメニューあるもんね。わかるわぁ。わたしも基本はお任せにしてるからね。でね、少食プレートは、いつものランチより安いから、私たちは追加料金なしでマフィンに変えられるんだよ」
「えぇっ」
「繊維質も多くてヘルシーに作ってるから、今度試してみてよ」
「ミサキさんのマフィン、美味しそうですもんね。スイーツも美味しいですし。次回はそれにします」
「ふふふ。ありがとう」
少食プレートは基本冷たいデリだけど、温かいスープとトーストがついていてどれも美味しく満足したし、ミサキから良い情報ももらえてうれしく思うメグミだった。

そのあとも、女子トークを楽しんでそろそろ昼休憩が終わるからと席を立とうとした時、さきほどのスタッフが通りがかりに
「ダイエットを勧める彼なんてやめた方がいい」
と言ってきた。
ダイエットじゃないと否定したはずなのにと、メグミは驚いてぽかーんとしてしまったし、カフェカウンターでうろうろしていたタモツの顔が険しくなったけど、ミサキがそのスタッフに
「他人が磨いて光らせた小石に目をつけても遅いよ。男なら自分で原石を見つけていらっしゃいな」
と、メグミには意味が全く分からないことを言って追い払った。そして
「メグちゃんは、そのまま思うがままにいた方が、これからの人生うまくいくよ」と、やっぱりよくわからないアドバイスをくれたのだった。
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