召喚魔法使いの旅

第207話

　試合舞台に火だるまのまま落下していくアスランを見て、三年生は誰一人勝てずに終わるのかと言う思いが湧く。

　そんな中でもアスランを応援する声が上がる。それは隣で試合を観戦していたアランだった。

　「みんなもアスラン会長の応援をしましょうよ！」

　そんなアランの言葉に控え室に居た者たちはアルも含めてアスランを応援し始めた。

　そして、試合舞台の石畳の上に落下して行くアスランに土魔法のイノシシが迫ると、応援していた声も止まってしまう。

　だが、火だるまの状態のアスランは落下した勢いも利用して土魔法のイノシシを聖雷を纏う剣で両断した。

　これには控え室の第三育成校の者たちだけでは無く、闘技場内で観戦している者たちも興奮したのか、歓声の声が至る所で上がる。

　これでカリス・リリアントが作り出した魔法の生き物は炎のライオンだけになった。

　それでも魔法で作られた生き物だから追加を作り出すのでは無いかと思っていたが、カリス・リリアントがそのような様子を見せることは無い。

　火だるまのアスランも試合舞台に降りると全身から闘気を放出することで全身を包み込んでいた火を吹き飛ばし長剣を構える。

　その様子には火だるまだった影響が無いみたいだ。だが、影響はあるのだろう。アスランの顔色はそれほど良いようには見えない。

　それでも気丈に振る舞うアスランに炎のライオンとカリス・リリアントの魔法が襲い掛かる。

　炎のライオンの援護の為か、カリス・リリアントは攻撃には火魔法を使用し、妨害には土魔法と風魔法を使用している。

　一人と一匹の巧みな連携で繰り出される攻撃や妨害を受けながらもアスランは戦い続ける。

　素早く行なわれる攻撃の数々により大技を放つことが出来ないアスランは、このままジリ貧になり負けてしまうのでは無いか。

　そんな思いが湧く中、それでも戦い続けるアスランにアルや控え室の面々も応援が盛り上がる。

　そして、アスランは大胆な行動に出た。大技を放つ為に準備を始めたのだ。

　そんな大技を放つ準備をするアスランに隙が出来たと炎のライオンとカリス・リリアントが畳み掛けるように攻撃を行なう。

　攻撃を受けて傷付くアスランはそれでも準備は止まず、とうとう大技を放つ準備を終わらせた。

　長剣に魔闘気と聖雷を溜め込んだアスランは、それを解放しながら横薙ぎに炎のライオンとカリス・リリアントを攻撃する。

　全てを薙ぎ払う。そんな一撃にカリス・リリアントは防御の為に壁になる魔法を幾つも発動する。

　だが、そんな三種類の属性の壁魔法は簡単に切り裂き破壊される。

　それを見てカリス・リリアントは飛び上がり、風魔法で空を飛ぼうとするが長剣から解放された迸る聖雷は、空を飛ぶカリス・リリアントを狙うように向かって行き、カリス・リリアントに当たると撃ち落とし、試合舞台に黒い煙を少し上げさせながら落下した。

　落下したカリス・リリアントを守る為に炎のライオンは、カリス・リリアントに覆い被さり魔闘気と聖雷の攻撃を庇う。

　魔闘気と聖雷の一撃が炎のライオンとカリス・リリアントを通り過ぎると、その場所にはカリス・リリアントしか居なかった。

　炎のライオンは魔闘気と聖雷の一撃に耐え切れずに消えたのだろう。その炎のライオンが庇ったカリス・リリアントも全身からプスプスと黒い煙を上げている。

　そして、黒い煙を上げていたカリス・リリアントが不思議な光に包まれた。

　炎のライオンが庇っていても魔闘気と聖雷の一撃にカリス・リリアントは耐えられなかったようだ。

　そこで審判員は第三育成校三年生大将アスランの勝利を宣言した。

　審判員の判定を聞いて控え室だけでは無く闘技場内は歓声に包まれる。

　歓声に包まれる中、両三年生大将選手たちは担架に運ばれて行く中でクリスタル王国トーナメント大会学生部門初日は終わった。