召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ

文字の大きさ
上 下
170 / 248

第170話

しおりを挟む
 宿に帰ると、宿のロビーでアランとジェイドが話をしているのが見えた。すると、二人もアルが宿に帰って来たのが見えたようだ。

 「おーい!アル!話しようぜ!」

 「そこまで大きな声を出すな、アラン。アルにも聞こえている。」

 大きなアランの声がロビーに響き渡り、ジェイドにアランは注意されている。そんな声を聞きながら、アランに呼ばれたアルは二人の元に向かう。

 「二人共、俺を呼んだけど、何かあったのか?」

 「外に出てたみたいだからさ。どうしたのかと思って呼んだんだよ。」

 「ああ、そう言うことか、大神殿まで観光に行っていたんだよ。」

 二人から更に聞くと、アルが宿を出る少し後に二人は一度昼過ぎに宿に帰り、部屋を訪ねて一緒に王都の観光をしようと思っていたようだ。

 それを聞いて一緒に観光をして、大神殿に付き合って貰っていたら迷惑を二人に掛けただろうと思う。

 創造神が居たあの場所に意識が向かった場所から戻って来た時にかなりの時間が経っていたからだ。

 流石に創造神との話を二人にすることはしないが、二人には生徒会同士での会談で知り合った王都出身の一年生から聞いたことを話していく。

 「じゃ、俺は一旦部屋に戻るから。」

 「夕食でな!」

 アランとジェイドの二人と別れると、宿の自室に部屋に帰り、部屋の中に入るとすぐに召喚獣を召喚する。

 『あのジジイ、ヤバい奴だったのです!』

 『召喚玉の中に居る、私たちのことを観察していました。それが感じられましたよ。』

 『……強いのに……それが……分からなくて……少し……怖かった。』

 召喚したと同時にユキたちは少し怯えているのか、念話の声が震えていた。

 大神殿で創造神との遭遇からここまで一時間は過ぎている。だが、それくらい時間が経ってもユキたちからしたら怖かったのかもしれない。

 ユキ、シェーレ、サフィ、三匹の召喚獣たちを落ち着かせると、何故そこまで怯えていたのかを聞いた。

 どうやら創造神と話していたあの時、創造神は俺の意識だけでは無く、ユキたちが入っていた召喚玉もついでとばかりに連れて来ていたようだ。

 話していた間にもユキたちを観察していたようで、更に聖の力を渡す時に何かしらの干渉をしたのでは無いかとも言っていた。

 「今のところ何か調子が悪かったり、不調はあるのか?」

 『無いと思うです!』

 『私も感じません。』

 『……元気。』

 とりあえず、ユキたちの体調は良いみたいで安心する。けれど、それなら干渉が起きた時に何が起こったのかと不思議に思う。

 「もしかしたらユキやシェーレ、サフィも俺が貰った聖の力が使えたりはしないか?こんな感じにさ。」

 聖の力を渡された時に使い方もある程度手に入れたアルは聖の力を手のひらから球状にして出した。

 『すごいです!でも、私は使えないのです。』

 『あるじ様、私も使用出来ません。』

 『……使えないよ。』

 聖の力を渡された際の干渉だからユキたちも使えるようになっているのかと思ったが、それは違うようだ。

 そして、アルが手のひらから聖の力を球状にして出していると、身体の内にある聖の力を溜め込んでいた何かから聖の力が抜けて行くのを感じて、球状の聖の力を消滅させた。

 結局、聖の力を受け取った時にユキたちに起こった干渉が何だったのかは分からず仕舞だった。

 それからアルは受け取った聖の力がどんな感じかを簡単に調べ始める。

 身体の内側に意識を向けて、消費した聖の力の量と溜め込める最大量や聖の力の操作、制御なども調べていった。

 『あるじ様、夕食の時間になりますよ。』

 「ありがとう、シェーレ。教えてくれて。追加料金を払えば召喚獣の夕食も準備してくれるからな。一度、送還するぞ。」

 『昨日も朝も美味しかったから楽しみなのです!』

 『私も今日の夕食が何か楽しみです。』

 『……ぼくも……楽しみ。』

 ユキたちを送還すると、アルは一階にある食堂に移動して行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。 世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。 ざまぁ必須、微ファンタジーです。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...