異世界大戦

ゴロヒロ

文字の大きさ
上 下
10 / 24

第10話

しおりを挟む
 後衛組から繰り出された遠距離攻撃の数々を潜り抜け、更に前衛組の最前線を通り抜けた吸血鬼世界の侵略者の1種である人間の子供や女性くらいのサイズの犬が駆け寄り牙を剥き出しにして飛び掛かって来た。

 「グルガァアアア!!!!!」

 スキル【武術】を取得した事で得た知識通りに俺は拳を握って腕を張りかぶる。

 「ハッ!!!」

 飛び掛かって来た犬の鼻面を命中する瞬間に力を込めて思い切り殴り付ける。

 「ガギャイン!!?」

 50キロは超えているのではと思われるほどに大きな犬だったが、そんな犬を俺の拳から繰り出されたパンチが弾き飛ばした。

 犬は地面を転がりピクピクと身体を痙攣させているがまだ生きている。

 そんな犬にトドメを刺すべく俺は動き出し、接近しても未だにピクピクしているだけの鼻の部分が陥没している犬の頭部を狙って足を振り下ろし力の限り踏みつければ頭蓋骨を粉砕し辺りに脳漿が飛び散った。

 今さっき殺した犬以外はまだ前線を突破していないが、それも時間の問題か。それにしてもこの3人はどうしたものか。

 チラッと後ろを見るとそこには頭を踏み潰して殺した俺に恐怖の表情を浮かべて見る石田、井上、佐藤の姿があった。

 それだけじゃなく周りの選ばれし者たちの表情も恐怖や嫌悪などの表情を浮かべている者が多い。

 コイツらはこれから自分たちも殺し殺される様な環境になる事を理解しているのだろうか?

 他人の心配をするよりも自身がここまで簡単に犬の様な生き物を殺して、罪悪感を感じていない事に少しだけ落ち込んでいるが、それよりも初めての戦いの高揚感や興奮の方が強かった。

 「中衛部隊に居る者たちは前線の者たちと交代だ!!前衛部隊は中衛部隊がたどり着いたら、後方へ下がり後衛組の回復部隊から回復して貰え!!」

 前衛組を指揮している一ノ瀬の声が戦場全体に届く。竹中の時も思ったが一ノ瀬も指揮に関するスキルか、戦場全体に届く声から声や音に関するスキルを取得しているのかも知れない。もしくはユニークスキルを。

 「3人とも、交代だそうだ。行くぞ。」

 「お、おう……。」

 「そ、そうだな……。」

 3人に声を掛けるが石田も井上も行きたくなさそうな顔をしていた。

 「嫌よ!死んじゃうわ!!」

 そんな中で佐藤が声を荒げて言った言葉が辺りに響く。

 「戦争なんだから分かり切ってる事だろう?殺し殺されるって。早くしろ。前線が持たなくなる!!」

 それでも嫌だ嫌だと佐藤は座り込んで首を横に振っていた。そんな佐藤の様子に周りに居た戦いたくない者たちが賛同する様に声を出し始める。

 そんな事をしている間にも前線の人たちが殺されたり怪我を負ったりしているのが分からないのか。このまま前線が崩壊すればそれだけより危険になる可能性が高いのに。

 「もういい。佐藤は置いて、俺たちだけで行くぞ。急げ。」

 急がないといけないと言うのに座り込む佐藤を連れて行くのを諦めて、俺は石田と井上に言う。

 「あ……そ、それは良くないんじゃないかな?」

 「佐藤を置いて行くなんて出来ない!!」

 佐藤を心配する素振りを見せているがどう見ても石田も井上も前線での戦いに行きたくないから言っている様なものだった。

 中衛部隊の中でも既に前線へと向かっている選ばれし者たちはいる。俺はこの3人を見限る事にした。ここ一番で戦えないコイツらに背中を預けるのは危険だろう。

 3人へと俺は何も言わずに前線に向かって走っていく。そんな俺に3人の内の誰かは分からないが「あっ、おい!」と声を掛けられた気がするが、そんな声を無視して前線を抜けてこちらに向かって来ている目が血走ったボロ切れを着た西洋人風の人間と対峙する。

 「ガァアアアア!!!!!!」

 両手を伸ばして掴み掛かって来ようとする男の口元には血だろう真っ赤になっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...