異官能小説

心中小説もええがのう(1)

今日は、ちょっと趣向を変えてみようわい。


白む夜明けの　忍び泣き　空にまばゆき　光りにうつる　我が影の

恋の祈りぞ　春の霜　草の若芽も　春過ぎて　露にやつるる　夏の虫

夢の夢こそ　哀れなり　色の闇路を　照らせとて　光りも細く　降る夜の

毎夜毎夜の　閨の内　どうぞ殺して　くださいな　恋に乱るる　妄執の

夢をさまさん　朧夜や　よしや地獄へ　落つるとも　われとそなたは　夫婦星

涙はらはら　血の涙　定め無き世は　稲妻か　覚悟を決めし　夏の雲　

色衣　恋の奴に　荷わせて　刃を急ぐ　死に出の旅路　幻や　　

色に焦がれて死のうなら　いざ死のう　

此の世の名残り　夜も名残り　残るひとつが　今生の　鐘の響きの　聞き納め

そなたを殺し　われも死ぬ　

此の世でこそは　添わずとも　先の世までも　夫婦ぞや


これは全くの盗作じゃ。

ワシの言葉は一言も無いけんのう。

近松門左衛門の浄瑠璃、『天網島』や『曾根崎心中』などの

名文句を寄せ集め、意味が通らんでもないものにしただけじゃ。

しかし、ひたすら死に向かっていく男と女の姿は、胸を打つのう。

手を変え品を変え、読む者の劣情を煽る官能小説には、心中物が一つもないのう。

まあ、男と女が心中するなど、過去の過去になったからかもしれんがのう。

ストーカー殺人事件なら、チョコ、チョコ、あるがのう。

タケシ兄ちゃんの産みの母、ポルノの女帝も、１９歳のころにストーカーに殺され

かけたことがあるんじゃ。

いかんのう小説『女殺し油煙の地獄』の、そこら辺りを読んでもらおうか。


珠美が三百万円の預金通帳を手に、剛を抱いて家を飛び出したのは１８歳の秋。
コンビニで働きながら板橋の安アパートで剛を育てたが、預金は減る一方。
「じゃあ、裸になってもらおうか」
「・・・・はい・・・」
「あ、パンティまでは脱がなくていいよ」
「・・・・はい・・・」
「うん。顔もいいけど、オッパイはもっといいね」
「・・・・・」
「この店は本番行為は厳禁だからね。客に絶対に入れさせないように」
「はい」
「でも、オッパイはしっかり揉ませるように。パンティをずらされてアソコに指を
入れさせるのはオーケーだよ。それくらいは客にやらせないと、次の御指名はもらえ
ないからね」
「・・・・はい」
「一日に七、八人の客に指を入れられることになるから、お席に伺う前にはアソコに
ローションを塗っておくように。そうすると少々ズコズコされても痛くないからね。
でも塗り過ぎは艶消しだ。適量を塗るように」
「はい」
「うん。では適量はどれくらいか教えてあげる。やっぱり、パンティ脱いでね」
「・・・ちょっと、ずらすだけでもいいですか？」
　・・・・ヌル、ヌル・・・ピチョ、ピチョ・・・
「こんな具合に塗るようにね・・・しかし、中々いいオマ●コだ」
「・・・・」
幼児を抱えて働き始めたのは、濃厚なお色気サービスをするセックスキャバレー、
通称セクキャバ。池袋の『ギャルギャル』である。
名前は『モナ』で二十歳の女子大生ということになった。
「では明日から一生懸命に働きますから宜しくお願いします」
「あっ、ちょっと待ってね」
面接を終えた店長がスマホを取り出す。
「・・・・もしもし、『ギャルギャル』を任されおります田中でございます。いま
面接を終えたばかりのモナという娘を御挨拶に伺わせたいと思うのですが・・・・
はい・・・・それはもう・・・・ええ、さようでございますとも・・・・・はい、
１８歳でして・・・・ええ、それはもう・・・・承知いたしました・・・・ええ、
それはもう、大変なものでして・・・・はい。当店ナンバーワンのリリの２ランク
上かと・・・・それでは１９時半に東武本店正面前でございますね」


ということで、タケシ兄ちゃんの産みの母親は、池袋の闇の世界を支配する男に

犯られ放題に犯られるんじゃ。

アレに真珠玉を埋め込んだ男でのう、凄まじい仕打ちを受けるんじゃが、それは

『女殺し油煙の地獄』を読んでのお楽しみということで先に進もうかい。


モナは『ギャルギャル』の指名客とホテルのお付き合いもするようになった。
ベビーシッターに剛を預けて。
１９歳のモナを強姦したのは、月に二度はホテルを共にしていた男である。
男はホテルに入ると五万円もくれていた。『ギャルギャル』の料金も入れれば
モナに月に二十万円も貢いでいたのだ。そのお金のために働いていた店の金を
ネコババしていたことが発覚し、解雇された。
『セックスまでするのは貴男だけよ』と言われ、有頂天になっていた男は逆上
してストーカーになった。
ナイフを横腹に当てられたのは、剛を乗せたベビーカーを押していたスーパー
からの帰り道であった。ベビーカーごと車に押し込まれたのだ。
男はモナを強姦して殺す計画を念入りに立てていたのだ。
男が連れ込んだのは空き家になって久しい廃屋であった。
畳が傷んで、襖も破れ放題の部屋でモナは強姦をされた。
殺されるかも・・・恐怖のあまり、モナは声も出せない。
「この、腐れマ●コがあ～！！脱げ、脱げ、早く脱げ！」
剛はスヤスヤ眠ったまま。モナはパンティ一枚だけの姿に。
「アッ！ヤメテ・・・」
男はモナのパンティの付け根にナイフの刃を入れたのだ。
パンティが切り裂かれて落ちる。
丸出しになった陰毛を男が掴む。
「・・・・」
モナは息を呑んで震えるだけ。
＜ああ、アソコを切られて、刺されて、殺されるなんて＞
・・・チョボ・・ジョジョ・・ジャア～、ジャ～・・・
モナが震えながらオシッコを漏らすので、小便が飛び散る。
・・・ピシッ・・・ピシッ・・ジョリ・・・ピシッ・・
小便で濡れたモナの陰毛を男が切る。
また切る。
押し倒される。
「ヒイイ～、お願い許して、何でもするから・・・ヒイイ～！！」
「糞マ●コが！許す訳が無いだろうが！この糞マ●コの、糞モナを！！」
モナは犯しに、犯された。
剛が火のついたように泣き始めた。
驚いた近所の人が駆け付け、逃げ出した男は警察官に逮捕された。
実録『やり過ぎかしら？』の、母と子の悲しくも美しい物語の大きな山場である。
セクキャバの女、モナが必死で赤ん坊を育てようとしたのは事実であろう。
しかし、赤ん坊がモナの重荷になったというのが、より真相に近い。
安アパートは『ギャルギャル』で着るドレスやセクシーランジェリーで花盛り。
剛を深夜保育にあずけ、ホスト遊びをすることも。
流し場はコンビニ弁当の食べ残しでグチャグチャ。
子育ての知識もない。剛は２歳になってもオムツは取れていない。
布団の周りは臭い匂いの紙オムツが散乱していた。
モナ、本名・南条珠美、後のＡＶ女帝・冴子には我が子を立派に育てる自信は、
全く無かった。泣きじゃくる坊やの頬に思わず手が出ることも。
ハッと気付き、一緒に泣き始めるモナが、幼児虐待に走ることは無かったが。
養護院の扉の陰にそっと剛を置き、逃げ走ったのは正しい判断かもしれない。
電車で隣り合わせになっても、それが我が子、我が母と判らない方が、よほど
穏やかな人生と言えるのかもしれない・・・・