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異世界生活の始まり
14 コーヒー
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わりとお年を召したカフェのマスターが私たちの頼んだ紅茶とコーヒーを運んできてくれた。ユキ情報だと、ここは夜は酒場になるそうで、ギルド横の酒場よりも静かに飲みたい人たちが集まってくるらしい。
ユキも何度か来てるそうだ。
ユキはコーヒー好きって言ってたわりに、ここでは紅茶を頼んでいた。意外。
というか、この世界にコーヒーがあったことに驚く。でも、色が…
「違う…」
「そうなんだよ…」
コーヒーという名前なのに、お茶みたいな色でコーヒーの香りもしない。
「俺も最初、嬉しくて頼んだけど、ちょっとショックで…」
「教えてくれれば良かったのに」
「この気持ちを共有したかったんだよ…」
なんだと!!いい大人が!
しかし、これ、何処かで見たような…。
私は記憶を探ってみる。ちょっと思いあたることがあったので、マスターのおじさまに声をかける。
「あのー、このコーヒーって、元々はこのくらいの緑の粒であってます?」
私は親指と人差し指で小さな丸を作ってみせる。
「そうそう、お嬢ちゃん詳しいね。これ、冒険者が見張り当番の時に夜眠気がおさまるからって水筒に入れて買っていく奴らはいるけど、あんまり店で飲む人はいないんだよ。」
「その粒、見せてもらっても良いですか?」
マスターはちょっと待ってな、と言って緑色の豆を持ってきてくれた。
「この粒を砕いて、お湯で煮出してるんだよ。」
おお、これはやっぱりコーヒーの生豆!この世界では焙煎する習慣が無いのか。
「これって、このお店で買えるんですか?」
「なんだ、欲しいのかい?市場でも買えるけど、隣国から来てるから、ある時とない時があるからね。お嬢さんは初めてだから、うちにあるのを少し分けてあげようか?うちのお店も、良かったらまた来ておくれ。」
やった!私はお礼を言って、マスターが袋に入れてきてくれた分を買い取らせてもらった。
「アンナ、これ何かわかるのか?」
「うん、これ、ちゃんとしたコーヒーの豆よ?焙煎する前の。火で煎ればコーヒーになるはずよ」
「マジか…。」
「コーヒーは、私がカフェでバイトしていて、そのカフェのマスターが自家焙煎していたから、見よう見まねで家でやったことがある程度だよ。ケーキとパンは流石にレシピないとできないけど」
「レシピ、か…。そうだよな、全部覚えてるわけじゃないよな」
あれ、ユキが悲しそうになっちゃった
「材料の問題もあるけど、作り方は多分大丈夫だよ、ほら、スマホあるし!」
「だってこの世界じゃ検索とかできないだろ?」
「え、私、前の世界で色々検索したやつをファイルに保存してとってあるよ?ケーキは友だちの誕生日に作ったときのレシピがあって、パンは、確か授業で発酵についてのレポート書かされた時に色々調べた中にあったはず。天然酵母とかも調べたんだ。」
「アンナさん何者ですか」
「発酵とかの食品系の研究をしたかった、ただのしがないリケジョです…。貧乏大学生だったんで、レポート用の資料でネット必要なときは学校のWiFiでいろいろ調べ物して、ファイルにしたり画面で保存して、家では極力ネット繋がず生きてました。このスマホでその時のデータ見れるなら、結構色々残ってたはず…」
あ、しまった、と思った時にはもう遅かった。
「アンナさん!」
やばい、ユキの目がキラキラしてる!
「何でもするので俺にパンとケーキとコーヒー作ってください」
前のめりで両手で私の手を握ってくる。
ちょっと、ダメだってば!このイケメンメガネくん、ちょっと残念な人なのは分かっているのに、なまじ顔が好みだからつい『うん』って言いそうになっちゃうよ!
「ち、ちょっとまって、手、離して!できるかどうかわからないからね?あと、場所も必要だし、まずは私のギルド登録とね、住む場所とかちゃんと安定してからじゃないと出来ないから…」
「よし、じゃあ俺、アンナの生活安定するように手伝うし頑張るから、むしろ面倒みてやるから、その時はよろしくな!!」
めっちゃいい笑顔でユキが言う。
なにこれ、はたから見たら私たちどう見えてるんだ、なんかマスターも『良かったねぇ』みたいな表情でこっち見てるんですけど!
ちょっとちょっと、私たちまだ何の関係でもないですから!!
「ああ、もう、分かったから…!約束はできないけど、私の生活が軌道に乗ったら考えてみますから、手、離して…」
動揺しまくって顔も赤くなってると思う。ユキは『ああ、ごめんね?』なんて軽く言ってくるけど。
何なの、このイケメンめ!!
ユキも何度か来てるそうだ。
ユキはコーヒー好きって言ってたわりに、ここでは紅茶を頼んでいた。意外。
というか、この世界にコーヒーがあったことに驚く。でも、色が…
「違う…」
「そうなんだよ…」
コーヒーという名前なのに、お茶みたいな色でコーヒーの香りもしない。
「俺も最初、嬉しくて頼んだけど、ちょっとショックで…」
「教えてくれれば良かったのに」
「この気持ちを共有したかったんだよ…」
なんだと!!いい大人が!
しかし、これ、何処かで見たような…。
私は記憶を探ってみる。ちょっと思いあたることがあったので、マスターのおじさまに声をかける。
「あのー、このコーヒーって、元々はこのくらいの緑の粒であってます?」
私は親指と人差し指で小さな丸を作ってみせる。
「そうそう、お嬢ちゃん詳しいね。これ、冒険者が見張り当番の時に夜眠気がおさまるからって水筒に入れて買っていく奴らはいるけど、あんまり店で飲む人はいないんだよ。」
「その粒、見せてもらっても良いですか?」
マスターはちょっと待ってな、と言って緑色の豆を持ってきてくれた。
「この粒を砕いて、お湯で煮出してるんだよ。」
おお、これはやっぱりコーヒーの生豆!この世界では焙煎する習慣が無いのか。
「これって、このお店で買えるんですか?」
「なんだ、欲しいのかい?市場でも買えるけど、隣国から来てるから、ある時とない時があるからね。お嬢さんは初めてだから、うちにあるのを少し分けてあげようか?うちのお店も、良かったらまた来ておくれ。」
やった!私はお礼を言って、マスターが袋に入れてきてくれた分を買い取らせてもらった。
「アンナ、これ何かわかるのか?」
「うん、これ、ちゃんとしたコーヒーの豆よ?焙煎する前の。火で煎ればコーヒーになるはずよ」
「マジか…。」
「コーヒーは、私がカフェでバイトしていて、そのカフェのマスターが自家焙煎していたから、見よう見まねで家でやったことがある程度だよ。ケーキとパンは流石にレシピないとできないけど」
「レシピ、か…。そうだよな、全部覚えてるわけじゃないよな」
あれ、ユキが悲しそうになっちゃった
「材料の問題もあるけど、作り方は多分大丈夫だよ、ほら、スマホあるし!」
「だってこの世界じゃ検索とかできないだろ?」
「え、私、前の世界で色々検索したやつをファイルに保存してとってあるよ?ケーキは友だちの誕生日に作ったときのレシピがあって、パンは、確か授業で発酵についてのレポート書かされた時に色々調べた中にあったはず。天然酵母とかも調べたんだ。」
「アンナさん何者ですか」
「発酵とかの食品系の研究をしたかった、ただのしがないリケジョです…。貧乏大学生だったんで、レポート用の資料でネット必要なときは学校のWiFiでいろいろ調べ物して、ファイルにしたり画面で保存して、家では極力ネット繋がず生きてました。このスマホでその時のデータ見れるなら、結構色々残ってたはず…」
あ、しまった、と思った時にはもう遅かった。
「アンナさん!」
やばい、ユキの目がキラキラしてる!
「何でもするので俺にパンとケーキとコーヒー作ってください」
前のめりで両手で私の手を握ってくる。
ちょっと、ダメだってば!このイケメンメガネくん、ちょっと残念な人なのは分かっているのに、なまじ顔が好みだからつい『うん』って言いそうになっちゃうよ!
「ち、ちょっとまって、手、離して!できるかどうかわからないからね?あと、場所も必要だし、まずは私のギルド登録とね、住む場所とかちゃんと安定してからじゃないと出来ないから…」
「よし、じゃあ俺、アンナの生活安定するように手伝うし頑張るから、むしろ面倒みてやるから、その時はよろしくな!!」
めっちゃいい笑顔でユキが言う。
なにこれ、はたから見たら私たちどう見えてるんだ、なんかマスターも『良かったねぇ』みたいな表情でこっち見てるんですけど!
ちょっとちょっと、私たちまだ何の関係でもないですから!!
「ああ、もう、分かったから…!約束はできないけど、私の生活が軌道に乗ったら考えてみますから、手、離して…」
動揺しまくって顔も赤くなってると思う。ユキは『ああ、ごめんね?』なんて軽く言ってくるけど。
何なの、このイケメンめ!!
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