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異世界生活の始まり

7 ユキさんは確かに美人だった

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アリーナさんはしばらく私の担当になってくれるようだ。
「なんか、アンナちゃんは妹みたいで可愛いのよね。タグは、冒険者になるためでなく、基本的に身分証明としての使い方をするのよね?あまり危険のない採取依頼、教えてあげますね」

いつの間にかアンナちゃん呼びになっている…!いいんだけど、ちゃん付けで呼ばれ慣れてないからムズムズする。確かに、私は童顔だから若く見られること多かったけどさぁ。そして、私のこと可愛いって言うけれど、あなたのが可愛いんですから。

なんでこんなに親切なのか、不思議に思ったので聞いてみた。
「身分証明持ってない、ワケありそうな私になんで親切にしてくれるんですか?」
「え、だって、あなた真っ白だもの」

…言ってる意味がわからない。
真っ白って何?おバカさんってこと?一応、大学生なんですけど!!

複雑そうな私の顔をみて、アリーナさんはにっこり笑って説明してくれた

「ああ、ごめんなさいね、変な意味ではないのよ。このギルドではちょっと有名なんだけど、私、悪いこと考えてる人が分かるのよ~。そういうスキル持ちってこと。結構珍しいのよ?」

簡単に言うと、アリーナさんは、『悪意が見える』らしい。悪いこと考えてると、真っ黒に見えるそうだ。その点、私はビックリするくらい真っ白だから、初対面にもかかわらずスキルのことも話してくれたらしい。ユキさんのことを聞いた時に見つめられてた感じがあったけど、その時に観られていたのかな?


「偽証したタグを使って悪いこと考えてる人もいるからね、私みたいなのはギルド受付には重宝されるってわけ。スキル持ちで特別手当も付くしね。」
余程のことがなければ、少しでも悪意があれば見えるらしい。相手が精神力の強い高位レベルの場合は、隠蔽されて見えないこともあるけれど、白でも黒でもなく『見えない』ことはほぼ無いから、それはそれで怪しい!って注意できるんだそうだ。ああ、私、どう見ても弱そうだもんね、疑われないのも納得。

「そうなんですね、いいなぁ。私も、自分の特技を活かした仕事がしたいです。」
「まあ、いい事ばかりではないけれどね。嫌なものも見なくてはならないし。アンナちゃんは、この町で働くつもりなの?」
「そうですね、お金も稼がないと暮らせないですし。求人とかあればいいんですけど。」

私は出来たらどこかのお店でバイトでもすることから始めようと思っていた。うん、地道にやっていくのが大事よね。討伐とか、怖くて無理。植物採取や鉱物採取は気になるけどね。でも、取れたものが買えるなら、それを購入して研究はしてみたい。

「お店で働くつもりなら、商人ギルドに求人が出るわ。まあ、どちらにしても、働くならここで冒険者タグを取ってからになるわね。」

なるほど、バイトするにも身分証明必要ってことね。

もし、自分でお店を開く場合は商人ギルドに登録するらしいが、冒険者タグを持っていれば、あとは資金があれば割と簡単に登録できるとのこと。お店かあ。なにか私にも出来るかな?夢膨らむわぁ。

◇◇
ユキさんが帰ってくるまで、ギルドで待たせて貰うことにした。私の格好が冒険者っぽくないから、変な人に絡まれないように説明を受けた部屋で待ってていいわよって、アリーナさんがギルドマスターに許可をもらってくれた。
ホント、なんて親切なの?大好き、アリーナさん。


ギルドの斜め向かいにある宿も紹介して貰って、とりあえず5日間、1日あたり銀貨3枚の割引価格で泊めてもらえることになった。本当は4枚かかるらしい。ギルド内にも低ランク冒険者向けに安く泊まれる部屋があるらしいけど、女の子1人では…って言われたからやめておいた。そうだよねー、いかにも冒険者ってならまだしも、私、如何にも弱そうだもんね(2回目)

ちなみに、お金の単位は銅貨100=銀貨10=金貨1らしい。100円と1000円と1万円って感じかな。物価は、この世界のが少し安いのかな?まだ宿の値段しかわからないから、いろんな品物見て確認しないとだけど。しかし、まだお金はあるとはいえ、ずっと宿屋ぐらしは出来ないから何か考えないとなぁ。

◇◇
「アンナちゃん、ユキさんが戻ってきましたよ。会ってみます?」

アリーナさんが呼びに来てくれた。ワクワクしながら、受付で採取依頼の報告をしている黒髪メガネ美人さんを探す。


……
………

黒髪メガネ美人さん?

何となくイメージで、長い黒髪かと思ってたんだけど、黒髪の人って、ショートボブより短めの髪の、背の高い人しかいない。…あの体格は男性?

「あのー、ユキさん…ですか?」
恐る恐る声をかけてみる。

「そうだけど…君は?」
振り返った人はやっぱり男性でした。

何これ、黒髪イケメンメガネ君じゃない!うん、確かに美人だよ?でも、男の人だと美男子とか美丈夫っていうんじゃないの?
やばい、こんなところで大好きなメガネ男子に会えるとは!目の保養だわ!ごちそうさまです!
  

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