破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます

時岡継美

文字の大きさ
上 下
35 / 66

貴族学校の進級試験(3)

しおりを挟む
 翌日、放課後の勉強を空き教室ではなく図書室でしようと提案してみた。
「わーい! 気分転換になるね!」
 リリカが無邪気に喜んでいる。
 
 カタリナと話し合った結果、リリカはとにかくマイヤ夫人の課題だけでも解けるようになっておけばいいと的を絞ることにした。
 もう少し余裕のありそうなアデルにはさらに応用を教えるという方針で、わたしたち4人は進級試験に向けて残り1週間懸命に勉強に励んだのだった。

 そして2週間後。
 学校の掲示板に、学年別の席次表が張り出される日がやって来た。

 1学年の生徒は全部で80名だ。そのうち上位50名の名前が得点順に記されている。
 この席次表の圏外となった残りの30名は「赤点」扱いで補習・再試験となる。
 その再試験でも点数が芳しくなかった場合は留年ないしは退学勧告が待っているため、みんな緊張の面持ちで掲示板の前に集まっていた。
 
 学年1位は500点満点中、驚異の498点を取ったカタリナ・ドラールだ。
 悲喜こもごもの歓声があがる中、カタリナ本人は1位を取ったことを喜ぶよりも1問凡ミスしてしまったことを大層悔しがっている。
 
 そして2位は485点で3名の生徒が名前を連ねており、その中にドリス・エーレンベルクの名前も入っていた。
 2位という席次は、これまでの最高の順位だ。

 やったわ! 嬉しいっ!
 拳をぐっとにぎりしめる。
 
 ハルアカの悪役令嬢ドリスは、教師たちをせっせと買収して事前に試験問題を入手していたにも関わらず、いつも50位ぎりぎりぐらいの位置だった。
 それをドリス本人は、
「要は赤点にならなければいいのでしょう? エーレンベルク伯爵家はあれこれ付き合いも多くて忙しいんですの。学業に専念できるみなさんがうらやましいわ」
とかなんとか言ってごまかしていたと記憶している。
 
 悪だくみを考える時間があるなら、その時間を使って勉強しろ! と言いたい。
 本当に赤点を回避できる得点だったのかすらあやしい。
 
 そんな愚かなドリスが、不正をせずに学年2位! これは歓喜せずにはいられない。
 
 アデルは手堅く25位。
 最も心配していたリリカも33位という、彼女にしては上出来すぎる結果だった。

 わたしたち4人は手を取り合って互いの健闘をたたえあった。
「ドリスちゃんのあの課題のおかげだよ。わたしあれがなかったら赤点確実だったはずだもん。ありがとう!」
 リリカがぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。
「ドリスさん、わたしからもお礼を言わせてください。山があんなに当たるだなんて本当に助かりました」
 アデルの言う通りで、マイヤ夫人の課題と似たような問題がたくさん出題されたのだ。

「いいえ、あなたたちの努力が実を結んだのよ。おめでとう」

 わたしのおかげではない。
 お礼を言うとしたらむしろマイヤ夫人に……と思っているところに、横からわざとらしく驚いたような甲高い声が響いた。
 
「まあっ! やっぱりそういうことでしたのね!」
 声の主は、ミシェル・トレーシー侯爵令嬢だ。
 
 燃えるような赤毛が印象的なミシェルは、ハルアカでは悪役令嬢ドリスの取り巻き筆頭として登場するキャラだ。
 そしてこの「進級試験イベント」の口火を切るキャラでもある。

 やっぱり、予想通り来たわね。受けて立つわ!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!

佐倉穂波
ファンタジー
 ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。  学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。 三話完結。 ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。 2023.10.15 プリシラ視点投稿。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...