28 / 66
お茶会(2)
しおりを挟む
「素敵なお庭ね。珍しいバラが咲いているわ」
カタリナは目の前に並ぶスイーツよりも庭に興味があるようだ。
その隣でリリカはきゃわきゃわ言いながらクリームたっぷりのカップケーキを頬張っている。
良く晴れた休日の昼下がり。
爽やかな風がそよぐ中庭の木陰にテーブルセットを出してリリカ、カタリナ、アデルをもてなした。
ミヒャエルは朝から厨房を覗いたり、お天気は大丈夫かと何度も窓から空模様を気にしたりと落ち着かない様子だった。
ついにはハンナに「じっとしていてください!」と言われてシュンとなっていた。
そんな叱られたわんこのようなミヒャエルが、約束の時間に3人が到着した時にはエーレンベルク伯爵家の当主として堂々とした振る舞いで出迎えたのはさすがだ。
しかし堂々とした振る舞いはそこまでだった。
リリカに「パパさん、若い!」と言われると尻尾が揺れ始め、カタリナに「英雄殿にお会いできて光栄ですわ」と言われるとさらに大きく尻尾が揺れ、アデルに「ミヒャエル様に憧れて騎士を目指そうと思っているんです!」とキラキラした目で言われたところで、手に負えないほどグルングルン揺れる尻尾が見えた。
「ドリス、いい友人を持ったな」
ミヒャエルはすでに感極まって涙ぐんでいる。
まずい、このままじゃ感極まって3人のことを抱きしめてしまうんじゃないかしら!?
これはヤバいと思ったところで、同じくその空気を感じ取ったオスカーに連行されていくミヒャエルを苦笑とともに見送った。
エーレンベルク伯爵家の料理人バランをはじめ腕に覚えのあるメイドたちが総出でこのお茶会のために用意してくれたスイーツは、各人の好みを考慮してわたしが大まかにリクエストしたものだ。
リリカの好みに合わせたクリームたっぷりの甘ったるいカップケーキやフルーツ。
カタリナが上品に食べられるよう一口サイズにしたクッキーや小ぶりなマカロン。
そして甘いものがあまり得意ではないアデルには、スパイスのきいたペッパークッキーやジンジャースコーン。
美味しそうなスイーツがテーブルの上に所狭しと置かれている。
「これ、とても美味しいですね!」
アデルがペッパークッキーを気に入ってくれたようで、こちらも嬉しくなる。
なくなりそうな勢いでアデルが食べるものだから、先程アイコンタクトでハンナに追加を持ってくるよう指示を出しておいた。
その追加のクッキーをバランが運んできた。
「うわぁ、ありがとうございます! 甘さ控えめでスパイスがとてもいいですね!」
アデルが弾けるような笑顔でバランに賛辞を述べる。
実際、バランの作る料理はどれもとても美味しい。
「バランの料理はなんでも美味しいのよ。我が伯爵家の自慢のシェフだもの。わたしがここまで大きくなったのもバランの美味しい料理のおかげよ」
自分が褒められたわけではないのに嬉しくて、ふんすと胸を張る。
するとバランは、頬を搔きながら照れくさそうに破顔した。
「ドリスお嬢様の初めてのご友人に喜んでいただきたいと思いまして、腕によりを……」
「みなさま、お茶のおかわりはいかがでしょうか?」
ハンナが慌ててバランの言葉にかぶせるように話題を変える。
そしてバランの背中を押して早くひっこめという素振りを見せた。
その様子にアデルは何が起きているのかわからない様子でキョトンとしている。
カタリナは一瞬気まずそうに視線を落とした後にすぐ口角を上げて「では紅茶のおかわりを」と微笑んだ。
それに対しリリカは、いつもの空気が読めない様子で首をこてんと傾げた。
「ドリスちゃんて、これまでお友達いなかったの?」
来たわね。強制イベント!
カタリナは目の前に並ぶスイーツよりも庭に興味があるようだ。
その隣でリリカはきゃわきゃわ言いながらクリームたっぷりのカップケーキを頬張っている。
良く晴れた休日の昼下がり。
爽やかな風がそよぐ中庭の木陰にテーブルセットを出してリリカ、カタリナ、アデルをもてなした。
ミヒャエルは朝から厨房を覗いたり、お天気は大丈夫かと何度も窓から空模様を気にしたりと落ち着かない様子だった。
ついにはハンナに「じっとしていてください!」と言われてシュンとなっていた。
そんな叱られたわんこのようなミヒャエルが、約束の時間に3人が到着した時にはエーレンベルク伯爵家の当主として堂々とした振る舞いで出迎えたのはさすがだ。
しかし堂々とした振る舞いはそこまでだった。
リリカに「パパさん、若い!」と言われると尻尾が揺れ始め、カタリナに「英雄殿にお会いできて光栄ですわ」と言われるとさらに大きく尻尾が揺れ、アデルに「ミヒャエル様に憧れて騎士を目指そうと思っているんです!」とキラキラした目で言われたところで、手に負えないほどグルングルン揺れる尻尾が見えた。
「ドリス、いい友人を持ったな」
ミヒャエルはすでに感極まって涙ぐんでいる。
まずい、このままじゃ感極まって3人のことを抱きしめてしまうんじゃないかしら!?
これはヤバいと思ったところで、同じくその空気を感じ取ったオスカーに連行されていくミヒャエルを苦笑とともに見送った。
エーレンベルク伯爵家の料理人バランをはじめ腕に覚えのあるメイドたちが総出でこのお茶会のために用意してくれたスイーツは、各人の好みを考慮してわたしが大まかにリクエストしたものだ。
リリカの好みに合わせたクリームたっぷりの甘ったるいカップケーキやフルーツ。
カタリナが上品に食べられるよう一口サイズにしたクッキーや小ぶりなマカロン。
そして甘いものがあまり得意ではないアデルには、スパイスのきいたペッパークッキーやジンジャースコーン。
美味しそうなスイーツがテーブルの上に所狭しと置かれている。
「これ、とても美味しいですね!」
アデルがペッパークッキーを気に入ってくれたようで、こちらも嬉しくなる。
なくなりそうな勢いでアデルが食べるものだから、先程アイコンタクトでハンナに追加を持ってくるよう指示を出しておいた。
その追加のクッキーをバランが運んできた。
「うわぁ、ありがとうございます! 甘さ控えめでスパイスがとてもいいですね!」
アデルが弾けるような笑顔でバランに賛辞を述べる。
実際、バランの作る料理はどれもとても美味しい。
「バランの料理はなんでも美味しいのよ。我が伯爵家の自慢のシェフだもの。わたしがここまで大きくなったのもバランの美味しい料理のおかげよ」
自分が褒められたわけではないのに嬉しくて、ふんすと胸を張る。
するとバランは、頬を搔きながら照れくさそうに破顔した。
「ドリスお嬢様の初めてのご友人に喜んでいただきたいと思いまして、腕によりを……」
「みなさま、お茶のおかわりはいかがでしょうか?」
ハンナが慌ててバランの言葉にかぶせるように話題を変える。
そしてバランの背中を押して早くひっこめという素振りを見せた。
その様子にアデルは何が起きているのかわからない様子でキョトンとしている。
カタリナは一瞬気まずそうに視線を落とした後にすぐ口角を上げて「では紅茶のおかわりを」と微笑んだ。
それに対しリリカは、いつもの空気が読めない様子で首をこてんと傾げた。
「ドリスちゃんて、これまでお友達いなかったの?」
来たわね。強制イベント!
12
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる