白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

旦那様Side①

　クラリッド男爵家に到着すると、青ざめた顔の義理の両親に頭を下げられた。

　娘がまだダンジョンに行っているとは知らなかった、申し訳ないとしきりに謝罪を繰り返しながらヴィーの寝室へと案内してくれた。

　そもそもお嬢さんをダンジョン馬鹿の道へと引き込んだのも、結婚後もダンジョン攻略を続けられるようにお膳立てしていたのも私です――と、今は言いにくい。
　まずは、ヴィーの容態だ。
　もごもごと適当な相槌を打ったため、義理の両親はきっと俺が怒っていると思っているだろう。

　ベッドに横たわるヴィーは、顔色は若干悪いもののただ眠っているように見える。
　神官はすでに治療を終えて帰ったという。
　神官の見立てでは、後頭部強打による脳震盪と軽度の窒息。魔力切れによる虚脱。窒息は脳に悪影響がでるほどの長時間ではなく、おそらく明朝には目を覚ますだろうとのことだった。
　それにホッとする。
　
「夜は私がヴィクトリアに付き添います。何かあれば呼びますので、どうぞお休みください」
　一緒に付き添うと言い張る義母をどうにか宥めた。

　ヴィーが目を覚ました時にふたりきりのほうが話しやすいと思ったからだ。

　ベッドの横に座り、ヴィー眠る顔を眺めているところでエリックからの書簡が届いた。
　魔法で送られてきたものだ。
　丸めた書簡のみが突然目の前の空間に出現し、手にストンと落ちる。

　広げてみると、ハットリに聞いたという今日の出来事の詳細が書かれていた。

　なるほど、ジークに挑発されて一緒に地下49階へ行ったわけか。

　随分と無謀なチーム編成だったらしい。
　そして最後は、HPが半分以上残っていたであろうボススライムをヴィーがひとりで地面の割れ目に沈めて倒したようだ。
　ダンジョン内で大怪我を負ったり意識を失って一定時間経過すると、強制的にダンジョンの外へ出されてリタイヤ扱いになってしまう。
　今回は、ヴィーがリタイヤ認定される寸前にボスの討伐が完了したとのこと。

　その時点でボス部屋に残っていたのがヴィーとハットリのみということは、報酬はふたりで山分けになったはずだ。
　しかしジークパーティーのビジター扱いで入場しているため、これでジークパーティーはヴィーがつきつけた地下49階クリアというミッションを達成したことになる。