48 / 80
2回目の会合です①
しおりを挟む
三つ編みを失った翌週、旦那様が領地にやってきた。
冒険者協会の会合の座長を務めるためだ。
正直、顔を合わせたくなかった。
なぜって髪がまるで子供のようなんだもの。
貴族の成人女性は皆長髪でTPOに合わせて様々な結い上げ方をするのが一般的で、肩の上で切りそろえるようなヘアスタイルには決してしない。
あの日。
夕食の時間に図書室まで呼びにきたメイド長のサリーは、わたしの髪がとても短くなって、しかもきれいに切りそろえられてもいない酷い有様に驚いていた。
「若奥様……それは一体……」
「ええっと……気分転換に短くしてみようかなと思って自分で切ってみたんだけど、上手に切れなかったから明日街へ行って整えてもらうわね」
サリーは図書室内をキョロキョロと見回した。
「切り落とした髪はどちらに?」
目が泳いでいるのが自分でもわかる。
もちろん、髪はミミックが食べたと正直にいう訳にはいかない。
「……燃やしたわ」
「ええっ!?」
サリーがこの苦しい言い訳を信じてくれたのか否かはよくわからなかったけれど、眉間にしわを寄せつつも
「わたくしでよければ、もう少し丁寧に切りそろえることができますが」
と言ってくれたため、甘えることにした。
今回の旦那様の領地訪問はきちんと先触れがあったため、この日のダンジョン行きは見送った。
使用人と共に出迎えると、旦那様はわたしを見てわずかに目を細めて微笑んだ。
「ヴィクトリア、髪を切ったのだね」
「はい、気分転換に短くしてみました」
「よく似合ってる」
旦那様がこのヘアスタイルに動揺もせず、嫌悪感も抱かずにそう言ってくれて心底ほっとする。
裏を返せばそれだけ無関心だということなのかもしれないけれど、いまはそれがありがたい。
愛人を囲っていようが男色家だろうが、この際どっちでもいい。
土産があるから後で執務室に来るようにと旦那様に言われていたため、そろそろ一息ついた頃かしらというタイミングで執務室に赴いた。
ノックしようとしたところで、中から話し声が聞こえてくる。
「若奥様は心を病んでおられます。もっとこちらに目を向けるようにしてくださいませ」
必死に訴えているようなこの声はサリーだ。
「いえ、もしかすると若奥様は切った髪を売却されたのかもしれないと私は思っております。人には言えないような金銭問題を抱えていらっしゃるとすれば当侯爵家の醜聞になり兼ねませんので、調査の許可をお願いいたします」
なんてことを言うのよ、ハンス!
あの執事はいつも本当に失礼な男だわ。
個人資産はダンジョンでじゃんじゃん稼いでるわよっ、髪を売るほど困ってなんていませんから!
でも……ミミックに食べられましただなんて、正直に白状するわけにいかないじゃないの。
「この件は私が預かる。憶測による勘繰りや口外は慎むように」
旦那様の冷静な声が聞こえる。
わたしはノックをせずに踵を返し、音を立てないよう静かに自室へと戻った。
妙な憶測を生んで使用人たちがわたしを腫れもの扱いしていることや、旦那様がそんなわたしを庇ってくれたことに申し訳なさが募る。
侯爵夫人がダンジョンで大剣を振り回しているのも十分な醜聞だろう。
髪を食べられたぐらいで済んでむしろラッキーだった。
もしもミミックに体ごと飲み込まれていたら大怪我を負っていた可能性もあるし、そうなれば言い逃れができなかったかもしれない。
「やっぱりもうやめるしかないかな……」
窓際に置いた椅子に腰かけ、遠くに見える大樹を眺めながらぽつりと弱音が漏れる。
ロイさん、わたしどうしたらいい?
もしもロイさん本人が聞いたら「そんなことは自分で決めろ」と突き放すように言うだろう。
そう言っている声も表情も容易に想像できる。
2年前、連日地下41階に通い詰めてイリジム鉱石を集めた後、ロイさんは満足げに笑いながらわたしに言った。
「正式にうちのパーティーのメンバーになれよ。ダンジョン、楽しいだろ?」
その勧誘に二つ返事で飛びついて、わたしの冒険者としての生活が本格的に始まったのだ。
大樹を眺めながらいつの間にかロイさんとの思い出に浸っていると、背後で静かな声が響いた。
「ヴィクトリア」
驚いて振り返るとそこに立っていたのは、旦那様だった。
なぜか少し身構えている。
「すまない、ノックをしたんだが返事がないから勝手に入ったんだが」
旦那様は、いきなり後ろから声をかけたせいでわたしを驚かせてしまったと思っているらしい。
違います。
ロイさんのことを考えていたせいか、旦那様の声を一瞬ロイさんの声だと勘違いして驚いたんですよ。
もちろんそんなことは言わないけれど。
「申し訳ありません。考え事をしていて聞こえなかったみたいです。失礼しました」
立ち上がったわたしに、旦那様が小さな箱を差し出した。
「さっき言っていた土産だ」
わたしがなかなか来ないから、わざわざ旦那様の方から出向いてくれたらしい。
「ありがとうございます」
お礼を言って受け取り、開けてもいいかと首を傾げて尋ねると旦那様が頷いて微笑んだ。
箱の中に収まっていたのは小さめの髪留めだった。
旦那様の瞳と同じアイスブルーの小さな宝石があしらわれている。
「まあ、素敵」
よかった。
これよりも大きな髪留めだったり、リボンだったりしたら、この短い髪には合わせられなかったところだ。
まるでこれを選んだ時にはすでに、こヘアスタイルを知っていたかのような……そうか、このお屋敷の誰かが事前に旦那様に伝えたのかもしれない。
だから驚いたりせずにすんなり受け入れてくれたんだわ。
箱から取り出した髪留めを左耳にかかる髪をすくうようにして留めてみると、旦那様がよく似合っていると言ってふわりと笑う。
この人は本当にこういう甘い雰囲気を作るのが上手なクズ男だ。
ほだされてはならないぞ!と強く自分に言い聞かせた。
冒険者協会の会合の座長を務めるためだ。
正直、顔を合わせたくなかった。
なぜって髪がまるで子供のようなんだもの。
貴族の成人女性は皆長髪でTPOに合わせて様々な結い上げ方をするのが一般的で、肩の上で切りそろえるようなヘアスタイルには決してしない。
あの日。
夕食の時間に図書室まで呼びにきたメイド長のサリーは、わたしの髪がとても短くなって、しかもきれいに切りそろえられてもいない酷い有様に驚いていた。
「若奥様……それは一体……」
「ええっと……気分転換に短くしてみようかなと思って自分で切ってみたんだけど、上手に切れなかったから明日街へ行って整えてもらうわね」
サリーは図書室内をキョロキョロと見回した。
「切り落とした髪はどちらに?」
目が泳いでいるのが自分でもわかる。
もちろん、髪はミミックが食べたと正直にいう訳にはいかない。
「……燃やしたわ」
「ええっ!?」
サリーがこの苦しい言い訳を信じてくれたのか否かはよくわからなかったけれど、眉間にしわを寄せつつも
「わたくしでよければ、もう少し丁寧に切りそろえることができますが」
と言ってくれたため、甘えることにした。
今回の旦那様の領地訪問はきちんと先触れがあったため、この日のダンジョン行きは見送った。
使用人と共に出迎えると、旦那様はわたしを見てわずかに目を細めて微笑んだ。
「ヴィクトリア、髪を切ったのだね」
「はい、気分転換に短くしてみました」
「よく似合ってる」
旦那様がこのヘアスタイルに動揺もせず、嫌悪感も抱かずにそう言ってくれて心底ほっとする。
裏を返せばそれだけ無関心だということなのかもしれないけれど、いまはそれがありがたい。
愛人を囲っていようが男色家だろうが、この際どっちでもいい。
土産があるから後で執務室に来るようにと旦那様に言われていたため、そろそろ一息ついた頃かしらというタイミングで執務室に赴いた。
ノックしようとしたところで、中から話し声が聞こえてくる。
「若奥様は心を病んでおられます。もっとこちらに目を向けるようにしてくださいませ」
必死に訴えているようなこの声はサリーだ。
「いえ、もしかすると若奥様は切った髪を売却されたのかもしれないと私は思っております。人には言えないような金銭問題を抱えていらっしゃるとすれば当侯爵家の醜聞になり兼ねませんので、調査の許可をお願いいたします」
なんてことを言うのよ、ハンス!
あの執事はいつも本当に失礼な男だわ。
個人資産はダンジョンでじゃんじゃん稼いでるわよっ、髪を売るほど困ってなんていませんから!
でも……ミミックに食べられましただなんて、正直に白状するわけにいかないじゃないの。
「この件は私が預かる。憶測による勘繰りや口外は慎むように」
旦那様の冷静な声が聞こえる。
わたしはノックをせずに踵を返し、音を立てないよう静かに自室へと戻った。
妙な憶測を生んで使用人たちがわたしを腫れもの扱いしていることや、旦那様がそんなわたしを庇ってくれたことに申し訳なさが募る。
侯爵夫人がダンジョンで大剣を振り回しているのも十分な醜聞だろう。
髪を食べられたぐらいで済んでむしろラッキーだった。
もしもミミックに体ごと飲み込まれていたら大怪我を負っていた可能性もあるし、そうなれば言い逃れができなかったかもしれない。
「やっぱりもうやめるしかないかな……」
窓際に置いた椅子に腰かけ、遠くに見える大樹を眺めながらぽつりと弱音が漏れる。
ロイさん、わたしどうしたらいい?
もしもロイさん本人が聞いたら「そんなことは自分で決めろ」と突き放すように言うだろう。
そう言っている声も表情も容易に想像できる。
2年前、連日地下41階に通い詰めてイリジム鉱石を集めた後、ロイさんは満足げに笑いながらわたしに言った。
「正式にうちのパーティーのメンバーになれよ。ダンジョン、楽しいだろ?」
その勧誘に二つ返事で飛びついて、わたしの冒険者としての生活が本格的に始まったのだ。
大樹を眺めながらいつの間にかロイさんとの思い出に浸っていると、背後で静かな声が響いた。
「ヴィクトリア」
驚いて振り返るとそこに立っていたのは、旦那様だった。
なぜか少し身構えている。
「すまない、ノックをしたんだが返事がないから勝手に入ったんだが」
旦那様は、いきなり後ろから声をかけたせいでわたしを驚かせてしまったと思っているらしい。
違います。
ロイさんのことを考えていたせいか、旦那様の声を一瞬ロイさんの声だと勘違いして驚いたんですよ。
もちろんそんなことは言わないけれど。
「申し訳ありません。考え事をしていて聞こえなかったみたいです。失礼しました」
立ち上がったわたしに、旦那様が小さな箱を差し出した。
「さっき言っていた土産だ」
わたしがなかなか来ないから、わざわざ旦那様の方から出向いてくれたらしい。
「ありがとうございます」
お礼を言って受け取り、開けてもいいかと首を傾げて尋ねると旦那様が頷いて微笑んだ。
箱の中に収まっていたのは小さめの髪留めだった。
旦那様の瞳と同じアイスブルーの小さな宝石があしらわれている。
「まあ、素敵」
よかった。
これよりも大きな髪留めだったり、リボンだったりしたら、この短い髪には合わせられなかったところだ。
まるでこれを選んだ時にはすでに、こヘアスタイルを知っていたかのような……そうか、このお屋敷の誰かが事前に旦那様に伝えたのかもしれない。
だから驚いたりせずにすんなり受け入れてくれたんだわ。
箱から取り出した髪留めを左耳にかかる髪をすくうようにして留めてみると、旦那様がよく似合っていると言ってふわりと笑う。
この人は本当にこういう甘い雰囲気を作るのが上手なクズ男だ。
ほだされてはならないぞ!と強く自分に言い聞かせた。
42
お気に入りに追加
1,908
あなたにおすすめの小説
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
婚約者に騙されて巡礼をした元貧乏の聖女、婚約破棄をされて城を追放されたので、巡礼先で出会った美しい兄弟の所に行ったら幸せな生活が始まりました
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
私は婚約者に騙されて、全てを失いました――
私の名前はシエル。元々貧しいスラムの住人でしたが、病弱なお母さんの看病をしていた時に、回復魔法の力に目覚めました。
これで治せるかと思いましたが、魔法の練習をしていない私には、お母さんを治せるほどの力はありませんでした。
力があるのに治せない……自分の力の無さに嘆きながら生活していたある日、私はお城に呼び出され、王子様にとある話を持ちかけられました。
それは、聖女になって各地を巡礼してこい、その間はお母さんの面倒を見るし、終わったら結婚すると言われました。
彼の事は好きではありませんが、結婚すればきっと裕福な生活が出来て、お母さんに楽をさせられる。それに、私がいない間はお母さんの面倒を見てくれる。もしかしたら、旅の途中で魔法が上達して、お母さんを治せるようになるかもしれない。
幼い頃の私には、全てが魅力的で……私はすぐに了承をし、準備をしてから旅に出たんです。
大変な旅でしたが、なんとか帰ってきた私に突きつけられた現実は……婚約などしない、城から追放、そして……お母さんはすでに亡くなったという現実でした。
全てを失った私は、生きる気力を失いかけてしまいましたが、ある事を思い出しました。
巡礼の途中で出会った方に、とある領主の息子様がいらっしゃって、その方が困ったら来いと仰っていたのです。
すがる思いで、その方のところに行く事を決めた私は、彼の住む屋敷に向かいました。これでダメだったら、お母さんの所にいくつもりでした。
ですが……まさか幸せで暖かい生活が待ってるとは、この時の私には知る由もありませんでした。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
騎士様に愛されたい聖女は砂漠を行く ~わがまま王子の求婚はお断り!推しを求めてどこまでも~
きのと
恋愛
大好きな小説の登場人物、美貌の聖女レイシーに生まれ変わった私。ワガママ王子の求婚を振り切って、目指すは遥か西、灼熱の砂漠の国。
そこには最愛の推しキャラ、イケメン騎士のサリッド・アル=アスカリーがいる。私の目的はただ一つ、彼の心を射止めること。前世の知識を駆使して、サリッドの旅に同行することに成功。恋愛テクニックで彼の気を引くつもりが、逆にきゅんきゅんさせられてしまったり。それでも確実に二人の距離は縮まっていった。サリッドが忠誠を捧げた国王陛下までも味方につけ、順風満帆!……だったはずが、とんでもない邪魔が!なんとワガママ王子が旅についてくるという。果たしてこの恋、成就できるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる