18 / 75
3皿目 マンドラゴラのポトフ
(2)
しおりを挟む
再びエミリーの明るい声が響く。
「さあ、ブルースライムを倒してみましょう!」
剣を振るい、槍を突き刺し、矢を放ち、銃を撃ち、魔法を当てて初心者たちが思い思いにブルースライムを倒したところでエミリーがパチパチと拍手する。
「みなさん、大変お上手です! これで冒険者カードに自動的に功績ポイントが1ポイント付与されているはずですよ」
参加者たちが首から下げている冒険者カードを確認している。
魔物を倒したり、採集したり、素材を売ったりと、ガーデンでのあらゆる活動や滞在時間に応じて「功績ポイント」が加算されていく仕組みだ。
貯めたポイントは管理ギルドの交換窓口で装備や魔導書、魔道具に交換できる。
どれもポイント交換でしか入手できない限定品のため、冒険者たちの中には功績ポイントを意識しながら活動する者も少なくない。
人気商品は「レオナルドの装備」シリーズと『火球隕石弾』という広範囲殲滅魔法を習得できる魔導書だが、それには見向きもせずにひたすらポイントを貯め続けている冒険者もいる。彼らの狙いは「レオナルドの招待状」。
交換ポイントは1億ポイントと途方もないが、この招待状を入手すればガーデンの創始者であるレオナルド・ジュリアーニの住む塔へ招待してもらえるというプラチナチケットだ。
テオも自分のカードを持ち上げてポイントを確認している。
「なんで俺、1000ポイントしかないんだ?」
「ペナルティが多すぎてマイナスばっかりなのよ」
横からのぞいたリリアナが呆れた声で言う。
テオのことだから、功績ポイントなど全く気にせず暴れまわっていたに違いない。
ガーデンでトラブルを起こしたり規約に抵触するような違反行為をすると、自動的にポイントが減らされる仕組みになっているのだ。
「スライムをきれいに倒せた方は、スライムの皮を素材として売ることができますので、内容物を絞り出してマジックポーチに入れてくださいねー」
エミリーのその言葉に、初心者たちが悲喜こもごもの表情を浮かべて自分が倒したスライムを見つめる。
真っ二つにスパっと切った場合は内容物も切り口から自然とドロリと流れ出て処理も簡単だが、魔法で派手に爆散させてしまった場合は全てが散り散りに吹っ飛んでいるため素材としては使えない。
「これ、買い取ってもらえるでしょうか?」
「あらあ、どうかしら。一応、精算所に出してみましょうか」
弾丸で蜂の巣にしてしまった穴だらけのスライムの皮を涙目でエミリーに見せている者の後ろで、槍や弓矢でスライムを仕留めた初心者たちがおそるおそる、その致命傷を負わせた穴から内容物を絞り出している。
「一か所だけ穴を開けて仕留めるっていうのがスライムの正しい倒し方よ。皮が大きな状態で残るし、中身を鍋に絞り出せば食べられるから」
初心者たちの様子を眺めていたリリアナがテオに指南する。
「あの青いドロドロ美味いのか?」
「それがね」
ここで言葉を切って、リリアナがにっこり笑った。
「残念なことに、なんの味もしないの!」
以前は食べ物の味になど無関心だったテオだが、徐々に舌が肥えてきている。
ドロドロのスライムが無味であるという情報を聞いたテオは「うえーっ!」と唸ったのだった。
「さあ、ブルースライムを倒してみましょう!」
剣を振るい、槍を突き刺し、矢を放ち、銃を撃ち、魔法を当てて初心者たちが思い思いにブルースライムを倒したところでエミリーがパチパチと拍手する。
「みなさん、大変お上手です! これで冒険者カードに自動的に功績ポイントが1ポイント付与されているはずですよ」
参加者たちが首から下げている冒険者カードを確認している。
魔物を倒したり、採集したり、素材を売ったりと、ガーデンでのあらゆる活動や滞在時間に応じて「功績ポイント」が加算されていく仕組みだ。
貯めたポイントは管理ギルドの交換窓口で装備や魔導書、魔道具に交換できる。
どれもポイント交換でしか入手できない限定品のため、冒険者たちの中には功績ポイントを意識しながら活動する者も少なくない。
人気商品は「レオナルドの装備」シリーズと『火球隕石弾』という広範囲殲滅魔法を習得できる魔導書だが、それには見向きもせずにひたすらポイントを貯め続けている冒険者もいる。彼らの狙いは「レオナルドの招待状」。
交換ポイントは1億ポイントと途方もないが、この招待状を入手すればガーデンの創始者であるレオナルド・ジュリアーニの住む塔へ招待してもらえるというプラチナチケットだ。
テオも自分のカードを持ち上げてポイントを確認している。
「なんで俺、1000ポイントしかないんだ?」
「ペナルティが多すぎてマイナスばっかりなのよ」
横からのぞいたリリアナが呆れた声で言う。
テオのことだから、功績ポイントなど全く気にせず暴れまわっていたに違いない。
ガーデンでトラブルを起こしたり規約に抵触するような違反行為をすると、自動的にポイントが減らされる仕組みになっているのだ。
「スライムをきれいに倒せた方は、スライムの皮を素材として売ることができますので、内容物を絞り出してマジックポーチに入れてくださいねー」
エミリーのその言葉に、初心者たちが悲喜こもごもの表情を浮かべて自分が倒したスライムを見つめる。
真っ二つにスパっと切った場合は内容物も切り口から自然とドロリと流れ出て処理も簡単だが、魔法で派手に爆散させてしまった場合は全てが散り散りに吹っ飛んでいるため素材としては使えない。
「これ、買い取ってもらえるでしょうか?」
「あらあ、どうかしら。一応、精算所に出してみましょうか」
弾丸で蜂の巣にしてしまった穴だらけのスライムの皮を涙目でエミリーに見せている者の後ろで、槍や弓矢でスライムを仕留めた初心者たちがおそるおそる、その致命傷を負わせた穴から内容物を絞り出している。
「一か所だけ穴を開けて仕留めるっていうのがスライムの正しい倒し方よ。皮が大きな状態で残るし、中身を鍋に絞り出せば食べられるから」
初心者たちの様子を眺めていたリリアナがテオに指南する。
「あの青いドロドロ美味いのか?」
「それがね」
ここで言葉を切って、リリアナがにっこり笑った。
「残念なことに、なんの味もしないの!」
以前は食べ物の味になど無関心だったテオだが、徐々に舌が肥えてきている。
ドロドロのスライムが無味であるという情報を聞いたテオは「うえーっ!」と唸ったのだった。
10
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした
星ふくろう
恋愛
カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。
帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。
その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。
数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。
他の投稿サイトでも掲載しています。
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
嘘はあなたから教わりました
菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる