旦那さんと奥さんの話

立松

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旦那さんと奥さんの散歩の話

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金曜日と日曜日のルーティン
21時からの夜の散歩
「寒くなってきたねー」
冷えた指を旦那さんと首に当てる。
旦那さんがつめてぇ!とはしゃいだ声をあげた

二人でなんでもない話をしながら歩くこの時間が私は好きだ。
仕事の話、これからの話、宝くじがあたったら…色んな話をしてきた。
葬儀屋の前を通ると、人が何人かいた。
「今日、お通夜あったんだね」
「本当だ」
あまりジロジロ見るのもな、と思い旦那さんの顔を見た。
「ねぇ、棺桶に何を入れてほしい?」
旦那さんの顔が首を傾げる
「どうだろう、ベタに手紙とか?」
「手紙いいねぇ。私は綺麗なお花を沢山いれてほしいなぁ
白いお花じゃなくて、派手な色の花!薔薇とか」
「めっちゃいい匂いしそう。俺は果物ほしいなぁ、メロンとか入ってたらいい匂いしそうじゃん」
「メロンかぁ、私もメロンほしい!」
出来るだけ高いやつがいいな!と付け加えていうと、旦那さんが小さく笑った。
「でも、俺はそっちのお葬式でたくないなぁ、先に死にたい」
旦那さんの静かな声で、考える
旦那さんのお葬式
結婚式に来てくれた旦那さんの友達
年に一回しか会わない旦那さんの親
皆泣いている
私は…?
泣いてるのかな、立ってられるのかな、お葬式の挨拶私がするのかな、話せるかな…
耐えられるのかなぁ
「私も…1人は嫌だなぁ」
旦那さんが私の手を握った。
「もし、俺が早く死んだら、棺桶にメロンなんていれなくていいよ。辛いだろうけど、出来るだけ長く生きて俺にどんな人生だったか話して。できれば再婚もしてほしい、ひとりで生きないでほしい。」
旦那さんが恥ずかしそうに笑った
「そうだねぇ、私ボケボケになっても長生きするよ」
私も笑う
きっと旦那さんは私がいなくなったら、再婚なんか出来ないし、すぐに死んじゃうんだろうな
旦那さんが長生きするためにも、長く生きないとなぁ
その日がもっともっと先でありますように。
旦那さんの手を握り返した
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