明新館職員連続殺人事件

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1.再会

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「うーん ないねぇ。」
「そうか。なら、荷物を上から取ってくる。
ちょっと待っててくれ。」
そう言うと、彼は三階へと続く
階段へ向かって歩いて行った。
私は、この場所に取り残されるのが嫌なので、
一緒についていくことにした。

三階は、下の階と違い個室の部屋が沢山ある。
本日の宿泊場所だ。階段の側には、目につく様に
大きな文字で、「1~15号室」と
表示されていた。
4階はきっと、「16~30号室」だろう。
今日集まった人数は、30人なので、
どうやら、一人一部屋らしい。
ほんの少しホッとした。
一つ一つの部屋には、
扉の部分に番号がふられてあった。
賀名屋君は、奥へ奥へと進み「6号室」の前で
立ち止まる。
そして、扉を開け中に入っていった。
数分後彼が、手にして
戻ってきた物はワイヤーだった。
「針金? 持ってきたの?」
「あぁ、趣味で使うから。」
「何に使うの? 釣りとか?」
「いや、ワイヤークラフト。」
「ワイヤークラフト?」
思わず、言葉を繰り返してしまう。
「ワイヤーをニッパーで、折ったり、
曲げたりして物を作るんだ。ペーパーホルダーとかいろいろ。」
「へー。なんか、難しそうだね。」
意外な趣味だった。確かに賀名屋君は、
小中学校と何かともの作りが上手で、 
手先が器用だった。
「慣れれば、楽しいよ。」
彼は、そう言いながらまた、きた道を戻る。
ほんの少しだけ、趣味の話をしている時は、
楽しそうだった。
それに続き、私も後についていく。

3階の階段を降り、2階に戻ってきた。
そのまま、真っ直ぐ進みまた例の場所に到着した。
彼は、針金を折り曲げ鍵穴に差し込んだ。
何だか、漫画のワンシーンを見ているようだった。
ガチャっと鍵を開く音がした。
今度は成功の様だ。
扉が開き、賀名屋君が先に入って行く。
私も、彼の後ろに隠れるようにして中に入る。
冷却庫の中は、冷蔵庫や冷凍庫が沢山密集していた。
その側には、何だか赤い物が目に入ってきた。
自分でもわかるほどに、
脈がどんどんはやくなってきている。
前にいる彼の腕を掴むのが精一杯で、
言葉が出なかった。
赤い物は、人の形をしていて頭と思われる
部分が赤く染まっていた。
頭の形状が定かではない。
うつ伏せで顔は見えない。




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