明新館職員連続殺人事件

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1.再会

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クラス会が、始まって一時間が
過ぎようとしていた。
食事は、バイキング形式で
自分の好きなものが食べられる。
後は、デザートが食べられればいいかと思い、
少し食べるのを休み辺りを見回していたら、
私の幼馴染みの祭と目が合ってしまった。
祭は、私に気付き近づいてくる。
「美緒~ 久しぶり! 元気だった?」
と何事もなかったように
話しかけてくる祭に苛立ちながらも笑顔で
「久しぶり! 元気だったよー。会えて嬉しい。」
そんな事は、全く思ってないが
社交辞令として言っておく。
永尾祭は、私の幼馴染みだ。
中高一貫校を卒業し、今は理系の大学に通っているらしい。
昔から自分が、下にみている人に対して
馬鹿にした態度をとる癖がある。
そのせいか、彼女とは距離を取っていて
あまり仲がよくない。
「私も、会えて嬉しい。そういえば、
賀名屋どこ行ってんの?てか、来てないの?」
「え? 賀名屋君来てるよ。
でも、ちょっと心配だから私探してくるね。」
そう言い、祭から離れた。
しばらく、会場内をウロウロしているが、
一向に見当たらないので
会場の外に出てみることにした。
第一ホールをでて、クラス会の看板の左斜めにある椅子に飲み物を片手に持ち、
彼は座っていた。
「賀名屋君、大丈夫?」
と声をかけた。
「あぁ、大丈夫。」
彼は、消え入りそうな声で言った。
だか、表情からして大丈夫そうではない。
とても辛そうだ。
田地日君の賀名屋君に対する
嫌がらせは相当なものだった。
毎日、「死ね」などの暴言、筆記用具を頭に投げつけるなどの暴行、
他にも差別的な扱いをしていた。
クラスメイトも、気づいて止めようと
してくれたが、賀名屋君が
特に反抗をしていないことから
「気づいていない」と、
判断され見て見ぬ振りをしていた。
味方をしたら、今度は自分が
標的にされてしまうのではという恐怖もあった。
また、当時の担任もそれに気づいて賀名屋君を
助けようとしてくれていたみたいだか、
その救いの手をなぜか、賀名屋君はとらなかった。
そんな事もあり、このクラス会に行くのは
賀名屋君にとって苦渋の決断だっただろう。
そもそも、強制参加ではないのに
なぜこのクラス会に参加したのかはわからないが、
何か理由があるのだと思う。
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