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魔王VS魔王?
第41話 ウィルヘルムとリリム
しおりを挟む「300年・・・か。やっと、やっとだ。漸く魔王が生まれてきた。リリム様の復活の時が来たのだ!」
僅かな明かりしかない部屋で、重厚な造りの机に腰掛ける、異形の男。
「ああ、リリム様・・・!」
見つめる先には、鈍い光を発する、真紅の球があった。
_______________
魔王リリム。彼女の力は、歴代の魔王には到底及ばない程度でしかなかった。だが、その妖艶な姿と【魅了】のスキルで男を誘惑し、己が力とする事こそが彼女の力の真髄であった。
その力は、勇者パーティーの男すらも堕とした。否、勇者パーティーの男は勇者以外結婚できない、というジンクスを踏まえれば、勇者パーティーの男だったからこそ、とも言えるだろう・・・まぁ、早い話、モテる勇者と一緒にいたせいで失恋しまくりだったのである。かの聖騎士は。
そこにつけこまれて、勇者パーティーの裏切り者となった聖騎士ウィルヘルム。彼は最も盲信的に、リリムに仕えた。彼はその時、確かに幸せだった。
だが、それも長くは続かない。
リリムに命じられ、街を1つ潰して帰ってきたその日。彼らが拠点としていた城は崩れ去り、魔王リリムは勇者に討伐されてしまっていた。
荒れ果てた城の跡で、狂気の涙を流しながら、己の女王の名を叫び続けた。
そしてーーー彼は、見つけたのだ。女王の声を発し、女王の魂を持つ、真紅の球を。
主がまだ存在していた喜びと、守りきれなかった後悔の涙を流すウィルヘルムに、魔王リリムは残り僅かな力で言葉を操り、命令を下した。
「ウィルヘルム、このような姿だが、私はまだ死んでいない。今代の勇者は、魔王の核の存在を知らなかったようだ。」
「核・・・ですか?」
「そうだ。ゴーレムの核なんぞとは違う、魂を守る為の最終手段。身体は失ったが、それさえ取り戻せば、私は完全に復活する事ができる。」
「なんと!?そ、それでは・・・」
「ああ。時を待つのだ、ウィルヘルム。そのうち、新たな魔王が生まれる。そして勇者も。お前は私を連れて、その2人を殺せ。生け贄の魔力を使い、私は再び体を構築する。そして、その時こそ世界を手中に収めてやるのだ。」
「はっ!全て・・・御身の御心のままに!」
この日、世界から5人の人間が消え、新たに五体の高位魔物が現れた。
_______________
「リリム様にお会いできない日々の、どれほど辛いことか・・・だが、それももうすぐ終わる。また、御声を聞かせて頂けるのだ・・・!」
ウィルヘルムはこの300年、力を貯め続けてきた。そして、その力を持ってすれば、勇者を打ち倒すことも容易だと奢っていた。
故に気づかなかったのだ。
己の背後から斬りかかる少年と、その仲間に。
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