33 / 55
魔王VS魔王?
第31話 女装勇者とミノ兄弟
しおりを挟む
薄暗い廊下を、1人の少女が歩いている。その瞳はガラス玉のよう・・・否、ガラス玉そのものである。彼女に感情は無い。今も無表情のままに、廊下を歩く男女の集団の横を通り過ぎた。
「すっげぇ、全く相手にされなかった・・・。」
「でしょ?」
「本当だね。これは便利だ。」
やはりと言うか、集団とは勇者パーティーのことである。夏樹にコスプレをさせた後、現在は人形屋敷へ潜入中だ。屋敷の中は薄暗く、いかにも何か出そうな雰囲気を醸し出している。現につい今しがた、屋敷の代名詞とも言える人形とすれ違ったばかりである。と、
「本当ですね・・・そういえば、何故私達は襲われなかったのでしょうか?私やフレイア様とアガン様はいつもの格好のままですが・・・?」
シャロンが割と今更な事に気がついたようだ。その質問に、普段着からして既に人形の様であるミストが答える。
「パーティーメンバーの内の誰か1人でもそういった格好をしてれば問題ないよ。」
「無いのかよ!?じゃあ俺がこんな格好してる意味は!?」
「無い!!!」
「言い切った!?てか取り敢えず、せめて剣だけでもいいから返してくれ!」
あんまりな話に叫ぶ夏樹。ちなみに今の彼の姿は、ピンクのひらひらロリータ服に、これまたピンクのハートと翼の装飾がついた可愛らしい剣である。いつものかっこいい剣はミストに没収されている。
ついでにミストの今の格好だが、いつものゴシックワンピではなく、以前この屋敷で入手した可愛らしいゴシックドレスになっている。人形度割り増し状態であった。理由?それはまあ、あれだ。何となくだ。
「えー。でもその剣、勇者が使ってるやつよりもランク上だよ?常時回復効果とHP・MP増加、しかも攻撃力も申し分無し。ロリータ服も合わせて金貨1000枚のところ、今ならお値段たったの金貨398枚!」
「よし買っ・・・わねえよ!?これ買ったら毎日着せられるフラグだろ絶対!」
「・・・ッチ」
「舌打ち!?今舌打ちした!?」
どさくさに紛れて売り込むミスト。と、そこで
「おいミスト、せっかく可愛い格好してんだから、舌打ちは止めとけよ?」
「うん、わかった!」
アガンからの言葉がくる。
途端、さきほどまでの何処か黒さを感じさせる表情を一変させて、周囲に花を撒き散らしながらの満面の笑み。頭をなでるアガンの手もあり、ミストは一気にご機嫌状態である。
「俺と対応が違いすぎないか!?」
諦めろ。
_______________
場所は少し移り、同じ人形屋敷の別の廊下を歩くミノタウルス兄弟がいた。既にモンスターと化した彼らは人形に襲われる事は無いらしい。が、
「あああああ!!!なんだってこんな所拠点にしたんだよウィルヘルムの野郎!不気味過ぎんだろ!!」
「ああ、うん。そうだね。」
・・・怖いものは怖いらしい。何せ、何処へ行くにも人形が此方を見ている気がしてならないのだから。本当に、(偽)魔王は何故こんな所を選んだのか。
「ん?おいレプト!聞いてるのか?」
「え、あ、ああ。聞いてるよ兄さん。」
「そうか!ならいい!」
「うん、兄さんはずっとそのままでいてね。」
「・・・今なんか聞こえたような。」
何処か上の空であった弟に気づいた兄であったが、馬鹿なので簡単過ぎるまでに誤魔化されてしまった。
『あの日記・・・何処に落として来たんだろ。あれが他の2人に見つかる前にどうにかしないと・・・。』
どうやら割と深刻な考え事をしていたらしいミノタウルス弟。そのまま曲がり角を曲がる。と、
「あ、ミノタウルス。」
「「あ、魔法少女」」
「違ぁぁぁぁぁう!!!!!」
出会ったのは食パンくわえた女子高生ではなく、ピンクのロリータ服を着た勇者であった。
「すっげぇ、全く相手にされなかった・・・。」
「でしょ?」
「本当だね。これは便利だ。」
やはりと言うか、集団とは勇者パーティーのことである。夏樹にコスプレをさせた後、現在は人形屋敷へ潜入中だ。屋敷の中は薄暗く、いかにも何か出そうな雰囲気を醸し出している。現につい今しがた、屋敷の代名詞とも言える人形とすれ違ったばかりである。と、
「本当ですね・・・そういえば、何故私達は襲われなかったのでしょうか?私やフレイア様とアガン様はいつもの格好のままですが・・・?」
シャロンが割と今更な事に気がついたようだ。その質問に、普段着からして既に人形の様であるミストが答える。
「パーティーメンバーの内の誰か1人でもそういった格好をしてれば問題ないよ。」
「無いのかよ!?じゃあ俺がこんな格好してる意味は!?」
「無い!!!」
「言い切った!?てか取り敢えず、せめて剣だけでもいいから返してくれ!」
あんまりな話に叫ぶ夏樹。ちなみに今の彼の姿は、ピンクのひらひらロリータ服に、これまたピンクのハートと翼の装飾がついた可愛らしい剣である。いつものかっこいい剣はミストに没収されている。
ついでにミストの今の格好だが、いつものゴシックワンピではなく、以前この屋敷で入手した可愛らしいゴシックドレスになっている。人形度割り増し状態であった。理由?それはまあ、あれだ。何となくだ。
「えー。でもその剣、勇者が使ってるやつよりもランク上だよ?常時回復効果とHP・MP増加、しかも攻撃力も申し分無し。ロリータ服も合わせて金貨1000枚のところ、今ならお値段たったの金貨398枚!」
「よし買っ・・・わねえよ!?これ買ったら毎日着せられるフラグだろ絶対!」
「・・・ッチ」
「舌打ち!?今舌打ちした!?」
どさくさに紛れて売り込むミスト。と、そこで
「おいミスト、せっかく可愛い格好してんだから、舌打ちは止めとけよ?」
「うん、わかった!」
アガンからの言葉がくる。
途端、さきほどまでの何処か黒さを感じさせる表情を一変させて、周囲に花を撒き散らしながらの満面の笑み。頭をなでるアガンの手もあり、ミストは一気にご機嫌状態である。
「俺と対応が違いすぎないか!?」
諦めろ。
_______________
場所は少し移り、同じ人形屋敷の別の廊下を歩くミノタウルス兄弟がいた。既にモンスターと化した彼らは人形に襲われる事は無いらしい。が、
「あああああ!!!なんだってこんな所拠点にしたんだよウィルヘルムの野郎!不気味過ぎんだろ!!」
「ああ、うん。そうだね。」
・・・怖いものは怖いらしい。何せ、何処へ行くにも人形が此方を見ている気がしてならないのだから。本当に、(偽)魔王は何故こんな所を選んだのか。
「ん?おいレプト!聞いてるのか?」
「え、あ、ああ。聞いてるよ兄さん。」
「そうか!ならいい!」
「うん、兄さんはずっとそのままでいてね。」
「・・・今なんか聞こえたような。」
何処か上の空であった弟に気づいた兄であったが、馬鹿なので簡単過ぎるまでに誤魔化されてしまった。
『あの日記・・・何処に落として来たんだろ。あれが他の2人に見つかる前にどうにかしないと・・・。』
どうやら割と深刻な考え事をしていたらしいミノタウルス弟。そのまま曲がり角を曲がる。と、
「あ、ミノタウルス。」
「「あ、魔法少女」」
「違ぁぁぁぁぁう!!!!!」
出会ったのは食パンくわえた女子高生ではなく、ピンクのロリータ服を着た勇者であった。
2
お気に入りに追加
2,399
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

抽選結果は大魔王だったので、剣と魔法と平和と欲に溢れた異世界で、のんびりとスローライフしたいと思います。
蒼樹 煉
ファンタジー
抽選で、大魔王として転生したので、取り敢えず、まったりと魔物生成しながら、一応、大魔王なので、広々とした領土で、スローライフっぽいものを目指していきたいと思います。
※誹謗中傷による「感想」は、お断りです。見付け次第、削除します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
※駄文+誤字脱字+その他諸々でグダグダですが、宜しくお願いします。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる