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要塞都市アルカディアにて

第16話 ミストとアガン

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勇者召喚が成されたのと同時刻


ー異世界より勇者が召喚されましたー

ー勇者召喚に伴い、上位職を与える者を選出ー

ー【剣士アガン】【魔術士フレイア】【治癒士シャロン】が選出されましたー

ー【剣士】を【魔法剣士】、【魔術士】を【大魔導士】、【治癒士】を【賢者】へクラスチェンジしましたー


「ーーーは?」


突然、アガンの頭に声が響いた。

ークラスチェンジによりステータスが上昇しますー

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
アガン(人間)

ジョブ:魔法剣士  Lv75

HP350000   MP210000

物理攻撃力:570000
魔法攻撃力:512000
物理防御力:487000
魔法防御力:470000

アクティブスキル
剣術Lv5(MAX)
魔術士呪文Lv3
神剣術Lv2 new!
高位補助呪文Lv5(MAX) new!
魔法剣 new!

パッシブスキル
物理防御力上昇Lv3
魔法防御力上昇Lv2
物理攻撃威力上昇Lv5(MAX)
魔法攻撃威力上昇Lv3
回避行動成功率上昇Lv5(MAX) new!

称号
魔王のオカン new!
勇者パーティーの魔法剣士new!
_______________

「誰がオカンだ!」
「うおっ!なんだどうした。」


今日も依頼クエストを終え、酒場で飲んでいたアガン。ちなみにミストは既に宿で就寝中である。

この世界にいる者のうち、英雄級たる冒険者ランクAに相当する者はおらず、今回選出された3人が暫定で最強となる。故にアガンにも、ミストが魔王になった時と同様のことが起こった。ーーー勇者のお供になった事よりも【魔王のオカン】の称号にツッコミを入れるのが先だったのは如何なものか。
ミストのおかげと言うべきかミストのせいと言うべきか、割とすぐに冷静になったアガン。


「いや、なんでもねぇよ。急に叫んで悪かったな。」
「おう。にしても、オカンは大変だな。」


隣で飲んでいた冒険者に、ここぞとばかりに揶揄られる。


「・・・」

ドゴム!

「イッテエ!」


普段ならば諦めに近い感情から殴ったりはしない。が、今回ばかりは別であった。アガンは、頭を抱えて蹲る冒険者を置いて席を立った。





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



アガンはギルドマスター室の前に立っていた。軽く扉をノックすれば、予想していたよりも早く返事が来る。


「アガンだね。入って良いよ。」
「予想済みか。」
「まあね。」


勇者召喚を執り行う事に関しては、このアルカディア冒険者ギルドのギルマスたる彼も情報を掴んでいた。故に、アガンが勇者の供に選ばれるであろうと予想し、彼の訪れを待っていたのである。


「ーーそれで、一体どうなったのかな?」
「見てもらったほうが早い。ステータスオープン」


「これはーーー。ステータスもとんでも無いけど、何だろうね、魔王が誰なのかわかった気がするよ、僕。」
「あぁ、そうだな・・・。」
「それでだアガン。これを知って、君はーー」



「ーーー君は、彼女をどうするつもりだい?」




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



真夜中。宿【妖精の隠れ家】へと戻ろうとするアガンの前に、ミストが現れた。
普段は外見通り、まるで子供と見紛うように輝いている表情が、今はなりを潜めている。


「ん?ミスト!?何だってこんな時間に外に出てんだよ。襲われたらどうすんだ。」


こんな時でもオカンは通常運転である。【魔王のオカン】の称号は伊達ではない。
と、ミストが口を開いた。


「ねぇ、アガン。」
「何だ?」
「1つ訊いてもいい?」
「ーーーいいぞ。」
「あのさ、もし、もしもだよ?もしーーー」



「知り合いが【魔王】だったら、アガンはどうする?」


勇者が召喚され、アガンが勇者の供に選ばれた事は、ミストにも同様に御告げがきた。故に、真夜中だというのに外に出てきたのである。ーーー不安と恐怖そして、ほんの少しの希望をもって。そして今、その感情をないまぜにした瞳で、この世界で唯一の仲間を見つめて、答えを待つ。


アガンは、その茶色い髪をかきながら答えた。


「そうだなーーー、俺だったら、そいつに世界をどうこうしようとかいう気が無いんならそのまま一緒にいるし、もしその気があるんだったら、先ずは説得してみるさ。」


「ーーーそっか。」

その言葉に、ミストの表情が少しばかり緩んだ。と、そこで、今度はアガンが尋ねる。

「なぁミスト。」
「ん?」
「俺も1つ訊いていいか?」
「ーーーいいよ。」
「それじゃあ、もし、俺がこれから王都の教会に顔出しに行かなきゃならねぇとしたら、だ。そしたらーーー」




「一緒に来るか?魔王様。」


「ーーーっうん!」


小さな姿の魔王様は、満面の笑みで頷いた。

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