28 / 123
王都編
浮遊島
しおりを挟む
しばらく待つこと五分。
女の子だから時間かかるかなー、と思っていたのだが、思っていたより早く戻ってきた。
「マスター、行けるよー」
「あいよ。じゃあシルファ、行ってくるわ」
「いってきまーす!」
「はい、エンゲルバードをお忘れなく」
「おう」
一人と一匹を連れて宿をあとにする。
「さて、目指すは国境付近だ」
「あいさ」
『エンゲルバードとやらは美味いのだろうか?』
「シルファが美味いって言ってるし美味いんじゃないか?」
『ふむ、ならば急ごう』
カッコつけてもいいけど涎は垂らすなよ。
先を歩くギルについていく形で門を通り外へ。
未だに侵攻の後が残る草原では、現在冒険者や騎士が総動員で素材回収を行っているところだ。
そんな彼らを横目に見ながら俺達は街道を歩いていく。
「こうして改めて歩くと気持ちがいいよね」
「ああ。ゲームではわからない森林の美しさに気持ちの良い風、排気の混じっていない美味い空気は格別だ」
「うん。初めて空気が美味しいって感じたよ」
『空気は美味いのか!?』
しっかりと食いしん坊キャラが板について来たギルは置いといて、そんな森林浴を楽しんでいるところを邪魔するもの達が現れた。
「へへ、なかなかの上玉じゃねーか」
「身ぐるみとその嬢ちゃんを置いていくなら生かしてやってもいいぜぇ?」
まぁ盗賊さんたちですね。
「はぁ」
と、ため息を吐きながら腰につけた市販の片手剣を手に掛ける。
「待ってマスター。私がやる」
そう言って前に出るカプリス。
「大丈夫か?」
「わかんないけど、こっちにいることになるなら一度は通らないとだしね」
「そうか」
まぁ、今回は任せてみよう。
「ん? 嬢ちゃんが相手かい?」
「ははは! 嬢ちゃんには悪いがお兄さんたちは強いぞぉー?」
「そっか」
「へ?」
無駄話をしている間にカプリスは自称お兄さんな盗賊の頭を斬り飛ばす。
自称お兄さんからしたら、気がついたら目の前にカプリスがいて、その光景を最後に意識が消えていったように感じただろう。
「こ、この女あああああ!!!」
「ぶっ殺してやる!」
キレた盗賊達だが、その矛先には既にカプリスはいない。
「どこを見ているのさ」
その言葉と共にスパパっと全員頭が地面に転がり落ちた。
「ふぅ・・・。なんだろ? 変なもやもやが残るなぁ・・・」
眉間にシワを寄せるカプリス。
「申し訳ないって気持ちでも湧き出てきたか?」
「それはないなー。でもなんだろ、まだ割りきれないみたいな?」
「いや、聞かれても」
「だよねー」
割りきれないか。
初めての人殺しだもんな。
俺みたいに慣れた身体に入ってるわけでもない。彼女は普通の女子高生だ。
そう簡単に割りきれるわけないわな。
「まあいいや。行こっ!」
「あいよ」
盗賊の死体に火を点け、再び国境に向けて歩みを進めた。
ある程度歩いたところで、先頭を行くギルが立ち止まった。
「どした?」
『このペースだと遅い。私に乗れ』
そう言って大きくなるギル。
実際早く行こうと思えば早く行けるのだが、景色を楽しみながらだとギルには退屈のようだ。
「・・・そうだな」
「わーいもふもふー!」
二人して巨大なギルに乗る。
うむ。
もふもふは最高だな。
『行くぞ』
そう言って走り出すギル。
「おー、速い速い」
「ジェットコースターみたいだー!」
楽しそうで何より。
流れ景色は森から草原、丘陵とどんどん移り変わっていく。
この流れ去る景色の中に幾つの絶景ポイントがあるに違いない。これだから高速移動は嫌いなんだ。
景色を楽しめないじゃないか。
と、心の中で愚痴っていると、気が付いたら山を越えており国境付近まで来ていた。
速えーよ。
「ギル。関門まで行かなくていい。そうだな、あの大樹の所で止まってくれ」
『了解した』
流れていく景色の中に見つけた大きな樹。
ギルにそこで止まってもらった。
「ありがとう。ギル」
「楽しかったよ! また乗せてね」
『うむ』
満足げなギルから大樹へと視線を移す。
「ん? んん!?」
「どったの?」
この大樹のただの樹かと思ったら、葉の形も見覚えがある。
幹の質もそうだ。
この大樹──
「──世界樹の若木じゃねーか!!」
「ふぇ!?」
『ふむ』
でもなんでこんなところに・・・?
「なんかのイベントの名残かな?」
イベントかぁ・・・。
「あ、そう言えば世界樹関係で一つイベントあったな。内容は忘れたけど」
「マスターがイベントの内容忘れるって珍しいね」
「んまぁ、報酬が今一だったってのが一番だろうな。おそらくやる気が起きなかったんだろう」
「木だけに?」
「お、そうだな」
適当に流すのがベスト。
にしてもいい樹だな。
少し離れて、世界樹の若木の半分から上が視界に映るところでスクショ。
「お?」
スクショしたあと、良いものが見れたので世界樹の横の空に視線を移す。
「カプリス、ギルター。天空ダンジョンのお出ましだぞ」
「ほんと!?」
『どこだ?』
一人と一匹は俺のところまで来ると、俺と同じ方を見据える。
「おー! 現実で見るとスゴいね!」
「ああ、壮観だな」
『あれがエンゲルバードのいる天空ダンジョンか』
お前は涎を垂らすな。
天空ダンジョンはゲームの時でも最大級と言っていいほどの規模を誇るダンジョンで、そのダンジョンのある浮き島自体も相当の大きさがある。
それが、浮いて動いているのだ。壮観で絶景でロマンの三拍子揃ったその島が!
俺は死神シリーズに変えて、迷わず空へ。
いいアングルを探し、スクショだ!
「素晴らしい!」
い絵がとれたので降下。
「マスターだけズルい!」
『うむ』
「悪いな。さっそく天空ダンジョンに向かうか」
「でも、どうやって? きゃっ!」
疑問を発したカプリスを姫抱きする。
ギルは無言で背中に張り付いた。
「嫌かもしれないが、我慢してくれ」
背中はギルが占領したので、姫抱きしかなかった。
小脇に抱えてもいいが、女の子だしな。
丁重に扱っていかないと。
「嫌じゃないよ! 最高だよ!」
ピコン
caprice:ふへへへへwwwwww
きらっきらな笑顔のカプリス。チャットがなければ完璧だったな。
この抱き方だと顔が近くて少し気恥ずかしいが我慢だ。
「ならよかった。行くぞ!」
地面を踏みしめて一気に上昇。
「すごい! 飛んでるよ!」
「ほれ、あれを見ろ」
「うわぁ! スッゴい絶景だね! 幻想的ぃ!」
テンション高いなぁ。
フワッと移動して浮き島に上陸した。
女の子だから時間かかるかなー、と思っていたのだが、思っていたより早く戻ってきた。
「マスター、行けるよー」
「あいよ。じゃあシルファ、行ってくるわ」
「いってきまーす!」
「はい、エンゲルバードをお忘れなく」
「おう」
一人と一匹を連れて宿をあとにする。
「さて、目指すは国境付近だ」
「あいさ」
『エンゲルバードとやらは美味いのだろうか?』
「シルファが美味いって言ってるし美味いんじゃないか?」
『ふむ、ならば急ごう』
カッコつけてもいいけど涎は垂らすなよ。
先を歩くギルについていく形で門を通り外へ。
未だに侵攻の後が残る草原では、現在冒険者や騎士が総動員で素材回収を行っているところだ。
そんな彼らを横目に見ながら俺達は街道を歩いていく。
「こうして改めて歩くと気持ちがいいよね」
「ああ。ゲームではわからない森林の美しさに気持ちの良い風、排気の混じっていない美味い空気は格別だ」
「うん。初めて空気が美味しいって感じたよ」
『空気は美味いのか!?』
しっかりと食いしん坊キャラが板について来たギルは置いといて、そんな森林浴を楽しんでいるところを邪魔するもの達が現れた。
「へへ、なかなかの上玉じゃねーか」
「身ぐるみとその嬢ちゃんを置いていくなら生かしてやってもいいぜぇ?」
まぁ盗賊さんたちですね。
「はぁ」
と、ため息を吐きながら腰につけた市販の片手剣を手に掛ける。
「待ってマスター。私がやる」
そう言って前に出るカプリス。
「大丈夫か?」
「わかんないけど、こっちにいることになるなら一度は通らないとだしね」
「そうか」
まぁ、今回は任せてみよう。
「ん? 嬢ちゃんが相手かい?」
「ははは! 嬢ちゃんには悪いがお兄さんたちは強いぞぉー?」
「そっか」
「へ?」
無駄話をしている間にカプリスは自称お兄さんな盗賊の頭を斬り飛ばす。
自称お兄さんからしたら、気がついたら目の前にカプリスがいて、その光景を最後に意識が消えていったように感じただろう。
「こ、この女あああああ!!!」
「ぶっ殺してやる!」
キレた盗賊達だが、その矛先には既にカプリスはいない。
「どこを見ているのさ」
その言葉と共にスパパっと全員頭が地面に転がり落ちた。
「ふぅ・・・。なんだろ? 変なもやもやが残るなぁ・・・」
眉間にシワを寄せるカプリス。
「申し訳ないって気持ちでも湧き出てきたか?」
「それはないなー。でもなんだろ、まだ割りきれないみたいな?」
「いや、聞かれても」
「だよねー」
割りきれないか。
初めての人殺しだもんな。
俺みたいに慣れた身体に入ってるわけでもない。彼女は普通の女子高生だ。
そう簡単に割りきれるわけないわな。
「まあいいや。行こっ!」
「あいよ」
盗賊の死体に火を点け、再び国境に向けて歩みを進めた。
ある程度歩いたところで、先頭を行くギルが立ち止まった。
「どした?」
『このペースだと遅い。私に乗れ』
そう言って大きくなるギル。
実際早く行こうと思えば早く行けるのだが、景色を楽しみながらだとギルには退屈のようだ。
「・・・そうだな」
「わーいもふもふー!」
二人して巨大なギルに乗る。
うむ。
もふもふは最高だな。
『行くぞ』
そう言って走り出すギル。
「おー、速い速い」
「ジェットコースターみたいだー!」
楽しそうで何より。
流れ景色は森から草原、丘陵とどんどん移り変わっていく。
この流れ去る景色の中に幾つの絶景ポイントがあるに違いない。これだから高速移動は嫌いなんだ。
景色を楽しめないじゃないか。
と、心の中で愚痴っていると、気が付いたら山を越えており国境付近まで来ていた。
速えーよ。
「ギル。関門まで行かなくていい。そうだな、あの大樹の所で止まってくれ」
『了解した』
流れていく景色の中に見つけた大きな樹。
ギルにそこで止まってもらった。
「ありがとう。ギル」
「楽しかったよ! また乗せてね」
『うむ』
満足げなギルから大樹へと視線を移す。
「ん? んん!?」
「どったの?」
この大樹のただの樹かと思ったら、葉の形も見覚えがある。
幹の質もそうだ。
この大樹──
「──世界樹の若木じゃねーか!!」
「ふぇ!?」
『ふむ』
でもなんでこんなところに・・・?
「なんかのイベントの名残かな?」
イベントかぁ・・・。
「あ、そう言えば世界樹関係で一つイベントあったな。内容は忘れたけど」
「マスターがイベントの内容忘れるって珍しいね」
「んまぁ、報酬が今一だったってのが一番だろうな。おそらくやる気が起きなかったんだろう」
「木だけに?」
「お、そうだな」
適当に流すのがベスト。
にしてもいい樹だな。
少し離れて、世界樹の若木の半分から上が視界に映るところでスクショ。
「お?」
スクショしたあと、良いものが見れたので世界樹の横の空に視線を移す。
「カプリス、ギルター。天空ダンジョンのお出ましだぞ」
「ほんと!?」
『どこだ?』
一人と一匹は俺のところまで来ると、俺と同じ方を見据える。
「おー! 現実で見るとスゴいね!」
「ああ、壮観だな」
『あれがエンゲルバードのいる天空ダンジョンか』
お前は涎を垂らすな。
天空ダンジョンはゲームの時でも最大級と言っていいほどの規模を誇るダンジョンで、そのダンジョンのある浮き島自体も相当の大きさがある。
それが、浮いて動いているのだ。壮観で絶景でロマンの三拍子揃ったその島が!
俺は死神シリーズに変えて、迷わず空へ。
いいアングルを探し、スクショだ!
「素晴らしい!」
い絵がとれたので降下。
「マスターだけズルい!」
『うむ』
「悪いな。さっそく天空ダンジョンに向かうか」
「でも、どうやって? きゃっ!」
疑問を発したカプリスを姫抱きする。
ギルは無言で背中に張り付いた。
「嫌かもしれないが、我慢してくれ」
背中はギルが占領したので、姫抱きしかなかった。
小脇に抱えてもいいが、女の子だしな。
丁重に扱っていかないと。
「嫌じゃないよ! 最高だよ!」
ピコン
caprice:ふへへへへwwwwww
きらっきらな笑顔のカプリス。チャットがなければ完璧だったな。
この抱き方だと顔が近くて少し気恥ずかしいが我慢だ。
「ならよかった。行くぞ!」
地面を踏みしめて一気に上昇。
「すごい! 飛んでるよ!」
「ほれ、あれを見ろ」
「うわぁ! スッゴい絶景だね! 幻想的ぃ!」
テンション高いなぁ。
フワッと移動して浮き島に上陸した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5,261
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる