上 下
9 / 123
王都編

王都

しおりを挟む
 洞窟を抜けてから約二時間。
 今上っている丘の先に王都があるのだ。

「・・・ふぅ」

 登りきったところで前方を見渡す。

「こう見ると、やはり大きいな」

 王都を眼下にそう呟く。
 分厚い壁で覆われた、所謂城塞都市。
 幾多もの魔物の行軍を阻止した鉄壁の都市、それがここレインアース王国の王都、アイアスだ。
 花びらのような形をしたアイアスは名所と言われている通り綺麗だった。
 ゲームではなんども目にしてるのであまり新鮮味を感じないが、とりあえずスクショしといた。
 フォルダを確認したので王都に向かった。



 門のところでカードを見せる。
 因みに装備は冒険者装備に変えた。
 さすがに死神シリーズで来たらややこしくなる未来しか見えなかった。

「ッ!? ノア!?」
「ああ」

 またこのパターンか。
 そう言うの結構ですから。
 門番は仲間に耳打ちをしたと思ったら、耳打ちされたもう一人は走って街の中へと入っていった。

「か、確認しました! ようこそアイアスへ! ノア様は冒険者組合へお願いします」
「わかった。騒がせてすまないな」
「いえ!」

 門を潜って真っ直ぐ冒険者組合へと向かう。
 煉瓦や石造りの家から、ヨーロッパのような雰囲気がある街並み。
 ヨーロッパの家々は画像とかでしか見たことないが、多少異なりはするものの似ていた。
 こう、現実として見ると外国にでも来た気分になる。
 外国どころか世界自体違うがな。
 ゆっくりと見物しながら回りたいところだが、おそらく先ほど走っていったのは組合に伝令を頼まれたのだろう。
 となると、遅くなると少し申し訳ない。
 見て回るのはまた今度にしておこう。
 拠点はあの町レーンのギルドだけしかないが、最上位の依頼とかとなると王とに来ないと受けることが出来ないので、王都の組合にはかなりお世話になっている。
 なので、迷うことなく組合にたどり着くことができた。

 両開きの扉の片側を押して中へ入る。
 王都の組合は地方の組合みたいに酒場もあれば、ちょっとした店も開かれている。
 正直、ポーションなどの消耗アイテムは雑貨屋や薬屋にいかずとも揃えることができるだろう。
 さすが王都、都会だな。
 今一度認識される王都───都会の凄さであった。
 俺は受付の前まで行く。

「こんにちは。どのようなご用件で?」

 対応してきたのは男性職員。

「ここ来るよう言われたんだが・・・」

 と言ってカードをカウンターに置く。

「ッ!? こちらへどうぞ」

 一度驚くも、取り乱すことなく俺を案内する職員。
 この職員できるな。
 俺が通されたのは組合三階の奥の部屋。
 職員は扉をノックする。

「ノア様をお連れしました」
「・・・入れ」

 中からは聞いたことのあるしゃがれた声が聞こえた。

「失礼します。ノア様どうぞ中へ」
「ありがとう」
「では、私は失礼します」

 職員hが一礼して部屋から出て行った。
 さて・・・。

「久しぶりだなレグルス」
「ああ、久しぶりだノアよ」

 俺を出迎えた執務用の椅子に座る50代の男。名をレグルス。
 彼、レグルスは王都を拠点に活動していた大手ギルド【Witchcraft】のギルドマスターだ。
 彼はゲーム時代全ての魔術職を極めた唯一の男で、魔術においての知識、技量、火力において、レグルスの右に出る者はいないだろう。
 レベルは8806で彼もまたユグドラシル最強の一角である。
 ちなみにユグドラシルの上位プレイヤー20名平均レベルは7000で、うちのギルドメンバーの平均は8700でユグドラシルで世界一位のレベル平均だ。
 なのでレイド戦とかではいつも一人誘われていたのはいい思い出だ。
 ・・・領土戦とかでは大ブーイングだったけどな。
 レグルスのギルドは名前の通り魔術職しかいないギルドで完全後衛ギルドだ。
 ・・・まあ、魔術師と名ばかりの前衛魔術師も混じっていたがな。
 あの人たちは撲殺メインの・・・いや、やめとこう。

「お前消えなかったプレイヤーか」
「うむ、サービス終了と同時に光に包まれてな。気が付いたらギルドの執務室にいたのだ」
「そこから一人だったのか?」
「ああ。ここ最近は飛ばされてきたプレイヤー達が私の所に顔出しに来た。お前のようにな」

 そりゃ来るだろうな。

「さてノア。お前に組合長として依頼したいことがある」
「おお、組合長直々の依頼か」
「ああ、内容は神聖の森最奥の調査だ」
「神聖の森の?」

 今更か?

「最近魔物の活性化が確認されてな。その原因の調査を頼みたいのだ」
「活性化かぁ。経験値稼ぎが捗りそうだな」
「・・・もう上がらんだろうが」
「そうだった」

 サブキャラに変えられるなら変えてレベリングするんだけどなぁ。
 活性化は経験値が通常より三倍貰えるのでお得なので、俺たちのギルドでは活性化時間や地域を調べてはレベリングに繰り出していたからなぁ。

「まあ、いいや。報酬は?」
「3Mだそう」
「了解。ちょちょいとやって来てやるよ」
「頼んだ」

 ちなみに1M100万だ。
 調査で300万貰えるなら儲かりだ。
 金はいくらっても損はないからな!


────────────────────

ほんの少し改稿しました
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,742pt お気に入り:9,010

ニコニココラム「R(リターンズ)」 稀世の「旅」、「趣味」、「世の中のよろず事件」への独り言

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:887pt お気に入り:28

自由に語ろう!「みりおた」集まれ!

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:22

わたしが嫌いな幼馴染の執着から逃げたい。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:26,764pt お気に入り:2,772

処理中です...