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第三大陸編
暑すぎる! フィアルード王国
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【虫の軍勢】との邂逅から早くも三日。
あの後、カプリスのお陰で落ち着いた俺はレグルスへ連絡した。
レグルスからの返答は「そちらについても調べておこう」とのこと。
おおっぴらには出来ないが、上手く調べてくれるだろう。
ゲーム時代でも彼はどこから得たのか謎な情報を教えてくれることがよくあった。
ホント、どこから情報を持ってくるんだろうな。
「マスター。ジメジメして変に暑いー」
汗に濡れた髪を額に張り付けたカプリスがローブでパタパタと服の中に風を送りながら愚痴を溢す。
「まあ、この辺りは湿度が高いからな。第三大陸特有の熱さに加えてこの湿度。そりゃ暑いさ」
「うへー」
項垂れるカプリスを傍目に辺りを見渡す。
地球では見ることのできない巨木が立ち並び、むしむしとした暑さが俺たちを襲っていた。
死神シリーズを装備していなかったら俺もカプリス同様暑さに愚痴を溢していたかもな。
「リーちゃん魔術かけてよー」
「さすがに湿度を防ぐ魔術はありませんよ。私だって暑いんですからね」
「うへー」
リーリスの言葉に更に項垂れるカプリス。
「ますたぁ」
「甘い声を出しても無理だ。そんな魔術はない」
「うぇー」
甘えるように縋りついてくるカプリスを引き剥がして先へ進む。
現在いる辺りは第三大陸の中央部。既にフィアルード王国の領土内に入っている。
【虫の軍勢】がいた森からしばらくフィズリールで移動したのち、町が近いため混乱を防ぐために徒歩での移動に移行した。
「ほら、見えてきたぞ。王都プロクスだ」
ある程度進んだところで足を止めて先を指さす。
そこには外壁に囲まれたたくさんの赤い屋根の建物があり、所々にあるレンガ造りの煙突からは煙が立ち上っている。
フェイアルード王国は鍛冶の盛んな国で、特に王都であるプロクスでは最大強化した武器の限界突破を行える唯一の場所だ。
スクショパシャリ。
「涼めるかなぁ?」
「冷房はないだろうが、室内なら冷却の魔術で冷やすことは出来るだろうな」
「やった! 早く行こうっ!」
さっきまでの憂鬱さはどこへやら。
彼女は元気いっぱいに走り出した。
あっという間に点になる彼女。
彼女のメインジョブであるシーカーはAGI特化の最速ジョブだ。しかもサブジョブにシーフをつけているため更に速度が上昇。完全速度特化型だ。
レベルも高い彼女はゲーム内最速だった。
俺を抜いてだけどな。
「ちょっと捕まえてくる」
「待ってくだ――」
リーリスが最後まで言い切る前に俺は走り出す。
ゲームの時ではいくらAGIが高くともここまで速くは移動できなかったため、なんか楽しい。
すぐにカプリスへと追いついた俺は襟を掴み取り止まる。
「まったく、元気になりすぎだ」
猫みたいにぶら下がるカプリスに言う。
「・・・暑い」
「あんだけダッシュしたらそりゃあな」
汗だくな彼女を下し、アイテムボックスからタオルを取り出して彼女の頭にかける。
「いきなり走り出さないで下さいよ」
「悪いな」
後から大きくなったギルターに跨ったリーリスが合流。
『・・・暑い』
「お前もか」
口を開けてハッハッと息を吐きだすギルター。
この暑さの中で走ったらオリジンウォルフでもこうなるのか。
リーリスが降りたところでギルターはいつものサイズになると、彼の背にフィズリールが留まった。
彼女だけはその体質のお陰で涼しげだ。
「そんなに急がなくても王都は逃げたりしないさ」
そう言って歩き出す俺にカプリスたちは付いてくる。
王都までの途中、色々と文句を垂れるカプリスをスルーして、やっと王都にたどり着いた。
「着いたー!」
万歳しながら喜ぶカプリス。
そんな彼女を見た門番たちは微笑みを浮かべていた。
「ようこそ王都プロクスへ。暑い中大変だったでしょう」
カードを見せるために門番のところに行くと、彼らは歓迎してくれた。
「ああ。早く宿で一息したいよ」
「そうでしょうね。何か身分証になる物をお願いします」
そう言われたので俺たちの俺たちはカードを提示する。
「ありがとうございます。どうぞ、お通りください」
「ありがとう」
お礼を言って門を潜る。
壁の内側は、まだ日が高いのもあってかとても賑わっていた。
「とにかく宿に向かおう」
「賛成っ!」
シュバッと手を上げて賛成するカプリス。
早く涼みたいようだ。
宿の場所は把握しているので直行する。
宿で二泊分の料金を払い、部屋へと向かう。
部屋割としては、いつも通り女子メンバーと俺、ギルターのペアで二部屋だ。
少し休憩を挟んでから、俺の部屋で予定を伝えることにした。
「ここ、プロクスでは二日間滞在したあとムスペル火山帯の方に向かうつもりだ。何か用意しておきたいものがあったらここで買い揃えておこう」
「ムスペル火山帯かぁ。確か耐熱装備じゃないと熱ダメージの入る地域だよね」
「ああ。まさにフランベが好みそうな場所だ」
「炎大好き過ぎでしょ。あの人」
「名前からしてフランベだからな」
炎と言えばフランベ。フランベと言えば炎。
まさに炎に憑りつかれた男。
「今日明日は休むもよし、買い物するもよしだ。二日間は自由に過ごしてくれ」
「はーい!」
「了解です」
『今日は休む』
『私は周辺を飛びたいですねー』
俺の言葉に各々反応して部屋を出て行った。
ギルターは真っ先にベッドで伸びた。
そんな彼のために冷却の魔術を使って程よい室温に調節する。
俺自身の準備はアイテムボックス内にあるアイテムで事足りるので、ギルターと同じく今日はゆっくり休むとしよう。
俺はアイテムボックスから本を取り出して椅子に腰かけ、本を開いた。
久々の読書タイムだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございます!
更新遅くなり申し訳ございません。
お気に入り登録、感想、誤字脱字の報告もお待ちしておりますよ!
あの後、カプリスのお陰で落ち着いた俺はレグルスへ連絡した。
レグルスからの返答は「そちらについても調べておこう」とのこと。
おおっぴらには出来ないが、上手く調べてくれるだろう。
ゲーム時代でも彼はどこから得たのか謎な情報を教えてくれることがよくあった。
ホント、どこから情報を持ってくるんだろうな。
「マスター。ジメジメして変に暑いー」
汗に濡れた髪を額に張り付けたカプリスがローブでパタパタと服の中に風を送りながら愚痴を溢す。
「まあ、この辺りは湿度が高いからな。第三大陸特有の熱さに加えてこの湿度。そりゃ暑いさ」
「うへー」
項垂れるカプリスを傍目に辺りを見渡す。
地球では見ることのできない巨木が立ち並び、むしむしとした暑さが俺たちを襲っていた。
死神シリーズを装備していなかったら俺もカプリス同様暑さに愚痴を溢していたかもな。
「リーちゃん魔術かけてよー」
「さすがに湿度を防ぐ魔術はありませんよ。私だって暑いんですからね」
「うへー」
リーリスの言葉に更に項垂れるカプリス。
「ますたぁ」
「甘い声を出しても無理だ。そんな魔術はない」
「うぇー」
甘えるように縋りついてくるカプリスを引き剥がして先へ進む。
現在いる辺りは第三大陸の中央部。既にフィアルード王国の領土内に入っている。
【虫の軍勢】がいた森からしばらくフィズリールで移動したのち、町が近いため混乱を防ぐために徒歩での移動に移行した。
「ほら、見えてきたぞ。王都プロクスだ」
ある程度進んだところで足を止めて先を指さす。
そこには外壁に囲まれたたくさんの赤い屋根の建物があり、所々にあるレンガ造りの煙突からは煙が立ち上っている。
フェイアルード王国は鍛冶の盛んな国で、特に王都であるプロクスでは最大強化した武器の限界突破を行える唯一の場所だ。
スクショパシャリ。
「涼めるかなぁ?」
「冷房はないだろうが、室内なら冷却の魔術で冷やすことは出来るだろうな」
「やった! 早く行こうっ!」
さっきまでの憂鬱さはどこへやら。
彼女は元気いっぱいに走り出した。
あっという間に点になる彼女。
彼女のメインジョブであるシーカーはAGI特化の最速ジョブだ。しかもサブジョブにシーフをつけているため更に速度が上昇。完全速度特化型だ。
レベルも高い彼女はゲーム内最速だった。
俺を抜いてだけどな。
「ちょっと捕まえてくる」
「待ってくだ――」
リーリスが最後まで言い切る前に俺は走り出す。
ゲームの時ではいくらAGIが高くともここまで速くは移動できなかったため、なんか楽しい。
すぐにカプリスへと追いついた俺は襟を掴み取り止まる。
「まったく、元気になりすぎだ」
猫みたいにぶら下がるカプリスに言う。
「・・・暑い」
「あんだけダッシュしたらそりゃあな」
汗だくな彼女を下し、アイテムボックスからタオルを取り出して彼女の頭にかける。
「いきなり走り出さないで下さいよ」
「悪いな」
後から大きくなったギルターに跨ったリーリスが合流。
『・・・暑い』
「お前もか」
口を開けてハッハッと息を吐きだすギルター。
この暑さの中で走ったらオリジンウォルフでもこうなるのか。
リーリスが降りたところでギルターはいつものサイズになると、彼の背にフィズリールが留まった。
彼女だけはその体質のお陰で涼しげだ。
「そんなに急がなくても王都は逃げたりしないさ」
そう言って歩き出す俺にカプリスたちは付いてくる。
王都までの途中、色々と文句を垂れるカプリスをスルーして、やっと王都にたどり着いた。
「着いたー!」
万歳しながら喜ぶカプリス。
そんな彼女を見た門番たちは微笑みを浮かべていた。
「ようこそ王都プロクスへ。暑い中大変だったでしょう」
カードを見せるために門番のところに行くと、彼らは歓迎してくれた。
「ああ。早く宿で一息したいよ」
「そうでしょうね。何か身分証になる物をお願いします」
そう言われたので俺たちの俺たちはカードを提示する。
「ありがとうございます。どうぞ、お通りください」
「ありがとう」
お礼を言って門を潜る。
壁の内側は、まだ日が高いのもあってかとても賑わっていた。
「とにかく宿に向かおう」
「賛成っ!」
シュバッと手を上げて賛成するカプリス。
早く涼みたいようだ。
宿の場所は把握しているので直行する。
宿で二泊分の料金を払い、部屋へと向かう。
部屋割としては、いつも通り女子メンバーと俺、ギルターのペアで二部屋だ。
少し休憩を挟んでから、俺の部屋で予定を伝えることにした。
「ここ、プロクスでは二日間滞在したあとムスペル火山帯の方に向かうつもりだ。何か用意しておきたいものがあったらここで買い揃えておこう」
「ムスペル火山帯かぁ。確か耐熱装備じゃないと熱ダメージの入る地域だよね」
「ああ。まさにフランベが好みそうな場所だ」
「炎大好き過ぎでしょ。あの人」
「名前からしてフランベだからな」
炎と言えばフランベ。フランベと言えば炎。
まさに炎に憑りつかれた男。
「今日明日は休むもよし、買い物するもよしだ。二日間は自由に過ごしてくれ」
「はーい!」
「了解です」
『今日は休む』
『私は周辺を飛びたいですねー』
俺の言葉に各々反応して部屋を出て行った。
ギルターは真っ先にベッドで伸びた。
そんな彼のために冷却の魔術を使って程よい室温に調節する。
俺自身の準備はアイテムボックス内にあるアイテムで事足りるので、ギルターと同じく今日はゆっくり休むとしよう。
俺はアイテムボックスから本を取り出して椅子に腰かけ、本を開いた。
久々の読書タイムだ。
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