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第4章【水曜の湖畔《時雨》】

起きて前へと進め【アシダカ軍曹視点】

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 いつだっただろうか無骨で冷たいような音が私の脳裏を貫いたのは。
 ここのところよく目覚めるものが多いけど、今回ばかりはそれが夢なのか現実であるのか軍曹にはさっぱり……微睡みと幻に包まれたかのような曖昧で朧気な思考で辺りを見渡した。

 いつもの結愛や冥綾も……そして温かな智美も居ない。
 それどころか思えば忌々しくて憎いあのスイッチの部屋で私は寝ていたにすぎない、夢を見ていたにすぎないと言う現実に連れ戻されてしまった。
 どうして今さらあんな幸せな夢を見てしまったのか自分でもわからなくて……それでもって成功した夢なんて未練がまししいモノにすがってまで見てしまうなんてどうにかしてるんだなぁって。

 本音で言えば覚めない夢であってほしかった、現実であってほしかった……。
 でも目の前の現実は冷たくて無音で、世界から軍曹だけが切り離されたような孤独感が何ともたまらない。
 自分の涙が思わず悔しさからか伝って布団を濡らす。

「お、おにーさんのご飯なんて作ることもここじゃ出来ないんだぞ、軍曹は寝る……ぞ?」

 朝の6時、それは軍曹が起きてはおにーさんのためにご飯を作る時間だがそれは今や囚われた身には関係ない……ならばもう1度寝て不貞寝を決めた方が気持ち良さそうだと理解し、初めて自分が眠さで寝たいなんて欲求に素直になれたような気もするが、こんな形では今は嬉しいなんて思えるものか。

 布団をかけようとした直後だ、夢にしてはあまりにも鮮明に覚えすぎている点に軍曹は気がついて慌てて飛び起きては妙な顔をしてアゴに手を添えて……深々と考えてみる。



 ……イメージするんだぞ、確かこう。



 身体の中にグルグルと循環するはあの曜力のエネルギー。
 いけるっ、このまま集中するんだぞっ!!















「【水曜魔法・アイスキューブ】なんだぞぉっ!!」



 早朝だろうがそんなの関係ない、できる限りの声をお腹の底から叫んでは両腕を前にし空中に存在する水蒸気を冷やして固めた。
 光輝きながら具現化されるアイスキューブはとうとう夢なんかに頼ることなく、自分の力で精製され重々しくゴンッと音をたてながらアイスキューブは地面へと落下すると特に割れるわけでもなくツルツル滑っては空かない扉にぶつかり停止する。
 歩いて数歩の距離だが思わず早歩きで追いかけては勝利のポーズを称するがごとく、持ち上げ……れる訳でもなかった。

 当たり前のように重量があるから仕方無いとしてもこの嬉しさ、どう表現してくれよう……そう、例えるなら踏み台にしてガッツポーズ。
 決まったのだ、王道だが今1番最高にクールなのだぞ。

「夢のとおりやはり小さいけど、ついに自分の力でも出来たんだぞ……楽しいんだぞ!! それ、もう1個なんだぞ。」

 子供は楽しいことは飽きるまでやるのが本分、軍曹は作れる限り作りまくった。
 すると不思議なことにハーフサイズしか作れない軍曹のは8つ組み上げると基本1つと同じ大きさにどういうわけか合体する。
 それも光輝いてボンって感じにまとまってまさに合体って言った方が早い……要するにどこかのキング化ってヤツ。

「よし、これをボタンの上で組み上げて……と。」

 アイスキューブを乗せれば反応すること昨日学んだ、だが軍曹のは小さすぎて単体のじゃなぜか感知される訳でもないとなると、やることは1つ。
 スイッチが作動するように組み上げて1つの大きいアイスキューブにすれば何ら問題ないことに速攻気がつけるあたり確実に賢さも上がってるのは自身でも感づいているんだろう。
 だがしかし、好奇心はどんどん膨れ上がりそれは新たな疑問となる。

「はて? 普通サイズのアイスキューブをさらに8つ組み上げたらもっと大きなアイスキューブになるんだろうか?」

 簡単に言えば軍曹サイズのを32個使って通常サイズの倍のを作り上げようという作戦だ、もう扉はいつでも開ける状態にしておいて黙々と積み上げて行くとだ……。

 結論から言えば実験は成功だ、私の憶測はやはり正しかった。
 こんな大きすぎて邪魔でしかないオブジェが出来上がってしまったのは事実であろうが、超大成功の証として智美に見せてはギャフンと言わせる口実が出来上がったと思うとニヤニヤが止まらなくなってきたのだぞ。
 たまにおにーさんにもニヤニヤしてるのがバレて【怖いわぁ】なんて言われることもあるが、これが笑わずに言われるかって話。

 易々と開いた扉をみて、無い胸を張ってドヤァってするとその場をあとにした。
 智美はどこにいるかわからないし、相変わらず通路に出たからと言ってここがどこだかわかるわけでもないけどなぜか今は自信に満ち溢れている、歩けば何とかなる……そう思って止まない軍曹の歩みは1歩は小さくても成し遂げたことは大きな1歩となりて今日と言う歯車が新たに動き出す。
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