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第1章【日曜の港《陽光》】

何を食べて大きくなる者ぞ

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 さて、風呂にも入って一息ついたらそのあとには何があるか?
 腹の虫が今日も元気に飯を欲しているとは生きてる証拠、結構結構じゃないか。
 空きっ腹を撫でてもう少しの辛抱だと腹の虫に言い聞かせるも、やはりご飯となるとここの喫茶店に限るな。
 
 喫茶店なのにご飯と聞くと違和感を感じるかもしれないが、ここはもうもはやお食事処よろしくオーダーすれば大抵なんでも提供してくれるお人好しの経営する寂れた喫茶店としか言えない。
 もう、そうとしか言えないがそのぶん私達のリビングのような独り占めできる空間となっていて非常に快適だ
 と言うかむしろほぼ毎日いてご飯を食べてる気がするのは気のせいだろうか?。



 ……何? 常にここでご飯を食べていてたまには自分で作らないのか……だと?



 まあ私は料理できない訳じゃないし、仮にめんどくさかっただけだとしてもスゴいのを作れるから女子力低いだとか言うな。
 言ったら命を刈り取る。

 それに私は悪くない、天音の料理がうまいのがいけないのだ。

「はぁ~い、結愛ちゃんにはオムライス。 め~ちゃんには煮魚セットだよ。」

 ふむ、相変わらず何を頼んでも本当に出してくれるとは常に食材が揃ってると思うと脱帽ものだな。
 さて、飯中のパソコンはいかんせん行儀が悪いから一人称方式のナレーションはここまでだ。

「ねーねー、天音!! 冥綾の様子ってさぁ、最近オカシイよね。 パソコンに独り言……。」

「結愛ちゃん、し~っ、だよ? こう言うのはねぇ、わかってても言っちゃダメなんだからね?」

 フォローは任せてと言わんばかりに私を見てはウインクしてアイサイン送ってこっちを察してくれてる辺りは対応としては素敵だが、なぜだろう?
 天音ですら敵に思えてくる言い回しとしか思えないのは。
 まあ、自覚がなさそうなので別に良いのだけどな、もう慣れてきた頃だし清新も鋼鉄の武装をしてある程度のダメージはカバーできてきた……かもしれない。

 とりあえずよく働いたから今はこの赤魚の煮魚が冷めないうちにいただくとするか。

 いただきます!!















 やはり天音の料理は最高だと冥綾は頷きながら赤魚を美味しそうに食べるも少しばかり箸を休めては考える。



 元々私達は一人の存在だったから、分割されなければこの料理スキルも自分の能力に含まれるはずだ……と。



 これはこれで自画自賛なんじゃないかと思うもそんなはずはない、分割された時点で個の意識が存在するため料理の腕前もそれぞれバラバラになってしまっている。
 まあ、冥綾の料理の腕前はどうかは誰も知らないが彼女いわくスゴいと言うのならたぶんスゴいのだろう。

 さて、忘れちゃいけない存在だが今は冥綾のポケットの中ではスクナミコが米粒1粒を美味しそうに頬張っているではないか?
 彼なのか彼女なのか性別がはっきりしないが身長が3センチしかないのだから、米粒1粒であろうとおにぎりレベルの大きさに等しい。
 ただし、食感が粒々じゃないので餅を食べてる感覚に等しいと断言しているが。

「それにしてもさー、スクナミコって可愛いわっ!!」

 結愛が他人を可愛いというのは珍しいことだ。
 普段は自分自身が一番可愛いと自負してなら無いのを、他の存在をも可愛いと認めるというのは。

「ふふっ、そうであろう? 余はな、前世では徳を積みまくって死後に女神リリハの手によって身長を犠牲に可愛さを手に入れたのだ。」

「ねぇ~、ミコちゃんは大きくなれば相当可愛いと思えるんだけど気のせいかなぁ?」

 天音の言うことには全員が疑問に思っていることだと思う。
 なぜなら、仮に見た目だけで判断するなら性別以前に背丈が人間レベルになれば、下手をすると女性ですら魅了しかねないほどの可愛さの持ち主だ。
 恐ろしいものだ。

「ふむ、スクナミコ。 大きくなりたいとは思わないのか? 小さいと、その……何かと不便かと思ってな。」

 冥綾もこれを言うのはさすがにどうかと躊躇ったが恐る恐る質問を投げつけてみた。

「余もたまに思うことはある。 しかしだな、この小ささだから生かせる人助けもあるから、このままでも構わぬと思っているぞ? まあ、大きくしてくれるなら一度はなってみたいものだが。」

 冥綾は少しだけホッとした。
 ここで大きくなりたいと言う願望を持っていなかったらデコピンの1つでも食らわしてやりたかったのだろう。
 欲があると言うことは少なからずとも生きるものにとっては当たり前、それを自覚させたかったのだろう。
 何にせよ、スクナミコが結愛や天音などにもきちんと受け入れてもらえて安堵した冥綾である。
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