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序章【ヒラメキから始まるお話】

天空から舞い降りた一通の手紙

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 今日は私がいうのも何だがよく笑ったような……、いや微笑んだという方が正しいんじゃないかと思う。
 普段私は基本冷酷な性格な為かこんな風に表情筋をひん曲げてまで笑ったりするような性格は持ち合わせているはずもないのだ。



 ……だからだろうか、なぜだか結愛と楽しく笑いあってお話ししていると心が暖かいと感じられてしまう。



 笑うことは良いことなのは私だってバカじゃない、それくらいの事は知っている。
 だが悲しいかな、知っていてなお笑い顔というのが苦手なのは今も昔も変わらない。
 能天気にバカらしく笑うのが気にくわないしイラッとする、そう思う私は素直になれない天の邪鬼なのだろう、いや……そうでありたいのだ。

 心に残った最後の一欠片の良心まで無駄に高いプライドで覆ってまで私は冷酷な悪魔を演じたくない……。

 メタい話だが数話前にも私は言っただろう?

 たとえ冷酷さが強かったとしても私は他の感情も持ち合わせいるんだ。
 笑顔という明るさを肯定したいのに……それなのに自分は死の概念を管理する神様と自覚してなら無い為か真っ暗な深淵の底で死者の魂を管理しなくちゃならない。

 死んだ人間の魂を笑って管理できるものか。
 笑ってできるとするならよっぽどの狂人だろうよ……。

 そういう点では私も【心が死んでる】に等しいんだ。
 暗くて寂しくて、寒くて辛くて……、ただ笑うことも自分が認めさせてくれなくて。

 だから他の感情を司る私同士といると笑顔が、暖かい涙が溢れて……。



 あれ、オカシイ……な。



 頬に暖かな水が流れ落ちる感覚が目頭が熱くし目が開けられない。
 暖かくて不思議な感情が脳を支配しようと危険を察知したのか、プライドの高い悪意に満ちた私がそそのかしてくる。

「こんな暖かな感情など認めてたまるものかッ。」

 私はたまらず布団に飛び込んでは頭……もとい顔を枕に埋めては声になら無い慟哭の悲鳴をあげる。
 涙が溢れて枕をどんどん濡らしてゆく。

 なぜ私はこうも認めたくはないのかというと魂を管理する仕事上、理不尽に死んでいった人間の魂が同情して欲しくて訴えてくることがあるからだ。
 でも死んだら人間はそこで終わりだ、私は魂に現実と鋭い言葉を浴びせては、なかなか閻魔の裁判所へ行こうとしない輩を鎌で斬りつけおとなしくさせ無くてはならない。
 仕事のためだ、そう割りきるしかない。

「やめろ、やめてくれ……私が私でなくなりそうだ。」

 まだ夜の22時ちょっと前、私が寝るには早すぎる時間だというのにもう今は何も見たくもないし感じたくもない、パソコンの電源を落とそうと近寄ったときだ。
 目安箱に手紙が入っているのだろうか、なんと反応しているではないか。

 手紙はごく稀にしか来ないがタイミングがタイミングだ、今は心がモヤモヤとしかしない……しないのだが読めば気晴らし程度にはなるんじゃないかと手を伸ばす。

「……気晴らしに読んでみようかな。」

 見たい気持ちも失せているのに一度反応した目安箱を見たとたん気になって気になって仕方がなくなってきた。
 箱を開けてみると桜の花びらとシャボン玉の絵柄が描かれた手紙が封入されていたではないか。

 たかが手紙の一通だというのにまた心が暖かく感じてきてしまう。
 もうこりごりなのに……封筒を開けては手紙に目を通して。

 その直後だ、私は壊れてしまったのだろう。
 何が起きたのかさっぱりわからなくなっていたのだ。















 溢れる涙と声が止まらない。
 この気持ちは本当になんなのだ、……理解できない。

「うっ……ひぐっ、っ……。」

 知らず知らずのうちに私はまた泣いているじゃないか。
 こんなのガラじゃないのに止まらぬ涙は一欠片の良心が手紙の主に感謝をしたいからなのだろうか。

 否、そうだと確信している私はやはり安堵と共に胸を撫で下ろしたい気持ちでいっぱいいっぱいだ。



【楽しそうな計画ですね、応援してます!!】



 この計画に初めて付いたコメントと呼ばれる暖かな心の言葉、そしてそれを繋ぐブックマークと呼ばれる【こちら側】の世界へのショートカットの鍵の作成。

 ポロポロと滴る涙は手紙を濡らし視界を歪め、私は目を開けることも叶わない。
 なにも見えなくてもこんなにも暖かな思いがじんわりと伝わって私はとても久々に幸せだと感じることができた。



 そっとしておいてほしかったのになぁ……なんて一匹狼を演じようにもそうは行かない。
 私は【こちら側】にも行き来きできる存在だから、とある家に居候をしている身なのだ。
 そりゃ泣き声なんて聞かされたら家主は飛んででも駆けつけてくれるだろうな。

「冥綾……大丈夫?」

 背中をさすられ、なだめさせてくれるのは私の主だ。
 よき私たちの理解者とも言えるだろうか。

「大丈夫……じゃない、だろう……お前の目は節穴か。」

 全身が暖かくてまどろみが止まらない。
 あぁ……幸せとはこう言うものなのか。
 久々過ぎて忘れるところだったわ……。

 でも、思い出せるだけまだ私の心には暖かいものを感じて泣ける良心があったのだなぁ。

 でも眠くて敵わないな……、最近徹夜だったし寝ても良いよね。
 おやすみなさい。
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