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七曜神の独尊な愛+火曜【87話~126話【~140話】

守護と七曜!!

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   ――その手の先とは……。

   棚に手を伸ばした智美は引き出しの扉を開けては、八色の生地で作られた御守りをひとつ取り出して持ってくる。
   他にも黄色や藍色、赤に青に緑、そして橙色に紫……そして、桃色の単色の御守りが見えるが智美はその全ての生地が少しずつ使われている八色の御守りを大切そうに両手で手渡してくれた。

 「こ、これは……御守り?」

 「まぁ……腐ってもここは神社。 年中参拝客は来なくても御守りくらいはあるものさ。」

   全く売れないその御守りは買い手が現れるまで大切そうに棚の中で静かに待っているようだ。
   でも気になる事がひとつある。

 「この御守りだけ八色全ての生地が使われてるね? ひとつしか無かったみたいだけど。」

 「この御守りだけ……作るのに成功したのさ。」

   智美は引き出しの扉を再び開けては、赤と青の御守りを持ってきては二つ重ね合わせるも、磁石のように反発しては触れることはおろかお互いに拮抗してしまう。

 「赤は火曜で力の源、青は水曜で忍耐の源であり意味合いとしては属性は反発しあうの。 日は金と愛称が悪く、木は土と……、そして月は七、つまり桃色の御守りの事。 しかしこれだけは全てが隣り合っても反発しない御守りというのは均衡のとれた唯一の証し。」

   八色の御守りは、全ての効果を司り持ち主に力を与えてくれる物。
   そんな大切なものをくれるというのだ。

 「そんな大切なものをくれるのか?」

   オーパーツにも等しいような矛盾した御守りをくれるというのだが、何せこの世界にすらひとつしか作れなかった偶然の産物とも言える御守りなのだから、手にするにはためらう。
   でも智美は翠の髪を優しく撫でてくれた。

 「私は翠の大切なものを貰ったから……良いのよ。」

   翠のファーストキスと童貞を捧げたのは紛れもなく智美。
   世界にひとつしか無いのであれば、翠の初めてもひとつしか無いのだから、お互い様なのだとか。

 「釣り合う価値な物かな……あれって。 まぁいいか。」

   翠は智美から御守りを受け取ると大切そうにポケットにしまい、一礼をする。

 「十万円ね。」

 「え? 金取るの?」

   智美は笑いながら右手を伸ばし金銭を要求するも翠はジョークだとリアクションを取った。
   こうして、ここの世界の手土産はなにかひとつ残すことは出来たみたいだ。
   手の中の御守りはとても温かくて思いと想いが詰まっているようで、翠は瞳を閉じて握りしめた。



















   ――本当の最後を……。

   握りしめたものもあれば抱きしめられたものもあり、智美は別れを惜しむように瞳を閉じては翠をギュッと抱きしめてくれた。
   暖かな温もりは母親に抱かれるような心地よさと温かさ……そしていとおしさ。
   蕩けるような微睡みに翠は身を委ねながら、意識を失ってゆくのである。
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