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11.助けてもらったのに

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「なんとかなりそうで、良かったな」

「はい。これも、ベレトさんのおかげです。ありがとうございます」

 ベレトさんに連れられて、ライブ会場の入口があったお店を出たところで、ホッと息を吐いた。

 外はもう、すっかり暗くなっていた。

 朝から目まぐるしく色々とあった。

 ベレトさんに出会えていなかったら、まだこの辺を途方に暮れながら尋ね歩いていたと思う。

「じゃあ、とりあえず今日は家に泊まるといい。部屋だけは無駄にたくさんあるから」

「本当に、何から何まで、ありがとうございます。親切にしていただいても、私が返せるものがないのが心苦しくて」

「気にしなくていいから。俺んとこの領地で起きてる問題なら、俺が関わって当然なんだ」

 そう言えば、当たり前のように話していたけど、目の前の方は伯爵家の御令息なのだ。

 本来なら、目の前に立つことすら不敬になる方だ。

「私のような者の為に、ありがとうございます」

 深々と頭を下げて敬意を表すことしかできない。

「いや、だから、何でいきなり頭を下げるんだ。いいって。ほら、家に行こう」

 立ち止まったままでいたので、ベレトさんに促されて、町の中心から少し離れたところにあった、伯爵邸に向かって歩き出した。

 暗い道は、ベレトさんが魔法で灯した光で照らされているから歩きやすい。

 魔法って便利だなぁって、思っていると、人通りが完全に途絶えた路上で、三人の男の人達が立っていた。

 薄暗い中でも、灯りで照らされたその人達の顔を見て誰なのかはすぐに分かった。

 ベレトさんが僅かに警戒した様子を見せたのに、

「こちらの方達は、姉が所属しているギルドの人達です。どうしてここに?もしかして、姉の事で、何か分かったことはあったのでしょうか?」

 親しくはないので話した事はなかったけど、悪意を向けられたこともなかったので、すっかり油断していた。

 槍を持った男性が、何の気負いもなく構えたかと思ったら、

「ライラ!!」

 目の前で、生暖かいものが飛び散った。

 それが血飛沫だと気付くのは、少し遅れてのことだ。

 私の目の前に立ち塞がっているベレトさんの脇腹を、槍が貫き、そして引き抜かれていた。

「いきなりかよ……」

 呻くような声がきこえると、突然の熱風が吹き、壁のような火柱が出現していた。

 それが、私達と、彼らを隔てている。

 炎の壁を呆然とみつめていると、ふわりと体が浮いたかと思えば、ベレトさんに小脇に抱えられて、風のような速さで、その場から消え去っていた。
 
 実際に、風に乗るように屋根を移動していた。

 一連の全ての出来事の中で、混乱しきった私は何一つ行動する事が出来ないでいた。

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