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10.ライラは感動していた
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「ベレトさん。凄かったです。わたし、とっても感動しました。アイドルって凄いんですね」
ライラは、両の拳を胸の前で握りしめて、前のめりになって言った。
ライブを見終わってから、随分と興奮した様子で、キラキラした目をさらにキラキラさせて、頬は上気している。
確かに俺も感動して、うっかり涙した。
リルルちゃんの成長が嬉しくて泣いた。
全俺が泣いた。
そんな俺の気持ちを共有してくれる女の子がいるってのもいいな。
出会った時といい、ライラはなんでも好意的に受け止めてくれるから、なんか嬉しくなる。
「あんなに、たくさんの人がいたのに、みんなが一つになって、一人の女性を支えて、応援することができるだなんて、世界が変わった気がしました!」
嬉しいのだが、世界が変わるとかちょっと大袈裟な気もするが、言われてみれば、俺も初めて推しのアイドルに出会った時は世界が変わっていたか?
「お、おう、楽しめたのならよかったよ。じゃあ、当初の目的に行くか」
「はい。すいません。私のためにここに連れて来てきてくれたのに、一人ではしゃいでしまって……」
「思い詰めるのも良くないから、気分転換になったのなら良かったよ」
話しながらライラを連れて、バックヤードの方へ行くと、目当ての男はすぐに見つかった。
「ケイン・ウッド」
目当ての男に声をかけた。
30半ばの、ギョロギョロとした目は獲物を漁るようで、金のためなら、後ろ暗いことも平気でやってきた奴だけど、わりと改心した今は、リルルちゃんを応援する愛は本物だ。
「うぉ、ベレトの旦那。新しいグッズの開発ですか?前のやつも、随分と儲けが出ましたよ。おかげで、リルルちゃのステージ衣装のグレードが上がりました」
「うむ。あれは素晴らしかった。だが、今日はそっちじゃなくて、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「別に何も、今は汚いことには手を出していやせんぜ」
「それも違う。この子の姉を探しているのだが、何か探す方法を知らないか?」
続きをライラに促す。
「姉は、Aランクの冒険者で、魔の森の調査を依頼されて、忽然と姿を消しました。でも、魔の森の周辺では今のところ目撃情報がなくて……」
ケインは、全く考えることもせずにそれを提案してきた。
「ちょいと、冒険者証を追跡してみやしょうか?」
その申し出は、もちろん、違法の方法でだが。
公的には認められていない。
その設備を導入するのは、監視されているようだと、冒険者側が反対したからだ。
だから、それがこの男なら出来るだろうと期待して声をかけたんだ。
「ああ、頼む」
「明日、旦那の屋敷に行きやすんで、その時に報告します」
「よろしくお願いします」
ライラが丁寧に頭を下げる。
そして上げた顔は、ようやく安堵しているようにも見えていた。
ライラは、両の拳を胸の前で握りしめて、前のめりになって言った。
ライブを見終わってから、随分と興奮した様子で、キラキラした目をさらにキラキラさせて、頬は上気している。
確かに俺も感動して、うっかり涙した。
リルルちゃんの成長が嬉しくて泣いた。
全俺が泣いた。
そんな俺の気持ちを共有してくれる女の子がいるってのもいいな。
出会った時といい、ライラはなんでも好意的に受け止めてくれるから、なんか嬉しくなる。
「あんなに、たくさんの人がいたのに、みんなが一つになって、一人の女性を支えて、応援することができるだなんて、世界が変わった気がしました!」
嬉しいのだが、世界が変わるとかちょっと大袈裟な気もするが、言われてみれば、俺も初めて推しのアイドルに出会った時は世界が変わっていたか?
「お、おう、楽しめたのならよかったよ。じゃあ、当初の目的に行くか」
「はい。すいません。私のためにここに連れて来てきてくれたのに、一人ではしゃいでしまって……」
「思い詰めるのも良くないから、気分転換になったのなら良かったよ」
話しながらライラを連れて、バックヤードの方へ行くと、目当ての男はすぐに見つかった。
「ケイン・ウッド」
目当ての男に声をかけた。
30半ばの、ギョロギョロとした目は獲物を漁るようで、金のためなら、後ろ暗いことも平気でやってきた奴だけど、わりと改心した今は、リルルちゃんを応援する愛は本物だ。
「うぉ、ベレトの旦那。新しいグッズの開発ですか?前のやつも、随分と儲けが出ましたよ。おかげで、リルルちゃのステージ衣装のグレードが上がりました」
「うむ。あれは素晴らしかった。だが、今日はそっちじゃなくて、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「別に何も、今は汚いことには手を出していやせんぜ」
「それも違う。この子の姉を探しているのだが、何か探す方法を知らないか?」
続きをライラに促す。
「姉は、Aランクの冒険者で、魔の森の調査を依頼されて、忽然と姿を消しました。でも、魔の森の周辺では今のところ目撃情報がなくて……」
ケインは、全く考えることもせずにそれを提案してきた。
「ちょいと、冒険者証を追跡してみやしょうか?」
その申し出は、もちろん、違法の方法でだが。
公的には認められていない。
その設備を導入するのは、監視されているようだと、冒険者側が反対したからだ。
だから、それがこの男なら出来るだろうと期待して声をかけたんだ。
「ああ、頼む」
「明日、旦那の屋敷に行きやすんで、その時に報告します」
「よろしくお願いします」
ライラが丁寧に頭を下げる。
そして上げた顔は、ようやく安堵しているようにも見えていた。
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