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3.ライラ
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目が覚めて、真っ先に確認しにいった先は、姉のベッドだった。
やっぱり帰ってない。
冒険者ギルドから受けた依頼を調査するために出かけていったっきり、何日も帰ってこない。
もう2週間は経つ。
連絡もなく、こんなに不在になることは初めてだった。
姉、レクシーとは、血が繋がっているわけではない。
彼女は、獣人で子供であった私が、奴隷として売りに出されていた時に助けてくれた、冒険者だ。
この世界の、特に、ここ、フロンティア公国での獣人の扱いは、酷いものだった。
獣人は亜人、つまり、人ではない。
だから、生まれた直後から人権なんて認めてもらえない。
そんな私を姉妹のように、大切に育ててくれたレクシー。
彼女のことが心配で、何か連絡はないかと、冒険者ギルドに向かうことにした。
町中に出るのは緊張する。
獣の証である耳を隠すために、外套のフードを深くかぶって、足早にギルドに向かう途中、ドンと人に押されて尻餅をついていた。
嘲るような笑い声が通り過ぎていく。
手を貸してくれる人は誰もいない。
フードをかぶり直して、土を払って歩き出した。
ここでは、この大陸では、獣人の扱いはどこも同じだ。
この大陸にしか獣人は生まれてこないけど、亜人として、人ではない存在として、ずっと差別されている。
手の甲に洗礼印があるおかげで、お店の利用が普通にできて、最低限の普通の生活が送られているというだけで、これすらもなければ、獣や魔物と同じ生活を送らなければならない。
でも、この洗礼印も、聖教会に多額の寄付をしないと貰えない。
獣人は洗礼印がないと、人として認めてもらえない。
フロンティア公国に本部がある、聖教会の力は強い。
聖教会が白と言えば白で、黒と言えば黒だ。
獣人は、罪を犯したから半獣として生まれてきたのだと、聖書に記されている。
だから、罰を与えられるのが当然で、過酷な労働を強いられる。
人並みの生活を送れるのは、洗礼印を持つ者だけ。
それをしてくれたのも、お金を惜しみなく出してくれたのもレクシーだった。
『いやー、私も親がいなかったからさ、貴女の親になれる自信はないけど、姉にならなれるかな。よろしくね』
その時にそう言ってくれたことを、今でもしっかりと覚えている。
ギルドへ向かう足を速める。
その建物の中に入ると、反応は様々だった。
蔑むような視線を向けてくる人。
無関心を貫く人。
心配そうな視線を向けてくれる人。
その中で、私の話を聞いてくれる人を見つけて、その人に声をかけていた。
「ランドルフさん、レクシーの事を何か知りませんか?」
ランドルフさんは、ベテランの剣士だ。
レクシーや私の事も知っていて、時には世話をやいてくれることもある。
「俺達も情報を集めている最中だ。レクシーの奴は海の向こうの大陸、魔の森の調査に行ったっきりなんだ」
「魔の森……」
魔族達が住むとされる、魔王の根城だ。
やはり、そこで何かあったのか……
もしかしたら、魔物や魔族に襲われて……
「私……そこに行ってみます」
行けば何か分かるかもと、この時の私は心配のあまり、それだけしか考えることができなかった。
やっぱり帰ってない。
冒険者ギルドから受けた依頼を調査するために出かけていったっきり、何日も帰ってこない。
もう2週間は経つ。
連絡もなく、こんなに不在になることは初めてだった。
姉、レクシーとは、血が繋がっているわけではない。
彼女は、獣人で子供であった私が、奴隷として売りに出されていた時に助けてくれた、冒険者だ。
この世界の、特に、ここ、フロンティア公国での獣人の扱いは、酷いものだった。
獣人は亜人、つまり、人ではない。
だから、生まれた直後から人権なんて認めてもらえない。
そんな私を姉妹のように、大切に育ててくれたレクシー。
彼女のことが心配で、何か連絡はないかと、冒険者ギルドに向かうことにした。
町中に出るのは緊張する。
獣の証である耳を隠すために、外套のフードを深くかぶって、足早にギルドに向かう途中、ドンと人に押されて尻餅をついていた。
嘲るような笑い声が通り過ぎていく。
手を貸してくれる人は誰もいない。
フードをかぶり直して、土を払って歩き出した。
ここでは、この大陸では、獣人の扱いはどこも同じだ。
この大陸にしか獣人は生まれてこないけど、亜人として、人ではない存在として、ずっと差別されている。
手の甲に洗礼印があるおかげで、お店の利用が普通にできて、最低限の普通の生活が送られているというだけで、これすらもなければ、獣や魔物と同じ生活を送らなければならない。
でも、この洗礼印も、聖教会に多額の寄付をしないと貰えない。
獣人は洗礼印がないと、人として認めてもらえない。
フロンティア公国に本部がある、聖教会の力は強い。
聖教会が白と言えば白で、黒と言えば黒だ。
獣人は、罪を犯したから半獣として生まれてきたのだと、聖書に記されている。
だから、罰を与えられるのが当然で、過酷な労働を強いられる。
人並みの生活を送れるのは、洗礼印を持つ者だけ。
それをしてくれたのも、お金を惜しみなく出してくれたのもレクシーだった。
『いやー、私も親がいなかったからさ、貴女の親になれる自信はないけど、姉にならなれるかな。よろしくね』
その時にそう言ってくれたことを、今でもしっかりと覚えている。
ギルドへ向かう足を速める。
その建物の中に入ると、反応は様々だった。
蔑むような視線を向けてくる人。
無関心を貫く人。
心配そうな視線を向けてくれる人。
その中で、私の話を聞いてくれる人を見つけて、その人に声をかけていた。
「ランドルフさん、レクシーの事を何か知りませんか?」
ランドルフさんは、ベテランの剣士だ。
レクシーや私の事も知っていて、時には世話をやいてくれることもある。
「俺達も情報を集めている最中だ。レクシーの奴は海の向こうの大陸、魔の森の調査に行ったっきりなんだ」
「魔の森……」
魔族達が住むとされる、魔王の根城だ。
やはり、そこで何かあったのか……
もしかしたら、魔物や魔族に襲われて……
「私……そこに行ってみます」
行けば何か分かるかもと、この時の私は心配のあまり、それだけしか考えることができなかった。
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