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第一章
8.「Heros」
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六月の終わり、ぎんぎんぎらぎらの太陽が在る日であった。
その茹だるような長日、私は謎の生物の着ぐるみの中に居た。
暑く苦しく、そして何より立派な髷の付いた頭が重たい。
――何が起因して、私がこれほどまでの惨憺たる有様になっているのか。
そもそもを辿れば、彼女などと出会ってしまったからであるが、より具体的な要因は、月初のスタジオでのやり取りにまで遡る。
♪♪♪
六月第一週の生放送が終わった。
今週はバンドも音声データでの参加だったので、五〇五スタジオは適切な密度を保っていた。
私は少しの億劫を引きずっていたが、放送は特に滞りなく進んだ。
私が役目を終えたCD達を返して戻ると、ハルカとシイナが机を挟んで討議をしていた。
「公開放送するだけじゃ人は来ないでしょ」
苦悶の籠った声が聞こえた。
私はその議題が、前にハルカが言っていた「イベント」についてだと理解した。
「でも、去年は結構来てたんじゃないかしら」
シイナが言った。
「それは、フルタだからでしょ。こんなちっぽけな駆け出しパーソナリティなんて……」
ハルカはため息をしながら前に倒れて伸びをした。
「このイベントって何なの?」
そう問いかけた私に、ハルカは「言ってなかったっけ」と言い、冊子を一部渡した。
「局の開設日に合わせて、毎年六月の最終週に広場貸し切って催しするの」
粗雑な彼女に代わり、シイナが補足して言った。
「昔はもっと規模も大きくて、予算も沢山貰えたんだけどね」
「だからこそ、ラジオに興味ない人をその場で獲得するチャンスよ!」
ハルカが拳を握って立ち上がった。
「……で、何するの」
「それを今決めてるのよ」
それから、ふにゃっと崩れるようにして席に着いた。
沈黙が続いた。
私は冊子の頁を捲って音を起こし、それをスタジオ内の機械の排熱音に混ぜていた。
「フクチは何かないの?」
ハルカが振り返って言った。
「何かって……先週みたいにマナカ達呼んで演奏してもらえば」
「そんな馬鹿の一つ覚えみたいなことはしない」
彼女はまた大きくため息をして、私は芽生えた苛立ちを必死に押し殺した。
それから私は、投げ出すように持っていた昨年度のイベントのパンフレットを閉じた。
その表紙の右上にはどこかで見た殿様の生首が可愛らしくデフォルメされて描かれていた。
「前から気になってたんだけど、コイツって何なの?」
私はソレを指差してハルカに尋ねた。
この一言は、私の十余年の人生においても、類を見ないほど重大な失言であった。
「我が局が誇る大人気キャラクターの“若殿ラジオくん”でしょ!知らないの!?」
彼女は驚いた顔をしたが、きっとコイツにそんな知名度はない。
「いやコイツ、前、廊下に生首で放置されてたけど」
私が尋ねると、ハルカは「お疲れだったんでしょ」とテキトーなふわふわした返しを寄越した。
「殿ラジくんって、見た目は可愛いのにイマイチ人気ないのよね」
シイナも、権威のカケラもない省略をして殿様を呼んでいた。
「そういえば、今年は殿ラジくん、午後は誰も使わないって言ってたわね」
それを聞いて、ハルカは目を光らせた。
「じゃあ使おうか」
「どうやって?」
シイナの問いに、ハルカは「うぅん」と唸って、
「普通に私が話してる横で、殿ラジ君がハガキ渡してアシスタントしてるだけでも面白いでしょ。シュールで」
と言うと、横でシイナがフフッと笑った。
すると、その計画が既定路線であるかのように話が進みだした。
私は、サイアクなことになりそうな予感を受け取っていた。
「それ、中身は誰がやるの?」
私がボソッと言うと、ハルカとシイナは揃って私の方を向いた。
「……嘘でしょ?」
この二人に対する猜疑心が、ジャガイモの如く育っているのを感じた。
♪♪♪
そんな道筋を辿って、私はこんな苦行を強いられている。
適当に生き永らえていると、知らぬ間に巨大な不条理がテーブルに回ってくるのだ。
昼過ぎの会場は、家族連れを中心にそれなりの人が群れていた。
私は、スタッフ用のパイプテントの中でじっと座り、ハルカの出番が来るのを待っていた。
「あれ、フクチ?」
私は両手で、かぽっと頭を外し、「はい」と答えた。
「似合ってるじゃん」
彼女は半笑いで言ったから、「それはどうも」と睨んで返した。
彼女は横のパイプ椅子に勢いよく座り、シワシワになった台本を丹念に読み始めた。
メインステージでは大道芸か何かが行われており、歓声も上がっていたから、何をするわけでもない私まで肩に力が入ってしまった。
「ハルカさん、西ステージ準備お願いします!」
折り畳み机の上に置かれた時計が、十三時前を指す。
ハルカはバチン、と両の掌で自分の顔を叩いた。
「行くぞ、殿ラジ!」
私は返事の代わりに、少し馴染んできた生首を再びはめた。
ハルカと私はステージの袖に移動した。
会場には東西で二つのステージが設けられていたが、東ブースは空き時間のようだった。
それもあってか、西ステージ前には休日を楽しむ家族連れや出店に釣られた学生達が集まっていた。
その一方で、壇上にあるのはたった一組の机と椅子のみ。
横の彼女は、何度も深い呼吸をくり返していた。
その緊張がうつって、殿様の私まで武者震いをしていた。
「続いてのナビゲーターは『R-MIX』のハルカさんです!」
端にいる女性の司会者の声が響いた。
「こんにちは!」
そう言ってハルカが飛び出した。その後を追うように殿ラジも進む。
「改めましてこんにちは! ハルカです」
彼女が観客に向かって一礼し、まちまちの拍手を受けると、その持ち場に座った。
「今日はお時間を頂いて、『十分ロックトラベル』という企画をやりたいと思います!」
ハルカが話し始めると、街路樹を揺らしていた風が凪いだ。
「あまりロックを聴かないという皆さんでも、どこかで聞いたことがある名曲と、興味が湧くようなエピソードを十分間でどんどん紹介したいと思います!」
その時、彼女は自らのバイオリズムを整えるように一息ついた。
「それじゃあ、殿ラジ君用意はいい?」
私が頷こうと試みると、不安定な頭部が外れそうになったので、右手を挙げて応答する。
「皆さんも一緒にカウントお願いします! 行きます! 三・二・一 スタート!」
その言葉を合図にして、私は目前に置かれた大型のデジタル時計のボタンを押した。
場内の音響機材から、流行りの若手バンドの代表曲が流れてきた。
「様々なタイアップで幅広い世代に大人気の彼らですが、高校時代にボーカルのMさんがたまたまクラスで隣の席だったメンバーを誘って結成されたそうです!」
曲に聴きなじみがあったからか、たい焼きを頬張っていた男子学徒が舞台上に目線を向けた。
「そんな彼らが高校時代に軽音楽部でコピーをしていたのが、このバンドです!」
私が時計の横のボタン、の置物を押す。何の機能もなければ、電源にさえ繋げていない。
すると、本物の音響スタッフの手により、何年か前に流行った同系統のバンドの曲が流れる。
「バンド名を略称で呼ばれることが多い彼らですが、メンバーの一人はバンド名の正式名称をしばらく知らされないでいたそうです! では、さらに遡って、アジアの端の彼らが影響を受けたバンドが、オアシスというイギリスのバンドです」
オアシスの『Don’t Look Back in Anger』が流れると今度は家族連れの親が、音に合わせて体を揺らし始めた。
彼女は芋ずる式にミュージシャン達を紐づけ、弾丸のスピードでロックの歴史を遡った。
「ではさらに、さらに、オアシスの源泉は何なのか。その一つはみなさんご存じビートルズです!」
あたかも落語家のような饒舌な語りは、少しずつ観客を引き込んでいった。
最前列で笑顔を作っていた老人の顔の口が引き締まり、たい焼きの彼は遂にその手が止まった。
「そんなビートルズに『君たちの歌には主張がない』と初対面で批判したのがボブ・ディランです」
今度は『Blowin’ In The Wind』が流れる。
「ただ、それをきっかけにビートルズの詞は社会や政治にも向き、ディランもロックの影響を受けエレキギターを持つようになりました!そして、そのボブ・ディランと親交が深かったのがギターの神様ジミ・ヘンドリクスです」
タイマーは「残り二分」を指した。
その一瞬だった。客席のど真ん中に陣取る子供が突然大声を上げて泣き出した。
その子の母親は狼狽し、どうにかしてあやそうと努めていたが泣き止む気配はなかった。
「あ、えっと……お母さん大丈夫ですよ! その、赤ちゃんは泣くのが仕事ですから!」
ハルカは語りを止めて言った。
会場スタッフも慌てて誘導をしたが、その赤子もかなり勤勉だったようで暫くの間泣き声を轟かせていた。
会場はざわつき、それを機に席を離れる客も疎らにいた。
「えと……ジミは……」
ハルカは少し間を空けてから語りを再開したが、アクシデントに意識を奪われたのかブレーキがかかり、どもってしまった。
その時、ブーというブザーが鳴り、押し黙った空間に虚しく響いた。
「……はい! 十分経過です。お疲れさまでした!」
司会の女性が、嚥下するに堪えないほどの気持ち悪い閑静を遮るように言った。
舞台上の彼女はそれに応えて立ち上がったが、きっと強張った笑顔をしていただろう。
「それでは、改めてハルカさんでした! ありがとうございました!」
彼女は深く重たい礼をした。
しかし、会場に残った観客たちは、ぽつぽつと温かい拍手を彼女に送った。
その賞賛が鳴りやむ頃、私の狭い視界から彼女が掃けていった。
「殿ラジ君もありがとうございました!」
私は、ハッとした。現在の自身の見てくれが素っ頓狂な殿様であることを失念していたからだ。
私は頭部に気を配りながら一礼し、大急ぎで客席の最前列前を駆けて客前から掃けた。
途中、元気が過ぎる子ども達に腹を小突かれた。蒸し風呂を着こなしながら、悪童に構うほどの余裕を持ち合わせていなかったので、彼女を追うようにテントへ向かった。
天竺よりも悠遠に感じられた白いテントに着くと、私はすぐさま簡易型サウナの生首を外した。
ほとんどのスタッフは会場の方に出払っている。隅の方でハルカが一人、パイプ椅子に座っていた。
彼女の視線は、すぐ下の机の木目にあり、心と頭が留守になったようだった。
このテントの空間だけが綺麗に切り取られて、すぐ傍で観客が弾んだ声を上げている中でも、確かな沈黙が生まれていた。
「どうすればよかったんだろう」
ハルカがボソッと言った。
私は、適当な返しも自分の汗を拭うタオルも見つけられないでいた。
「二人ともお疲れ」
この空間に楔を打ち込むように、背後から聞きなじみのある声がした。
顔を向けた方にいたのは、ペットボトルの水を二本持ったシイナだった。
「お疲れ様です」
私が言うのと同時に、ハルカも「おつかれ」と言った。
シイナは「ほら」と言って、ハルカと私にペットボトルを渡してきた。
「良かったじゃない。お客さんも満足してたでしょ」
ハルカは少しだけ潤んだ目で、「いや」と小さく否定した。
「上等よ」
そう言いながらシイナはハルカの頭を抱き寄せて、ワシワシと撫でた。
その姿は母と娘のようにも見えた。
「殿ラジ君も良かったわよ。大人気だったじゃない」
「子供に殴られていただけですけど」
「せっかくの晴れ舞台だし、写真撮りましょ!」
「いや、僕まだ着ぐるみの体脱いでいないので……」
「じゃあいっそ全部着たら?」
ついさっきまで灰心喪気になっていたハルカが、生気を取り戻して悪乗りをしてきた。
滅入って腫れ物のようになっていられるのも困るが、これはこれで癪なのでもう暫く燃え尽きていてほしいと思った。
「ふふ。殿納めね」
シイナまで訳の分からない言葉を使い出した。このラジオ局はもう駄目かもしれない。
彼女は若いスタッフを捕まえて写真を撮らせた後、無線機で音を聞いていた。
「シイナさんはまだ仕事あるんですか?」
私が聞くと、彼女は弱いため息を吐いた。
「今日は終日よ。貴方達はどうするの?」
「あ、私ご飯食べてない」
すっかり回復をしたハルカが言った。
「フクチ、行くよ」
そう言い切る前に、彼女の体は屋台の通りの方に向かっていた。
通りは二つの会場を繋ぐように引かれ、色褪せた暖簾が並んでいた。
「あれ、あんたさっきステージにいた子だろ?」
屋台を出す的屋の店主たちが、私達を呼び止めた。
「え、そうです!」
「お疲れ様。これ持ってきな!」
こんな具合で、屋台の通りを闊歩した彼女の両手は、派手な色の食べ物で埋まっていった。
「あんちゃんもあの化け物の着ぐるみやったんだろ? 持ってきな」
聞きたいことだらけだったが、私は善人なので好意だけを聢と受け取った。
通りを抜けると東側会場の最後列側に出た。
私達が出演した西側ステージに比べ、東側の会場は一回り小さい。深夜や朝方の番組を担当するベテラン達が自慢の饒舌を揮っているようだった。
私はなんとなく陽炎で揺れるステージを見た。
その時、何度も聞いた記憶のある声が私の体を包むように聞こえた。
――フルタの声だ。
プログラムにその名前はなかった。ステージ上の姿もぼやけていたが、その耳触りの良い声と鷹揚な話し方は、確かに『R-MIX』の主のものに違いなかった。
ハルカもフルタに気づいたようで、少しだけ疎ましそうな顔をした。
彼女はそのまま何も言わず、テラス机に食糧を並べ出した。私もそこの椅子に腰かけた。
フルタはRAR-FMの開局からの歴史を、時代の音楽と遡っているようで、奇しくもハルカと同じ形式のコーナーをしていた。
しかし、ハルカの語りが、広場のノイズや空を浮かぶ雲を蹴散らし一つ空間を支配するものだとすれば、フルタのそれは対極にあった。風で揺れる木々の騒めきや人の起こす些細な音と完全に調和する、そんな語りだった。
「フルタさん、ありがとうございました! 皆さん、大きな拍手をお願いします!」
司会の男性の声が聞こえて、拍手が起きた。
私はその声で、やっとフルタの世界から脱した。
体の向きをステージから戻すと、机上はあたかもジャンクフードの満漢全席のようになり、ハルカが一つずつ手に取っていた。
私もそのおこぼれを掴み、二人とも暫く無言で貪っていた。
すると、ステージの方からフルタとは違う、男の声が鼓膜に触れた。
遠目でも分かるほど立派過ぎるヒゲを蓄えた顔に馴染みはなかったが、陽気な声とアメリカンな話し方には既視感を覚えた。
「……なんかこの声聞き覚えあるな」
「聞き覚えも何も、私達の前の番組やってるトニーさんじゃない」
イカ焼きを手にしながらハルカが答えた。
「あれが? トニーさんって本当にハーフだったんだ」
「陽気なおじさんよ。ちょっとネジ五、六本足りてないけど」
「やっぱり、ラジオパーソナリティはみんな癖があるんだ」
ガンを飛ばしながら「どういう意味?」と言うハルカを横目に私はベビーカステラを口に運んだ。
「でも、声と話し方だけでも、何となく人相は一致するでしょ」
「……確かに」
「きっとみんな誰かのヒーローなんだよ。その日、一日のね」
悟ったように言う彼女は、ケミカルな青色の炭酸飲料を飲んでいた。
「さっきの話だけどさ」
「貴方が子供にタコ殴りにされていた話?」
「いや、声と人相の話」
「着ぐるみ越しなら痛くないの?」
今日のハルカと会話は難しそうなので、一方的に話を続けた。
「フルタさんだけは、ラジオと実物で全然印象違ったんだよな。あと痛かった」
「……あの人はあんな感じだよ。昔から」
その言葉が引き金になって、シイナといつかにした会話がフラッシュバックした。
それは、ハルカとフルタの関係のこと。
私は先程まで憑依していた殿様から勇を借りて鼓し、ハルカに尋ねることにした。
「そういえば聞きたかったことがあったんだ」
そう言いかけたとき、ハルカのすぐ後ろに二人の男が現れた。
片方はフルタ、その人だった。
その凄みを漂わせた男は、マイクの前にいた彼とは種類の異なる威圧感を放っていたから、私の背筋は冷凍パインのように冷えた。
「何?」
青ざめていたであろう私の顔を不審に思ったのかハルカは振り返り、視界に捉えたフルタを険しい顔で睨んだ。
フルタもその睨みを返していたが、ハルカをじっと見る老いた目は、以前スタジオで相対した時ほど獰猛ではなくて、憂いや影を孕んでいたようにも見えた。
それからフルタは、「お前は」と切り出した。
「お前のラジオってのは、ただ知識をひけらかすものなのか?」
騒がしいほどの空間でも、鋭利な言葉がそれを切り裂くように鮮明に聞こえた。
「教養っていうのは、自分の楽しむことができる領域を広げるためのものだ。遊びの道具だ。お前はあろうことかそれを人様に、リスナーに押し付けている。工夫の方向を百八十度間違えた、自分が気持ちよくなるためだけの口上、実に不愉快だ」
フルタはそう言ってくるっと背を向けた。
「だから子供も泣く」
それだけ残して、フルタと片割れの男はゆっくりと去って行った。
ハルカは歪んだ顔のまま、ただ口を結んでいた。
その茹だるような長日、私は謎の生物の着ぐるみの中に居た。
暑く苦しく、そして何より立派な髷の付いた頭が重たい。
――何が起因して、私がこれほどまでの惨憺たる有様になっているのか。
そもそもを辿れば、彼女などと出会ってしまったからであるが、より具体的な要因は、月初のスタジオでのやり取りにまで遡る。
♪♪♪
六月第一週の生放送が終わった。
今週はバンドも音声データでの参加だったので、五〇五スタジオは適切な密度を保っていた。
私は少しの億劫を引きずっていたが、放送は特に滞りなく進んだ。
私が役目を終えたCD達を返して戻ると、ハルカとシイナが机を挟んで討議をしていた。
「公開放送するだけじゃ人は来ないでしょ」
苦悶の籠った声が聞こえた。
私はその議題が、前にハルカが言っていた「イベント」についてだと理解した。
「でも、去年は結構来てたんじゃないかしら」
シイナが言った。
「それは、フルタだからでしょ。こんなちっぽけな駆け出しパーソナリティなんて……」
ハルカはため息をしながら前に倒れて伸びをした。
「このイベントって何なの?」
そう問いかけた私に、ハルカは「言ってなかったっけ」と言い、冊子を一部渡した。
「局の開設日に合わせて、毎年六月の最終週に広場貸し切って催しするの」
粗雑な彼女に代わり、シイナが補足して言った。
「昔はもっと規模も大きくて、予算も沢山貰えたんだけどね」
「だからこそ、ラジオに興味ない人をその場で獲得するチャンスよ!」
ハルカが拳を握って立ち上がった。
「……で、何するの」
「それを今決めてるのよ」
それから、ふにゃっと崩れるようにして席に着いた。
沈黙が続いた。
私は冊子の頁を捲って音を起こし、それをスタジオ内の機械の排熱音に混ぜていた。
「フクチは何かないの?」
ハルカが振り返って言った。
「何かって……先週みたいにマナカ達呼んで演奏してもらえば」
「そんな馬鹿の一つ覚えみたいなことはしない」
彼女はまた大きくため息をして、私は芽生えた苛立ちを必死に押し殺した。
それから私は、投げ出すように持っていた昨年度のイベントのパンフレットを閉じた。
その表紙の右上にはどこかで見た殿様の生首が可愛らしくデフォルメされて描かれていた。
「前から気になってたんだけど、コイツって何なの?」
私はソレを指差してハルカに尋ねた。
この一言は、私の十余年の人生においても、類を見ないほど重大な失言であった。
「我が局が誇る大人気キャラクターの“若殿ラジオくん”でしょ!知らないの!?」
彼女は驚いた顔をしたが、きっとコイツにそんな知名度はない。
「いやコイツ、前、廊下に生首で放置されてたけど」
私が尋ねると、ハルカは「お疲れだったんでしょ」とテキトーなふわふわした返しを寄越した。
「殿ラジくんって、見た目は可愛いのにイマイチ人気ないのよね」
シイナも、権威のカケラもない省略をして殿様を呼んでいた。
「そういえば、今年は殿ラジくん、午後は誰も使わないって言ってたわね」
それを聞いて、ハルカは目を光らせた。
「じゃあ使おうか」
「どうやって?」
シイナの問いに、ハルカは「うぅん」と唸って、
「普通に私が話してる横で、殿ラジ君がハガキ渡してアシスタントしてるだけでも面白いでしょ。シュールで」
と言うと、横でシイナがフフッと笑った。
すると、その計画が既定路線であるかのように話が進みだした。
私は、サイアクなことになりそうな予感を受け取っていた。
「それ、中身は誰がやるの?」
私がボソッと言うと、ハルカとシイナは揃って私の方を向いた。
「……嘘でしょ?」
この二人に対する猜疑心が、ジャガイモの如く育っているのを感じた。
♪♪♪
そんな道筋を辿って、私はこんな苦行を強いられている。
適当に生き永らえていると、知らぬ間に巨大な不条理がテーブルに回ってくるのだ。
昼過ぎの会場は、家族連れを中心にそれなりの人が群れていた。
私は、スタッフ用のパイプテントの中でじっと座り、ハルカの出番が来るのを待っていた。
「あれ、フクチ?」
私は両手で、かぽっと頭を外し、「はい」と答えた。
「似合ってるじゃん」
彼女は半笑いで言ったから、「それはどうも」と睨んで返した。
彼女は横のパイプ椅子に勢いよく座り、シワシワになった台本を丹念に読み始めた。
メインステージでは大道芸か何かが行われており、歓声も上がっていたから、何をするわけでもない私まで肩に力が入ってしまった。
「ハルカさん、西ステージ準備お願いします!」
折り畳み机の上に置かれた時計が、十三時前を指す。
ハルカはバチン、と両の掌で自分の顔を叩いた。
「行くぞ、殿ラジ!」
私は返事の代わりに、少し馴染んできた生首を再びはめた。
ハルカと私はステージの袖に移動した。
会場には東西で二つのステージが設けられていたが、東ブースは空き時間のようだった。
それもあってか、西ステージ前には休日を楽しむ家族連れや出店に釣られた学生達が集まっていた。
その一方で、壇上にあるのはたった一組の机と椅子のみ。
横の彼女は、何度も深い呼吸をくり返していた。
その緊張がうつって、殿様の私まで武者震いをしていた。
「続いてのナビゲーターは『R-MIX』のハルカさんです!」
端にいる女性の司会者の声が響いた。
「こんにちは!」
そう言ってハルカが飛び出した。その後を追うように殿ラジも進む。
「改めましてこんにちは! ハルカです」
彼女が観客に向かって一礼し、まちまちの拍手を受けると、その持ち場に座った。
「今日はお時間を頂いて、『十分ロックトラベル』という企画をやりたいと思います!」
ハルカが話し始めると、街路樹を揺らしていた風が凪いだ。
「あまりロックを聴かないという皆さんでも、どこかで聞いたことがある名曲と、興味が湧くようなエピソードを十分間でどんどん紹介したいと思います!」
その時、彼女は自らのバイオリズムを整えるように一息ついた。
「それじゃあ、殿ラジ君用意はいい?」
私が頷こうと試みると、不安定な頭部が外れそうになったので、右手を挙げて応答する。
「皆さんも一緒にカウントお願いします! 行きます! 三・二・一 スタート!」
その言葉を合図にして、私は目前に置かれた大型のデジタル時計のボタンを押した。
場内の音響機材から、流行りの若手バンドの代表曲が流れてきた。
「様々なタイアップで幅広い世代に大人気の彼らですが、高校時代にボーカルのMさんがたまたまクラスで隣の席だったメンバーを誘って結成されたそうです!」
曲に聴きなじみがあったからか、たい焼きを頬張っていた男子学徒が舞台上に目線を向けた。
「そんな彼らが高校時代に軽音楽部でコピーをしていたのが、このバンドです!」
私が時計の横のボタン、の置物を押す。何の機能もなければ、電源にさえ繋げていない。
すると、本物の音響スタッフの手により、何年か前に流行った同系統のバンドの曲が流れる。
「バンド名を略称で呼ばれることが多い彼らですが、メンバーの一人はバンド名の正式名称をしばらく知らされないでいたそうです! では、さらに遡って、アジアの端の彼らが影響を受けたバンドが、オアシスというイギリスのバンドです」
オアシスの『Don’t Look Back in Anger』が流れると今度は家族連れの親が、音に合わせて体を揺らし始めた。
彼女は芋ずる式にミュージシャン達を紐づけ、弾丸のスピードでロックの歴史を遡った。
「ではさらに、さらに、オアシスの源泉は何なのか。その一つはみなさんご存じビートルズです!」
あたかも落語家のような饒舌な語りは、少しずつ観客を引き込んでいった。
最前列で笑顔を作っていた老人の顔の口が引き締まり、たい焼きの彼は遂にその手が止まった。
「そんなビートルズに『君たちの歌には主張がない』と初対面で批判したのがボブ・ディランです」
今度は『Blowin’ In The Wind』が流れる。
「ただ、それをきっかけにビートルズの詞は社会や政治にも向き、ディランもロックの影響を受けエレキギターを持つようになりました!そして、そのボブ・ディランと親交が深かったのがギターの神様ジミ・ヘンドリクスです」
タイマーは「残り二分」を指した。
その一瞬だった。客席のど真ん中に陣取る子供が突然大声を上げて泣き出した。
その子の母親は狼狽し、どうにかしてあやそうと努めていたが泣き止む気配はなかった。
「あ、えっと……お母さん大丈夫ですよ! その、赤ちゃんは泣くのが仕事ですから!」
ハルカは語りを止めて言った。
会場スタッフも慌てて誘導をしたが、その赤子もかなり勤勉だったようで暫くの間泣き声を轟かせていた。
会場はざわつき、それを機に席を離れる客も疎らにいた。
「えと……ジミは……」
ハルカは少し間を空けてから語りを再開したが、アクシデントに意識を奪われたのかブレーキがかかり、どもってしまった。
その時、ブーというブザーが鳴り、押し黙った空間に虚しく響いた。
「……はい! 十分経過です。お疲れさまでした!」
司会の女性が、嚥下するに堪えないほどの気持ち悪い閑静を遮るように言った。
舞台上の彼女はそれに応えて立ち上がったが、きっと強張った笑顔をしていただろう。
「それでは、改めてハルカさんでした! ありがとうございました!」
彼女は深く重たい礼をした。
しかし、会場に残った観客たちは、ぽつぽつと温かい拍手を彼女に送った。
その賞賛が鳴りやむ頃、私の狭い視界から彼女が掃けていった。
「殿ラジ君もありがとうございました!」
私は、ハッとした。現在の自身の見てくれが素っ頓狂な殿様であることを失念していたからだ。
私は頭部に気を配りながら一礼し、大急ぎで客席の最前列前を駆けて客前から掃けた。
途中、元気が過ぎる子ども達に腹を小突かれた。蒸し風呂を着こなしながら、悪童に構うほどの余裕を持ち合わせていなかったので、彼女を追うようにテントへ向かった。
天竺よりも悠遠に感じられた白いテントに着くと、私はすぐさま簡易型サウナの生首を外した。
ほとんどのスタッフは会場の方に出払っている。隅の方でハルカが一人、パイプ椅子に座っていた。
彼女の視線は、すぐ下の机の木目にあり、心と頭が留守になったようだった。
このテントの空間だけが綺麗に切り取られて、すぐ傍で観客が弾んだ声を上げている中でも、確かな沈黙が生まれていた。
「どうすればよかったんだろう」
ハルカがボソッと言った。
私は、適当な返しも自分の汗を拭うタオルも見つけられないでいた。
「二人ともお疲れ」
この空間に楔を打ち込むように、背後から聞きなじみのある声がした。
顔を向けた方にいたのは、ペットボトルの水を二本持ったシイナだった。
「お疲れ様です」
私が言うのと同時に、ハルカも「おつかれ」と言った。
シイナは「ほら」と言って、ハルカと私にペットボトルを渡してきた。
「良かったじゃない。お客さんも満足してたでしょ」
ハルカは少しだけ潤んだ目で、「いや」と小さく否定した。
「上等よ」
そう言いながらシイナはハルカの頭を抱き寄せて、ワシワシと撫でた。
その姿は母と娘のようにも見えた。
「殿ラジ君も良かったわよ。大人気だったじゃない」
「子供に殴られていただけですけど」
「せっかくの晴れ舞台だし、写真撮りましょ!」
「いや、僕まだ着ぐるみの体脱いでいないので……」
「じゃあいっそ全部着たら?」
ついさっきまで灰心喪気になっていたハルカが、生気を取り戻して悪乗りをしてきた。
滅入って腫れ物のようになっていられるのも困るが、これはこれで癪なのでもう暫く燃え尽きていてほしいと思った。
「ふふ。殿納めね」
シイナまで訳の分からない言葉を使い出した。このラジオ局はもう駄目かもしれない。
彼女は若いスタッフを捕まえて写真を撮らせた後、無線機で音を聞いていた。
「シイナさんはまだ仕事あるんですか?」
私が聞くと、彼女は弱いため息を吐いた。
「今日は終日よ。貴方達はどうするの?」
「あ、私ご飯食べてない」
すっかり回復をしたハルカが言った。
「フクチ、行くよ」
そう言い切る前に、彼女の体は屋台の通りの方に向かっていた。
通りは二つの会場を繋ぐように引かれ、色褪せた暖簾が並んでいた。
「あれ、あんたさっきステージにいた子だろ?」
屋台を出す的屋の店主たちが、私達を呼び止めた。
「え、そうです!」
「お疲れ様。これ持ってきな!」
こんな具合で、屋台の通りを闊歩した彼女の両手は、派手な色の食べ物で埋まっていった。
「あんちゃんもあの化け物の着ぐるみやったんだろ? 持ってきな」
聞きたいことだらけだったが、私は善人なので好意だけを聢と受け取った。
通りを抜けると東側会場の最後列側に出た。
私達が出演した西側ステージに比べ、東側の会場は一回り小さい。深夜や朝方の番組を担当するベテラン達が自慢の饒舌を揮っているようだった。
私はなんとなく陽炎で揺れるステージを見た。
その時、何度も聞いた記憶のある声が私の体を包むように聞こえた。
――フルタの声だ。
プログラムにその名前はなかった。ステージ上の姿もぼやけていたが、その耳触りの良い声と鷹揚な話し方は、確かに『R-MIX』の主のものに違いなかった。
ハルカもフルタに気づいたようで、少しだけ疎ましそうな顔をした。
彼女はそのまま何も言わず、テラス机に食糧を並べ出した。私もそこの椅子に腰かけた。
フルタはRAR-FMの開局からの歴史を、時代の音楽と遡っているようで、奇しくもハルカと同じ形式のコーナーをしていた。
しかし、ハルカの語りが、広場のノイズや空を浮かぶ雲を蹴散らし一つ空間を支配するものだとすれば、フルタのそれは対極にあった。風で揺れる木々の騒めきや人の起こす些細な音と完全に調和する、そんな語りだった。
「フルタさん、ありがとうございました! 皆さん、大きな拍手をお願いします!」
司会の男性の声が聞こえて、拍手が起きた。
私はその声で、やっとフルタの世界から脱した。
体の向きをステージから戻すと、机上はあたかもジャンクフードの満漢全席のようになり、ハルカが一つずつ手に取っていた。
私もそのおこぼれを掴み、二人とも暫く無言で貪っていた。
すると、ステージの方からフルタとは違う、男の声が鼓膜に触れた。
遠目でも分かるほど立派過ぎるヒゲを蓄えた顔に馴染みはなかったが、陽気な声とアメリカンな話し方には既視感を覚えた。
「……なんかこの声聞き覚えあるな」
「聞き覚えも何も、私達の前の番組やってるトニーさんじゃない」
イカ焼きを手にしながらハルカが答えた。
「あれが? トニーさんって本当にハーフだったんだ」
「陽気なおじさんよ。ちょっとネジ五、六本足りてないけど」
「やっぱり、ラジオパーソナリティはみんな癖があるんだ」
ガンを飛ばしながら「どういう意味?」と言うハルカを横目に私はベビーカステラを口に運んだ。
「でも、声と話し方だけでも、何となく人相は一致するでしょ」
「……確かに」
「きっとみんな誰かのヒーローなんだよ。その日、一日のね」
悟ったように言う彼女は、ケミカルな青色の炭酸飲料を飲んでいた。
「さっきの話だけどさ」
「貴方が子供にタコ殴りにされていた話?」
「いや、声と人相の話」
「着ぐるみ越しなら痛くないの?」
今日のハルカと会話は難しそうなので、一方的に話を続けた。
「フルタさんだけは、ラジオと実物で全然印象違ったんだよな。あと痛かった」
「……あの人はあんな感じだよ。昔から」
その言葉が引き金になって、シイナといつかにした会話がフラッシュバックした。
それは、ハルカとフルタの関係のこと。
私は先程まで憑依していた殿様から勇を借りて鼓し、ハルカに尋ねることにした。
「そういえば聞きたかったことがあったんだ」
そう言いかけたとき、ハルカのすぐ後ろに二人の男が現れた。
片方はフルタ、その人だった。
その凄みを漂わせた男は、マイクの前にいた彼とは種類の異なる威圧感を放っていたから、私の背筋は冷凍パインのように冷えた。
「何?」
青ざめていたであろう私の顔を不審に思ったのかハルカは振り返り、視界に捉えたフルタを険しい顔で睨んだ。
フルタもその睨みを返していたが、ハルカをじっと見る老いた目は、以前スタジオで相対した時ほど獰猛ではなくて、憂いや影を孕んでいたようにも見えた。
それからフルタは、「お前は」と切り出した。
「お前のラジオってのは、ただ知識をひけらかすものなのか?」
騒がしいほどの空間でも、鋭利な言葉がそれを切り裂くように鮮明に聞こえた。
「教養っていうのは、自分の楽しむことができる領域を広げるためのものだ。遊びの道具だ。お前はあろうことかそれを人様に、リスナーに押し付けている。工夫の方向を百八十度間違えた、自分が気持ちよくなるためだけの口上、実に不愉快だ」
フルタはそう言ってくるっと背を向けた。
「だから子供も泣く」
それだけ残して、フルタと片割れの男はゆっくりと去って行った。
ハルカは歪んだ顔のまま、ただ口を結んでいた。
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