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風吹く星よ
震える手
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「仕方がないか。君の顔を立てて、我慢しておこう。だが、その代わり必ず勝てよ」
「努力はするよ。あとピギをよろしく」
「ピギは一体どうしたんだ?あの時からずっと上の空だが」
「分かんないよ。とりあえず、空魔をどうにかしたら治るんじゃないか?」
体調はすこぶる快調らしく、三食の食事とおやつも欠かさずに食べている。おかわりもしていた。
精神的な問題みたいだ。
「ちょっといい?お客さんよ」
コネコとピギについて話し合っていると、ユラさんがお客さんを連れてきた。
誰だろう?クインシフにはもう人はほとんどいないし、残っている人たちも僕らの所に来る暇などないはずだ。
「ヴィニアちゃん!?何でここに?」
「こっそりと抜け出してきたんだ」
ユラさんが連れてきたのはヴィニアちゃんだった。
彼女も近衛隊のパイロットとして、対空魔戦に参加する。
クインシフを見捨てて逃げるという選択肢は彼女にはなかった。
乗機はフォートレスではなく、彼女用に調整されたテンペストになるそうだ。
なぜなら、フォートレスは空魔の攻撃を避けられないため、危険が大きいからである。
BSゴルゴンの時と違って、スラスターが使えるので、機動力は見た目ほど悪くはないんだけど、空魔の攻撃を避けられるほどじゃない。
「それで何の用なの?」
「迷ったんだけど、みんなには知っていてほしいことがあるんだ」
どうやら大事な話みたいだ。
ここでは難なので、食堂に移動する。
「今から話すのはお母さんに聞かされた昔話。【巫女と空の王】。大事なことだから、ちゃんと覚えといて」
ヴィニアちゃんは昔話を語り出した。
そして、翌日、作戦決行日。
昨日の話はかなり衝撃的なものだった。
真実かどうかは分からないけど、体内では真実だったと前提にして、動くことにする。
作戦決行は今日の昼から。
もうマイグラントから出て、フローグラス平原で待機している。
出る時はとても大変だった。
ピギが付いてこようとしたのだ。
ジルコニアの中に入りこんだり、紅霞のコックピットに潜り込んだり、あらゆる手を講じてきた。
ピギには悪いが、それは許可できない。
今回の危険度は今までとは桁が違う。
そんな場所にピギを連れてくることは容認できない。
フローグラス平原は空魔との戦闘に備えた設営が行われており、昼までには準備が終わるはずだ。
完了と同時に作戦が決行される予定だ。
休憩は挟まない。
これ以上、空魔に回復の時間を与えるわけにはいかない。
どれほど回復したかは不明だけど、国が招いた専門家の話では、大体半分程度回復しているそうだ。
対空魔に参加するのはファルシュとフォートレスだけ。
戦艦は出てこない。
対空魔戦に戦艦が出てくることはないそうだ。
空魔の攻撃の射程距離は戦艦を大きく上回っている。
それに空魔の荷電粒子砲の前では、戦艦でも一撃で撃破されてしまう。
戦艦を投入しても、囮ぐらいにしか使えないらしい。
その代わり、フローグラス平原には戦艦の艦砲を設置している。
これなら、空魔にもダメージを与えることができるだろう。
作戦決行まであと数時間。
心の準備はもうできている。
つい先ほど、イヴィルフライヤーの足止め部隊が、交戦状態に入ったらしい。
大激戦を繰り広げているそうだ。
彼らなら大丈夫……と思いたいけど、突破される可能性が高い。
一応、僕なりに手を打っておいたが、それが効果を発揮する前にやられるかもしれない。
一万を超えるイヴィルフライヤーが襲来すれば、近衛隊でも壊滅する。
その前にこいつを倒さなくてはならない。
こいつを倒せたとしても、イヴィルフライヤーが止まるとは限らないが、クインシフを存続させるにはその可能性に賭けるしかない。
少し前まで紅霞とジルコニアの傍には人がいたが、今は僕とユラさんしかいない。
みんなそれぞれの持ち場に付いた持ち場についた。
「もうすぐ決行よ」
「そうだね。緊張してる?」
「当たり前でしょ。だって、あたしたちが成功しないと、みんなの命がないんでしょ。しない方がおかしいんじゃないかなぁ。スワロ君は緊張してないの?」
「してるよ。今も手が少し震えてるんだ」
震えた手をユラさんに見せる。
少しと言ったが、震えはかなり大きかった。
僕らの失敗は近衛隊の死を意味する。
この戦力では、正面から討伐はほぼ不可能。確実にやられる。
僕の背負うのは近衛隊をはじめとするこの作戦に関わる全ての人間の命だ。
緊張しない方がおかしい。
震える僕の手をユラさんは自身の両手で優しく包み込んでくれた。
「大丈夫。スワロ君が失敗しても、あたしがフォローするから。その代わり、あたしが失敗したら、フォローしてね」
「ありがとう。任せて」
ユラさんの励ましで、手の震えは止まった。
彼女と一緒ならいける。
「努力はするよ。あとピギをよろしく」
「ピギは一体どうしたんだ?あの時からずっと上の空だが」
「分かんないよ。とりあえず、空魔をどうにかしたら治るんじゃないか?」
体調はすこぶる快調らしく、三食の食事とおやつも欠かさずに食べている。おかわりもしていた。
精神的な問題みたいだ。
「ちょっといい?お客さんよ」
コネコとピギについて話し合っていると、ユラさんがお客さんを連れてきた。
誰だろう?クインシフにはもう人はほとんどいないし、残っている人たちも僕らの所に来る暇などないはずだ。
「ヴィニアちゃん!?何でここに?」
「こっそりと抜け出してきたんだ」
ユラさんが連れてきたのはヴィニアちゃんだった。
彼女も近衛隊のパイロットとして、対空魔戦に参加する。
クインシフを見捨てて逃げるという選択肢は彼女にはなかった。
乗機はフォートレスではなく、彼女用に調整されたテンペストになるそうだ。
なぜなら、フォートレスは空魔の攻撃を避けられないため、危険が大きいからである。
BSゴルゴンの時と違って、スラスターが使えるので、機動力は見た目ほど悪くはないんだけど、空魔の攻撃を避けられるほどじゃない。
「それで何の用なの?」
「迷ったんだけど、みんなには知っていてほしいことがあるんだ」
どうやら大事な話みたいだ。
ここでは難なので、食堂に移動する。
「今から話すのはお母さんに聞かされた昔話。【巫女と空の王】。大事なことだから、ちゃんと覚えといて」
ヴィニアちゃんは昔話を語り出した。
そして、翌日、作戦決行日。
昨日の話はかなり衝撃的なものだった。
真実かどうかは分からないけど、体内では真実だったと前提にして、動くことにする。
作戦決行は今日の昼から。
もうマイグラントから出て、フローグラス平原で待機している。
出る時はとても大変だった。
ピギが付いてこようとしたのだ。
ジルコニアの中に入りこんだり、紅霞のコックピットに潜り込んだり、あらゆる手を講じてきた。
ピギには悪いが、それは許可できない。
今回の危険度は今までとは桁が違う。
そんな場所にピギを連れてくることは容認できない。
フローグラス平原は空魔との戦闘に備えた設営が行われており、昼までには準備が終わるはずだ。
完了と同時に作戦が決行される予定だ。
休憩は挟まない。
これ以上、空魔に回復の時間を与えるわけにはいかない。
どれほど回復したかは不明だけど、国が招いた専門家の話では、大体半分程度回復しているそうだ。
対空魔に参加するのはファルシュとフォートレスだけ。
戦艦は出てこない。
対空魔戦に戦艦が出てくることはないそうだ。
空魔の攻撃の射程距離は戦艦を大きく上回っている。
それに空魔の荷電粒子砲の前では、戦艦でも一撃で撃破されてしまう。
戦艦を投入しても、囮ぐらいにしか使えないらしい。
その代わり、フローグラス平原には戦艦の艦砲を設置している。
これなら、空魔にもダメージを与えることができるだろう。
作戦決行まであと数時間。
心の準備はもうできている。
つい先ほど、イヴィルフライヤーの足止め部隊が、交戦状態に入ったらしい。
大激戦を繰り広げているそうだ。
彼らなら大丈夫……と思いたいけど、突破される可能性が高い。
一応、僕なりに手を打っておいたが、それが効果を発揮する前にやられるかもしれない。
一万を超えるイヴィルフライヤーが襲来すれば、近衛隊でも壊滅する。
その前にこいつを倒さなくてはならない。
こいつを倒せたとしても、イヴィルフライヤーが止まるとは限らないが、クインシフを存続させるにはその可能性に賭けるしかない。
少し前まで紅霞とジルコニアの傍には人がいたが、今は僕とユラさんしかいない。
みんなそれぞれの持ち場に付いた持ち場についた。
「もうすぐ決行よ」
「そうだね。緊張してる?」
「当たり前でしょ。だって、あたしたちが成功しないと、みんなの命がないんでしょ。しない方がおかしいんじゃないかなぁ。スワロ君は緊張してないの?」
「してるよ。今も手が少し震えてるんだ」
震えた手をユラさんに見せる。
少しと言ったが、震えはかなり大きかった。
僕らの失敗は近衛隊の死を意味する。
この戦力では、正面から討伐はほぼ不可能。確実にやられる。
僕の背負うのは近衛隊をはじめとするこの作戦に関わる全ての人間の命だ。
緊張しない方がおかしい。
震える僕の手をユラさんは自身の両手で優しく包み込んでくれた。
「大丈夫。スワロ君が失敗しても、あたしがフォローするから。その代わり、あたしが失敗したら、フォローしてね」
「ありがとう。任せて」
ユラさんの励ましで、手の震えは止まった。
彼女と一緒ならいける。
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