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コントな文学『僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った』

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同じ大学に通うバンダナ巻いたチェックのシャツの撮り鉄に腕相撲で負けた。


圧勝できると思ってたら瞬殺された。


僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った。





髪型と服装でイケてる雰囲気を装っているだけで、顔は中の下だと周囲の人間にバレ始めた・・・


僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った。





10年ぶりに会った母方の婆ちゃんが、


優しくて大好きだった婆ちゃんが、


僕の事をとても可愛がってくれた婆ちゃんが、


爺さんか婆さんか見た目で性別が判断できないお年寄りになっていた。


僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った。





父さんが勤める会社の社長が、腕相撲で負けたバンダナとチェックのシャツの撮り鉄の父親だった。


僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った。





高校時代に同じクラスになって2週間経ち、そこそこ会話するようになってきた男子に、そろそろ大丈夫だろと思って「さとるっぴ」って、そいつのあだ名で呼んだら「ん?」って顔されたのをまた思い出した夜・・・


僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った。





二十歳になって、初めて父さんと2人で飲みに行った。


「夢が叶った」と嬉しそうに酒が進む父さん。


僕が小学生の時に通っていたスイミングスクールのコーチと母さんが不倫して離婚したという衝撃の事実を酩酊した父さんから初めて聞かされた。


僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った。





僕の事、初めての彼氏だって言ってたのに、

 
僕だって初めての彼女だったのに、


彼女の初めての男は僕じゃなかった。


僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った。





ある日、家で飲み潰れた父さんが、


「何の為に生きてるのか分からなくなった」
「年を取れば取る程、生きていてもつまらないし
楽しい事が無くなっていく」


と言って涙していた。


僕は仔猫の動画を見て、心を癒してから眠った。





翌日、父さんと相談して仔猫の保護猫の里親になる事を決めた。


そして2ヶ月後。


新しい家族を迎えて、幸せそうにしている父さんの顔を思い出しながら僕は眠った。




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