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コントな文学『それでも、夕焼けは綺麗だった』

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17歳。


片思いだと思っていたけど両思いだった。


高嶺の花のクラスメイトが初めての彼女になった。


初デートは放課後デート。


マック行って、プリクラ撮って、自転車二人乗りして、公園のベンチで一緒に夕焼けを見ている。


「一緒に聴こ」


彼女がイヤホンを片方差し出してきた。


恋人と片耳ずつイヤホンを付けて音楽を聴く事に憧れてたんだろうなって思った。


俺も憧れてたし。


だけど・・・


だけど、彼女から渡されたイヤホンには、すっげー耳クソが詰まっていた。


オーストラリア生まれの帰国子女なのに…
英語ペラペラなのに…
定期テストで学年3位なのに…
父親が外務省のエリート外交官なのに…
綺麗な黒髪のロングなのに…
フルートだって演奏できるお嬢様系なのに…
嫌味が無くて同性からも好かれるタイプなのに…
美人だけど笑うと愛嬌たっぷりで可愛いのに…


イヤホンにすっげー耳クソが詰まっていた。


気持ち悪いけど仕方ないから、俺はなるべく浅めにイヤホンを装着した。


このイヤホンからだと、どんなラブソングも失恋ソングに聴こえてくるような気がした。


《冷めるわ~》
《脇が甘い》
《事前に確認できたはず》
《危機管理能力の低さ》
《リスクマネジメント》
《爪楊枝と除菌シートが欲しい》


様々な思いを表したワードが頭の中を飛び交う。


でもね・・・


それでもね・・・


それでも、夕焼けは綺麗だった。


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