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コントな文学『初任給と母さんの涙』
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初任給で両親に何かプレゼントをと思い、5月の父さんと母さんの結婚記念日に母の日のギフトと合わせて贈る事にした。
就職を機に都内で一人暮らしを始めたので、時間指定で宅配を届けたから受け取るよう両親に伝えて、こっそり横浜の実家に帰りサプライズで直接渡そうと計画した。
当日、物音を立てずに実家の玄関を開けてリビングに近づくと、父さんと母さんの楽しそうな話し声が聴こえてくる。
両親が驚く姿を想像しながらリビングの扉を開けると、そこには裸の上から長年使っているエプロンを着けた母さんが立っていた。
両手にプレゼントを持って立ち尽くす俺。
裸にエプロン姿でテーブルに料理を並べる母さん。
裸にエプロン姿の母さんを目で楽しみながらシャンパンを飲んでいた父さん。
まるで時が止まってしまったように固まる3人。
・・・「何やってだよ、母さん」
そう言って俺は止まった時を再び動かした。
「母さん何歳だと思ってんだよ。もう52だろ?
52歳って確かサザエさんに出てくるフネさんと同い年だぞ。
そんな格好して恥ずかしくないのか?
とりあえず服着ろよ、みっともない」
裸にエプロン姿の母さんが泣き出した。
「何泣いてんだよ、泣きたいのはこっちだよ」
「バカ野郎っ」
父さんの怒鳴り声がリビングに響いた。
「お前は何で母さんが泣いているのか分からないのか?」
「何でってバカな事をしてるからだろ?」
「違う、お前が悪いんだ。お前が母さんを泣かしたんだ」
ちょっと何言ってるか俺には分からなかった。
「分からんのか?
考えてみろ、 母さん何か悪い事したか?」
「悪い事って、裸にエプロン姿で…」
「それの何が悪い?犯罪か?
一人息子が独立して、久しぶりの夫婦水入らずの結婚記念日に、母さんが父さんの為にサービスして裸にエプロン姿で料理を作る。
そして父さんは母さんの裸にエプロン姿を酒の肴に美味いシャンパンを飲んでいた。
公然わいせつ罪には該当しないぞ」
世間的や年齢的には恥ずべきプレイだと思うけど、確かに夫婦が自宅で楽しむ分には犯罪行為ではない。
息子的に「勘弁してくれよっ」てだけの問題な気がしてきた。
父さんが真っ直ぐ俺の目を見ながら話を続ける。
「せっかく楽しくやってたのに、無断でいきなり帰ってきて結婚記念日を台無しにした上に、何も悪くない母さんを侮辱して泣かしやがって…
母さんを泣かしたお前を俺は許さない。
母さんに謝りなさい」
「なぁ、母さん…
実は今日ね、父さんと母さんに初任給で買ったプレゼントと、母の日のギフトをサプライズで渡そうと思って帰ってきたんだよ。
それなのに一体どこで間違えちゃったのかなぁ…
父さんが言う通り、俺が悪かったのかな?」
「さっきから何ゴチャゴチャ言ってるの?
あなたが100パー悪いのよ」
裸にエプロン姿の母さんに面と向かって100%俺が悪いと言われた。
もう何か言い返す気力も無くなってしまった。
「そっかぁ、ごめんね母さん。父さんもごめん。
これ、初任給で買った両親へのプレゼントと母の日のギフトだから良かったら使ってよ」
そう言い残して俺は実家を後にした。
翌日、母さんからメールが届いた。
『昨日はごめんなさい。
そしてプレゼントありがとう。
贈ってくれたペアのグラスでお父さんとお酒を飲んで結婚記念日を祝い直しました。
それと、エプロンも大事に使わせてもらいます。
今度はちゃんと連絡してから来てね。母より』
何の因果か俺は母の日のギフトに新しいエプロンを母さんに贈ってしまった。
大事に使うって、それは服の上から?それともまた裸になって?
俺は母さんに聞けなかった。
就職を機に都内で一人暮らしを始めたので、時間指定で宅配を届けたから受け取るよう両親に伝えて、こっそり横浜の実家に帰りサプライズで直接渡そうと計画した。
当日、物音を立てずに実家の玄関を開けてリビングに近づくと、父さんと母さんの楽しそうな話し声が聴こえてくる。
両親が驚く姿を想像しながらリビングの扉を開けると、そこには裸の上から長年使っているエプロンを着けた母さんが立っていた。
両手にプレゼントを持って立ち尽くす俺。
裸にエプロン姿でテーブルに料理を並べる母さん。
裸にエプロン姿の母さんを目で楽しみながらシャンパンを飲んでいた父さん。
まるで時が止まってしまったように固まる3人。
・・・「何やってだよ、母さん」
そう言って俺は止まった時を再び動かした。
「母さん何歳だと思ってんだよ。もう52だろ?
52歳って確かサザエさんに出てくるフネさんと同い年だぞ。
そんな格好して恥ずかしくないのか?
とりあえず服着ろよ、みっともない」
裸にエプロン姿の母さんが泣き出した。
「何泣いてんだよ、泣きたいのはこっちだよ」
「バカ野郎っ」
父さんの怒鳴り声がリビングに響いた。
「お前は何で母さんが泣いているのか分からないのか?」
「何でってバカな事をしてるからだろ?」
「違う、お前が悪いんだ。お前が母さんを泣かしたんだ」
ちょっと何言ってるか俺には分からなかった。
「分からんのか?
考えてみろ、 母さん何か悪い事したか?」
「悪い事って、裸にエプロン姿で…」
「それの何が悪い?犯罪か?
一人息子が独立して、久しぶりの夫婦水入らずの結婚記念日に、母さんが父さんの為にサービスして裸にエプロン姿で料理を作る。
そして父さんは母さんの裸にエプロン姿を酒の肴に美味いシャンパンを飲んでいた。
公然わいせつ罪には該当しないぞ」
世間的や年齢的には恥ずべきプレイだと思うけど、確かに夫婦が自宅で楽しむ分には犯罪行為ではない。
息子的に「勘弁してくれよっ」てだけの問題な気がしてきた。
父さんが真っ直ぐ俺の目を見ながら話を続ける。
「せっかく楽しくやってたのに、無断でいきなり帰ってきて結婚記念日を台無しにした上に、何も悪くない母さんを侮辱して泣かしやがって…
母さんを泣かしたお前を俺は許さない。
母さんに謝りなさい」
「なぁ、母さん…
実は今日ね、父さんと母さんに初任給で買ったプレゼントと、母の日のギフトをサプライズで渡そうと思って帰ってきたんだよ。
それなのに一体どこで間違えちゃったのかなぁ…
父さんが言う通り、俺が悪かったのかな?」
「さっきから何ゴチャゴチャ言ってるの?
あなたが100パー悪いのよ」
裸にエプロン姿の母さんに面と向かって100%俺が悪いと言われた。
もう何か言い返す気力も無くなってしまった。
「そっかぁ、ごめんね母さん。父さんもごめん。
これ、初任給で買った両親へのプレゼントと母の日のギフトだから良かったら使ってよ」
そう言い残して俺は実家を後にした。
翌日、母さんからメールが届いた。
『昨日はごめんなさい。
そしてプレゼントありがとう。
贈ってくれたペアのグラスでお父さんとお酒を飲んで結婚記念日を祝い直しました。
それと、エプロンも大事に使わせてもらいます。
今度はちゃんと連絡してから来てね。母より』
何の因果か俺は母の日のギフトに新しいエプロンを母さんに贈ってしまった。
大事に使うって、それは服の上から?それともまた裸になって?
俺は母さんに聞けなかった。
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