のんびりしたくて

はりゅう

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つづき

町(マーチ町長視点)

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 私はこの町の町長だ。
 もともとは別の町の住民だったが、巡り巡ってこの町の町長になった。

 町長になって4年。
 なにも出来ないまま4年、経ってしまった。

 この町には問題がある。
 この町は、ゴロツキどもに支配されていたのだ。

 私がこの町に来たときにはすでに支配されていた。
 私は、この問題は私が解決するのだと決めた。

 しかし、なにも、出来なかった…。

 
 ゴロツキどもにとってこの町は、支配しやすい町だっただろう。
 町は小さく、外から人がやってくる事もあまり無い。
 なにも無いから来る理由が無いのだ。

 その為、この町の住人達はゴロツキどもに、いいように支配されてしまったのだ。
 
 この町は戦う術を持つものが少ない。
 穏やかな気質故か、争う事を嫌う傾向でもあった。
 
 問題が起きなかったのは、ギルドがあった為だ。
 ギルドには戦う力を持つものを募り、管理する役割がある。
 これはどこのギルドでも共通のこと。
 ギルドのある全ての町から情報を集め、必要な所へ必要な人材を派遣している。

 この町にも、ギルドから人材が派遣されていた。
 その人材が、この町の支配者になってしまったのだ。

 そいつは、まず、この町の戦う術を持つものを支配下に置いた。
 そして、ギルドを我が物とした。
 それだけで、この町は、支配されてしまったのだ。

 何故なら、術石を抑えられてしまったから。
 
 術石は、生活においてなくてはならない物。
 本来なら簡単に手に入る物だ。

 ただし、少しでも戦う力があれば、だ。
 
 術石は、魔獣から手に入る石に術を封じ込めた物。
 火を付けたり、水を出したり、明かりになったりする。

 どんな魔獣からでも石を得る事ができる。
 ただ、弱い魔獣からは効果の低いものしか出来ず、町の壁の術石に使える石は、それなりに強い魔獣からで無いと得る事ができないのだ。
 
 ギルドはそれらを管理する役目ももっている。
 術石にするための石はギルドに集められる。
 それを抑えられてしまったから、この町は奴らに支配されたのだ。

 私は、それを知るなり行動に移した。
 他のギルドに連絡を入れてようとした。
 しかし奴らに気付かれ阻止されてしまった。
 私は常に、監視されていのだ。
 
 住人達にも話した。
 このままではダメだと。
 だが、戦う力のない者たちは、支配を受け入れてしまっていて協力してもらえなかった。

 なにもできずに時間だけが過ぎていた。
 
 なんとか、10人ほどだが協力してくれる者を集める事が出来たが、私ももう、疲れはじめていた。
 常に監視され、時には脅しさえしてくる。

 ギルドが支配されているのが痛い。
 情報を集める事も、流す事も出来ないので助けを求める事も出来ない。

 奴らは100人ほどの集団で、私達はたったの10人。
 町の住人は200人は居ないが、奴らの支配下にあり、けれど彼らは、私が保護しなければならない民だ。

 行動を起こすには慎重にならなければ、ならない。

 私は、その時を待った。
 奴らに嘲笑われようと、ひたすらに耐え、時を待った。

 そのがようやくやってきた。

 始まりは、この町に訪れた女性と幼子からだった。
 2人は極普通に訪れ、宿屋に泊まった。
 しかし、その服装がこの辺りでは見られない上等な物だからだろう、支配者の手下達、ギルドを根城にしているゴロツキどもに目を付けられてしまった。

 情報はあっという間に広がり、女性達の宿は奴らに抑えられてしまった。
 宿の主人は自分に害が来るのを嫌ったのだろう、客の保護はされなかった。

 私はこの情報を得て、直ぐに行動に移した。
 協力者を集め、女性達をなんとしても護らなくてはならない、と。

 私達は10人しかいないが、2、30人位のただのゴロツキ達なら抑えられる。
 訓練されていない奴らより、我々の方が力がある。
 抑えるくらいならできる。
 その間に逃げてもらうのだ。

 …返り討ちに遭う事もあるだろう。
 だが、我々はここで立ち上がらなくてはならない!
 罪のない女性達を被害に遭わせるわけにはいかない!



 
 そう、強く思い、助けようと彼らが向かった町の外へと急いだ。
 そしてーーー。


 ……結果として、我々はこの町にを取り戻す事ができた。
 女性達のおかげで。


 女性達は逃げ、追ったゴロツキ達は50人いたが、我々が追い付いた、いや、辿り着いた時は、ゴロツキ達は地に伏せていたのだ。
 その中で立っていたのは女性達だけ。
 
 ああ、良かった。

 まず思ったのはそれだ。
 女性達が無事だった。
 
 この時、地に伏せているゴロツキどもになど目に入らず、女性が幼い子供に寄り添っている事に、涙した。
 …本当に、良かった、と。

 我々はゴロツキ達を縛り上げ、女性達に礼をしたいと無理矢理1日留まってもらって、できる範囲でだが、報奨金を差し出した。
 断られたがなんとか受け取ってもらい送り出した。


 私は清々しい思いだ。
 やる事はまだある。
 残りの奴らも捕らえなくてはならない。
 これから忙しくなるだろう。
 だが、今まで止まっていた時が動いた。

 まだまだ問題は山積みだ。
 住民達の意識も変えていかなくてはならない。

 そう、前を向けるようになったのは、彼女達にきっかけを与えてもらったからだ。

 感謝する。

 私は、この町を必ず良くしてみせる!

 
 いつか、また来てくれるだろうか。
 その時にはきっと、この町でゆっくりしてほしい。
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