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二章
新ミレイとイーテリオ
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逃げ回らないと決めたものの、自分から積極的に接触してオリジナルミレイが何をしでかしたか確認するのも憚られた。
同じ学園にいるのだから、避けさえしなければそのうち話す機会もあるだろう。
休暇中は魔法の練習と常識の勉強をしようと決めた。
初回の魔法練習はエリサに見ていて貰った。
「使う素養はあるわけだから、使い方さえ分かれば出来ると思うわ。まずは魔力を感じるところから始めましょう」
「意識を集中して、体の真ん中に感じるじんわり温かいのが魔力で、それを手に持って来ればいい?」
「あら。そうよ。覚えていたのね」
「覚えていたというか…」
異世界あるあるを試したら、如何にもな感覚に行き当たっただけなんだけど。
まあ、第1関門が簡単に突破できて良かった。
「手に魔力集めたら、その後はどうしたらいいの?」
「詠唱で魔法に変換するの。簡単なのを教えるわね…って何その魔力量!?」
やはり魔力量お化けみたい。さすがヒロインちゃん!
こういうのって、テンプレで行くと魔法のイメージが大事で無詠唱でも使えちゃったりとか…?
「えい!」
どぉぉぉぉんっ!!
おぉぅ。
「イメージ通り!」
「…い、今…詠唱は?」
「しなかった!明確にイメージしたら出たよ!」
「無詠唱!?」
お。
固まるエリサだなんて始めて見たかも。
テンプレの無詠唱チート!!これはちょっと楽しい。
私がひとりテンション上がっていると、後ろから声をかけられた。
「今の魔法はミレイ嬢ですか?!」
あら。似非インテリメガネ様。
「はい、私です」
「ミレイ嬢、詠唱は?!」
え、そのくだり、もう一回やるの?二度手間だなぁ。
「イメージして、えいってしたら出ましたよ」
「無詠唱!?そんなことが…!?」
「ミレイ、これは…?」
エリサのフリーズが解除されたらしい。
「だって、炎とか雷とか出したら危ないし、風だと私の力か自然の突風か分からないかもしれないと思ったし、だから、雪だるまを出してみました」
我ながら、なかなか可愛いのが出せたと思う。
「…大きすぎるわよ」
うん、2階建ての建物くらいの高さがあるからこれが人に向かって倒れたら危険だね。
それに溶けたら校庭に大きな池ができてしまう。
「だね。消すね」
「そんな!!無詠唱でもたらされた雪だるまが!」
あれ。似非インテリが異常に取り乱している。
まあ、消すけど。
消すことをイメージして、
「えい!」
消えた消えた。
「イーテリオ様って、もしかしてら魔法オタクか何かですか…?」
もしくは雪だるまオタク。
イーテリオ様は雪だるまがいた辺りを見つめたまま、話し始めた。
「私の家は代々優秀な魔法師を輩出している。私も同年代の中では魔法に関しては優秀な部類に入ると自負している」
インテリ枠かと思ってたけど、魔法に秀でた人なのか。
「実は私には双子の弟がいてね。…ああ、長いこと公の場には出ていないから、知らなくても無理はない」
首を傾げたエリサに向かってイーテリオ様は補足した。
「弟は私より遥かに優秀だった。私は弟に追いつこうと懸命に魔法の練習を重ねたが、それでも弟は私の先を行く。一生追いつくことは無いのではないか、と何度も弱気になって、でもそれでも諦めきれずに、鍛錬した…」
ん?なんかディープな話を始めようとしていない?
「…必死になりすぎて、自分の限界を見極められなかった。ある日、弟が使った魔法を自分も使おうとした。私の魔力の制御ではまだ使えないような難しい魔法をだ。意地になっていたんだ。案の定、失敗してね…暴発した。その時、弟にひどい怪我を負わせてしまった。
すぐに手当てされて、命に別状はなかったが、喉を傷つけてしまってね。声を出すのに不自由するようになった。そのせいで詠唱が出来なくなって、魔法が使えなくなったんだ。
弟は気にするなと言ってくれたが…あれは私のせいだ。私のせいで弟は魔法を使えなくなった。将来この国で1番の魔法師になると期待されていた弟だけに、両親も口にはしないが落ち込んでいたよ。
せめて、弟の代わりに自分が1番の魔法師になろうと、魔法の鍛錬に明け暮れた。それでも、せいぜい同世代で優秀な部類に入る程度だった。秀才の域を出ない私には天才の弟には及びようがないのだと気付きながらも、罪悪感を消すように魔法を追求した。
ミレイはそんな私に言ったんだ『どうしてそんなにツラそうな顔をして魔法を使っているの?』と。『私は魔法は楽しいものだと思うの』といってニコニコしながら殲滅系の雷魔法を使うものだから、私は慄いたよ」
真面目な話なのにこんなことを思うのはなんだけど、さっきからイーテリオ様がミレイの言葉を言う時に、たぶんミレイの真似しながら言ってるみたいで、私、慄いてる。
エリサは…たぶんあれは笑わないように真顔を貼りつけてるね。
同じ学園にいるのだから、避けさえしなければそのうち話す機会もあるだろう。
休暇中は魔法の練習と常識の勉強をしようと決めた。
初回の魔法練習はエリサに見ていて貰った。
「使う素養はあるわけだから、使い方さえ分かれば出来ると思うわ。まずは魔力を感じるところから始めましょう」
「意識を集中して、体の真ん中に感じるじんわり温かいのが魔力で、それを手に持って来ればいい?」
「あら。そうよ。覚えていたのね」
「覚えていたというか…」
異世界あるあるを試したら、如何にもな感覚に行き当たっただけなんだけど。
まあ、第1関門が簡単に突破できて良かった。
「手に魔力集めたら、その後はどうしたらいいの?」
「詠唱で魔法に変換するの。簡単なのを教えるわね…って何その魔力量!?」
やはり魔力量お化けみたい。さすがヒロインちゃん!
こういうのって、テンプレで行くと魔法のイメージが大事で無詠唱でも使えちゃったりとか…?
「えい!」
どぉぉぉぉんっ!!
おぉぅ。
「イメージ通り!」
「…い、今…詠唱は?」
「しなかった!明確にイメージしたら出たよ!」
「無詠唱!?」
お。
固まるエリサだなんて始めて見たかも。
テンプレの無詠唱チート!!これはちょっと楽しい。
私がひとりテンション上がっていると、後ろから声をかけられた。
「今の魔法はミレイ嬢ですか?!」
あら。似非インテリメガネ様。
「はい、私です」
「ミレイ嬢、詠唱は?!」
え、そのくだり、もう一回やるの?二度手間だなぁ。
「イメージして、えいってしたら出ましたよ」
「無詠唱!?そんなことが…!?」
「ミレイ、これは…?」
エリサのフリーズが解除されたらしい。
「だって、炎とか雷とか出したら危ないし、風だと私の力か自然の突風か分からないかもしれないと思ったし、だから、雪だるまを出してみました」
我ながら、なかなか可愛いのが出せたと思う。
「…大きすぎるわよ」
うん、2階建ての建物くらいの高さがあるからこれが人に向かって倒れたら危険だね。
それに溶けたら校庭に大きな池ができてしまう。
「だね。消すね」
「そんな!!無詠唱でもたらされた雪だるまが!」
あれ。似非インテリが異常に取り乱している。
まあ、消すけど。
消すことをイメージして、
「えい!」
消えた消えた。
「イーテリオ様って、もしかしてら魔法オタクか何かですか…?」
もしくは雪だるまオタク。
イーテリオ様は雪だるまがいた辺りを見つめたまま、話し始めた。
「私の家は代々優秀な魔法師を輩出している。私も同年代の中では魔法に関しては優秀な部類に入ると自負している」
インテリ枠かと思ってたけど、魔法に秀でた人なのか。
「実は私には双子の弟がいてね。…ああ、長いこと公の場には出ていないから、知らなくても無理はない」
首を傾げたエリサに向かってイーテリオ様は補足した。
「弟は私より遥かに優秀だった。私は弟に追いつこうと懸命に魔法の練習を重ねたが、それでも弟は私の先を行く。一生追いつくことは無いのではないか、と何度も弱気になって、でもそれでも諦めきれずに、鍛錬した…」
ん?なんかディープな話を始めようとしていない?
「…必死になりすぎて、自分の限界を見極められなかった。ある日、弟が使った魔法を自分も使おうとした。私の魔力の制御ではまだ使えないような難しい魔法をだ。意地になっていたんだ。案の定、失敗してね…暴発した。その時、弟にひどい怪我を負わせてしまった。
すぐに手当てされて、命に別状はなかったが、喉を傷つけてしまってね。声を出すのに不自由するようになった。そのせいで詠唱が出来なくなって、魔法が使えなくなったんだ。
弟は気にするなと言ってくれたが…あれは私のせいだ。私のせいで弟は魔法を使えなくなった。将来この国で1番の魔法師になると期待されていた弟だけに、両親も口にはしないが落ち込んでいたよ。
せめて、弟の代わりに自分が1番の魔法師になろうと、魔法の鍛錬に明け暮れた。それでも、せいぜい同世代で優秀な部類に入る程度だった。秀才の域を出ない私には天才の弟には及びようがないのだと気付きながらも、罪悪感を消すように魔法を追求した。
ミレイはそんな私に言ったんだ『どうしてそんなにツラそうな顔をして魔法を使っているの?』と。『私は魔法は楽しいものだと思うの』といってニコニコしながら殲滅系の雷魔法を使うものだから、私は慄いたよ」
真面目な話なのにこんなことを思うのはなんだけど、さっきからイーテリオ様がミレイの言葉を言う時に、たぶんミレイの真似しながら言ってるみたいで、私、慄いてる。
エリサは…たぶんあれは笑わないように真顔を貼りつけてるね。
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