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一章 リコリス
【3】
しおりを挟むキーンコーンカーンコーン
「中村ちょっと指導室まで来い」
「失礼しましたー」
たかが5分の遅刻でわざわざ放課後に呼び出してまで説教する必要あるか?
そもそも校門通ってから教室に行くまでが遠すぎるんだよ。
「おかえりー咲怒られたの?」
「わりとしっかりめにね」
「夕凪何も言われなかったよー?」
「夕凪の担任優しいじゃん」
まぁ遅刻は遅刻だし仕方ない…
「図書館行く前にコンビニ寄ってかない?お菓子買ってこ!!」
ほんとこの子は…1人にするのが心配すぎる。
「図書館でお菓子は食べれないよ。今日使いたい参考書借りたらフードコードで勉強にする?」
「それ良いね!じゃあ早く図書館行こ!」
さっきまで乗り気じゃなかったのバレてるからな。笑
お菓子ばっかり食べて手が進まないなんて事が無い様に監視しておかなきゃな…
「ねぇ、なんの参考借りるんだっけ?」
こっちは図書館に着いていきなり目的を知らなかった事実を知って驚愕してるよ…
でもまぁ小声で話しかけてきたのは良かったと思う。
「小論文の参考になりそうな資料を探しにきたん……「あっ!!!!」
前言撤回全く良くない。え、外でもそこそこでかめの声よ?
「びっくりした。どうしたの?あと声でかい」
「見て!あそこの!めっちゃイケメン!」
また急に小声だな…
夕凪の視線を追ってみると、身長180はある黒髪オールバックで後ろに一本で束ねているがっちりした男の人が立っていた。
うん…確かにかっこいい。見てるのは新聞?変わってるな…
「確かにイケメンだね。男らしいって感じ」
「咲ってあんな感じの人好きでしょ?」
確かに今まで付き合った人は高身長の男らしい人が多かったけど、別に見た目で選んでたわけじゃないしな。
……いや、見た目だけで、か。
「結局大事なのは性格だからね」
それっぽいことを言って、濁してみたがなんだかすごく自分自身に違和感がある。
明らかに胸が高鳴っている。あの男の人は確かに見た目はとてもタイプだけど、そんな人は街を歩いてればいないこともない。
した事がないけど、一目惚れとも感覚的に違う。あまり使いたく無い言葉だけど、これが運命的な出会いってやつなのか?
「咲?ぼーっとしてどうしたの?」
夕凪が顔を覗き込んで心配そうに見つめてくる。
自分らしく無いな。
「いや?何でもないよ。目当てのやつ探しに行こうか」
「え~なんか変じゃない?」
夕凪がしつこくまとわりついてくるのを軽くあしらいながら参考書を借りて図書館を出た。
エントランスで少し振り返って見てみたけどさっきの男の人はもういなかった。
まぁ、こんなもんだよね…
そのまま夕凪とショッピングモールのフードコートに移動して勉強をして帰宅した。
ガチャ
「ただいま」
「おかえりーごはんできてるよ」
いつも通り母親の声がキッチンから返ってくる。
リビングのドアを開けると今日は誰もいなかった。とりあえず一息つける…
昨日事には何も触れずに母親と2人で夕飯を食べた。
今日は早く寝よう…
「先お風呂入るね」
そう母親に言ってお風呂に向かった。
髪を洗いながら鏡で全身を見ると昨日よりは薄くなってはいるがアザがまだ鮮明に残っている。
身体についたアザを見ながら今日図書館で会った人を思い出した。
特に何か話したわけでも無い。あっちはこっちの存在に気付いてもないだろう。
それでも何というか、あの人に会ったのは必然的だと思ってしまう…
運命といえば安く聞こえるけど、それに近いなんとも説明し難い感覚だった。
もし本当に運命の人ならきっとまた会えるでしょ
そして何故かそうなるって確信が持てる。何も根拠は無いけど…
お風呂を出たら父親が帰ってきた音がした。鉢合わせない様に部屋に逃げ込み、どうしても勉強する気にはなれずそのまま布団に入り目を閉じた。
その後、図書館であの人を見かけることも街で見かけることもなく1年が過ぎた。
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