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「聞いてくださいユリア様!私好きな人ができたんですよ!!」

 最高の気分で言う私はどう見ても浮かれていたと思うのよね。
 でも、好きな人が出来たのは事実だから仕方がないと思うの!!

「まあまあ!!ついにエイミーちゃんにも春が来たのね?それでお相手は?どこのご令息なのかしら~!!」
「そ、それが……フィア様のお家に使えている護衛さんなのです」
「はい?今なんて仰ったのかしら?」
「ガーデンパーティーの日に、私を護衛し下さった方なんです!!」

 一瞬ユリア様の目が点になったように見えたけど、きっと気のせいよね?
 私そこまでおかしな事、言ってないはずよ!

「あ、あらそうなの~、一体どんな方なのかしら~?」
「凄く優しくて無口な方で、だから私の話もちゃんと聞いてくれて……それに同じ歳ぐらいで若いのに凄く強いんです!昨日、アストル様という方と戦う姿を見たいんですけど……」
「アストル様ですって!?」

 え?気になるのそっち!!?

「エイミーちゃんは大丈夫だったの?アストル様と言えば、ラミュー侯爵家の子息のことだと思うのだけど、あそこは代々宮廷魔術師の家系だもの物凄く物騒な人が多いのよ~?」

 待って!私そんな危険人物にナイフ突きつけられてたの!?こわっ!!!

「じ、実は危なかったんですけど、それを助けてくださったのがその護衛さんなのです!」
「あらまぁ……おかしいわね?あれ程強いアストル様に勝てるような護衛は、ブレイズ侯爵家にいたかしら~」

 流石ユリア様の情報網は凄いわ。侯爵家なら使用人の名前も全て入っていそうだもの……。
 でも実際に護衛さんが勝っていたところを私は見ているから、もしかしたらユリア様の情報は古いのかもしれないわね。

「きっと最近入った方なのではないです?若かったですし」
「んー、そうかもしれないわねぇ……」
「それにしてもアストル様は普通の護衛じゃ勝てないぐらい強いのですね……」
「噂で聞く限り、一度怒ると家族ぐらいしか止められないなんて言われてるのよ?」

 そんな狂犬を野に放っちゃだめじゃない!!?

「それから、唯一言う事を聞くのはフィーリア様だけだという噂もあるわね~」
「成る程、フィア様は躾役……」

 確かに昨日のあの2人の関係は、ペットと主人のようにも見えた。
 いや、その例えは流石に失礼かもしれないけど。

「そうかもしれないわね~。フィーリア様、人を躾けるの得意そうよね!」
「いや、きっとユリア様には言われたくないですよ!!!?」

 どうみてもユリア様も婚約者様を躾けてるようにしか見えないから、フィア様と同族だもの絶対に。

「そんなことりよも、エイミーちゃんの好きな人の話をもっと聞きたいわ~!」
「ええ!?」
「そういえば顔はどんな方なのかしら?カッコいい?でもエイミーちゃんは、顔で相手を選ぶようには見えないわよね~」

 顔……。
 思い出そうとしても、つるりと顔面を覆い隠すシルバーしかでなこないわよね。

「実は全身鎧のせいで顔まで覆われていて、全く見えてないのですよね……」
「え、見てないの~!!?そんなのありえないわよ!!!」

 そ、そんな!?ユリア様にツッコまれるほど、ありえない事なの!!!?

「エイミーちゃん、それってあとから顔を見ても同じこといえるのかしら~?」
「だ、大丈夫です。もし近衛さんがどんなに不細工でも、酷い顔をしていても受け入れられる自信がありますから!」
「どれほど自信があっても、それは顔を見てから言わないと駄目よ~。だからまずは顔を見せてもらえるほど仲良くなる事から初めて見てはどうかしら?」

 そんなに顔が大事だとは思えないけど、やっぱり駄目な顔とかってあるのかもしれないものね……。
 それにユリア様の言う通り、護衛さんが顔を見せてくれるようになったときには、私との仲も大接近しているかもしれないわよね!?

「そうですね、ではそのための作戦会議を……」
「それも大事だけど、エイミーちゃんは殿下に何と言うつもりなのかしら?」
「あー!あーーー!!殿下の事なんて聞こえない!今は聞きたくないですよ!!!?」

 護衛さんの事を考えるだけで幸せなのに、いつも脳裏では同時に殿下の姿がチラつくのだ。
 私は殿下の事好きじゃないはずだし、言い寄られているだけなのになんでこんなに後ろめたい気持ちになるのかしら?

「エイミーちゃん……まだ何も決めてないのね?駄目よ、ここはキッパリと言わないと」
「そ、そうですよね!ユリア様の言う通りです。私、殿下にガツンと言ってやります!!」
「ええ、その勢いよ。エイミーちゃん!」

 そ、そうよ。
 流石に好きな人が出来たと言えば、殿下だって引いてくれるかもしれないわよね?
 ただ殿下は私を脅して勝負を仕掛けてくるような最低男なんだったわ……ちゃんとすぐに逃げれるように準備をしないと行けないわよね?

「そうだ、ユリア様。殿下が私に変な事をしないか見張って貰うために、隠れて見ていて貰えませんか?」
「あら、そんな楽しそうな場面私が覗き見てもいいのかしら~?でもいきなりエイミーちゃんが殿下にチョメチョメされたらどうしましょう~!!ドキドキしちゃうわ!!」
「いや、何で不安になる言い方するんです!!?襲われる前に助けてくださいよ!!!」
「冗談よ、冗談。安心してエイミーちゃん、殿下が何かしそうになったらすぐに助けてあげるわ。でもその場合、殿下には社会的に死んでもらうかもしれないけど……」

 噂を武器にするユリア様らしい発言に、頼もしいけど少しドン引きしてしまったわ!?
 殿下も何もしてこなければいいけど……。
 そう思い、今日一日中憂鬱に過ごす事になったのです。
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