上 下
25 / 65

殿下の執務室 6(殿下の従者視点)

しおりを挟む

 今日の殿下はとにかく揺れていますけど?
 そう思って暫くぼーっと見てしまったスペリアです。

「で、殿下?一体どうして揺れているんですか?」

 というか、それ貧乏ゆすりですか?

「いや、実は本当は自分を抑えられなくなるような、ビックリなことを聞いてしまってだな……」
「どんな話です?」
「え、エイミーが彼氏を作るためにパーティーに行くと!!!」
「えぇぇええええ!!?で、殿下……だ、大丈夫……な訳がないですよねーー!」

 だからって、さっきよりも激しく揺れるのはやめて下さい!!!
 座ってらっしゃるから、机も一緒に動いてしまって書類とかが落ちまくってるんですけど???

「ああああ~!!!エイミーの前では余裕ぶって、いいよ。なんていってしまったけど心配で仕方がない!!!!」
「気持ちはわかりますけど、ああいうパーティーに言ってもそんな簡単に恋人なんて出来ませんよ」
「本当か?」

 うわっ!急にピタリと止まらないで下さいよ。ビックリして声が出そうになったんですけど……。
 顔には出さないように、柔かに落ち着いて答えてあげましょう。
 恋人歴=年齢の俺ですからね、信憑性は高い筈です。

「もちろんです、パーティーに行ったとしても偶然気の合う相手に出会って、しかもお互いトキメクなんてこと殆どありませんよ!よくて良い人どまりか、友達になれるぐらいですかね」
「さすが、恋人=年齢の言うやつの言葉は信頼できるな!!」

 ぐっ、自分で言うのは良いけど、人から言われたくない言葉です……!!

「だから安心して、エイミーさんを信じて上げてみてはどうですか?」
「いや、良い事を思いついたぞ!!」
「なんで思いついちゃうんだよ!!??」
「ん?」
「いえ、何でもありませんよ」

 あぶないあぶない、口に出していました。
 ただ、こういうときの殿下の閃きは今までも酷いのが多かったはずです。俺に被害が来ないように用心した方が良さそうですね。

「では、俺の閃いた素晴らしい作戦を伝えよう」
「凄く自信満々ですけど、どんなのですか?」

 一応聞くだけならね、それだけなら被害はないはずだ。

「スペリアが変装して、エイミーを見守る」
「いや、無理です!!!変装って、その前に年齢的な意味で無理があるでしょうが!!?」
「え、そうか……?スペリアなら、まだ全然若く見えるって!」
「お言葉は嬉しいですが、流石にバレますよ?だってあのフィア様が主催なんですから、俺の変装なんてすぐにわかっちゃうと思います」

 それ以前に俺はフィア様に会いたくない。
 しかも変装している姿を見られたらなんと言われるか……!!

「よし、わかった!フィアに直談判してくる!!」
「え!?何をいうんですか??場合によってはコテンパンにされますよ!!?」
「いや俺はあの悪魔に変装する許可をもらって、パーティーに参加する!!」
「そうですのー、殿下はパーティーに参加を……なんだか面白そうな話をしていますわね?」
「そうだ、俺はパーティーに……って!!!うわぁ、フィア!!!!」

 突然現れたフィア様は、扉を閉めると、楽しそうに俺たちを無言で見つめ続けた。
 いや、俺は関係ないから俺のことは見ないで下さいよ!!

「よし、ここは単刀直入に言う!!フィア、エイミーが行くパーティーに俺も参加させてくれ!!!」
「駄目ですわ」
「そんな即答しなくても!!!!」
「でも、誰なものは駄目ですわ」
「いや、パーティーのお手伝いでもいいから!」

 いやまって、それは王子が絶対にやっちゃいけないやつだとおもうのですけど!!?

「まったくしつこい男ですわねぇ~。でももしエイミー様が困ったことになった場合、やはり助ける人物は必要ですわよね?」
「え?」
「殿下はパーティーの護衛の一人に紛れて頂けますの?確か剣術は……」
「得意だ」
「でしたわよね。それとその日一日殿下の代わりとしてスペリア様をエスコート役としてお借りしても?」

え?

「スペリアなら大丈夫だ!どうせ僕もそこにいるのだから、コイツもついて来ないといけないからな」
「いやいや、俺の意思は?」
「何言ってるんだ。スペリアは僕の従者なんだから僕に付き添うのは当たり前だろ?」
「スペリア様、殿下の仰る通りですわよ。もう少し自分の立場をお考えになったなら?」

 そうニマニマ微笑むフィア様を見て、俺はしてやられた事に気がついた。
 これは、俺にエスコートしてもらうための大掛かりな罠だったのか……!?

「そうですわ、せっかくだもの二人とも一度我が家で変装するための衣装合わせをしましょう!」

 ニッコリと微笑むフィア様に俺は嫌な予感しかしない……。

「いや、俺は変装ではなくそのままですよね?服は自分のから……」
「駄目ですわ!!スペリア様、ワタクシの横に並ぶのでしてよ?だからワタクシがしっかりと選んで差し上げますわ」
「なんだか面白そうだから、スペリアと一緒に行くぞ!」
「で、殿下!!?」

 くっ、殿下の裏切り者!!
 なんでこういうときだけは、気が合う2人なんだよ!!?

「では、パーティーが楽しみですわね……」
「ああ!!」

 そんな楽しそうな2人を見て、俺は胃が痛くなるのです。
 そしてその後、フィア様の実家である侯爵家で着せ替え人形のごとく、衣装を着せられた事は……もう思い出したくもありません。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】「作品に集中したい」が、そんなに難しい事ですか?

BBやっこ
恋愛
婚約者争いなど、興味がないです。勝手に悪女になってるし。陰険な女、つまらない女。 誰よそれ、私そんなに会話が続いてないわよ。 口撃にさらされる夜の社交なんて、興味がないのに。 お姉ちゃんみたいに上手く渡っていけない。 そんな思いを抱えて、衝動的に逃げた先。気持ちが発露した私は…。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

処理中です...