上 下
9 / 65

エイミー自分でピンチになる1

しおりを挟む

 今日こそ、嫌われてみせるわ!! 
 そう意気込んでいる私は今、殿下と学園の敷地内にある湖を歩いているのよ。

「エイミーが湖散策に誘ってくるなんて思わなかったよ、嬉しいなぁ~」

 いかにもすぎて怪しかったかしら?
 でもこの時間じゃないと、人いない時間がなかったんだもの仕方ないわよね!!

「わ、私だってたまには誘ってみることもありますよ、ほほほ……」
「え?エイミーは僕の事が好きになったんだね!」
「断じてありえません!!!」

 く、くそう……殿下のポジティブさに、私の心が先に折れそうよ!
 でも今回は殿下の勢いに飲まれないわよ、その為の作戦はもう考えてきてあるもの。
 その名も、引いてダメなら押してみろ作戦!!
 
 前のユリア様の案は階段から落とすだからダメだったのよ。
 そうよ、殿下をさりげなく湖に落とす!これが今回の作戦よ!!
 そして私といると殿下には不幸が起きるからと、一緒にいることはできなくなり私は自由の身になるの!!
 ふふ、完璧な作戦だわ……。


「エイミー、湖がキラキラしてて綺麗だね」
「え、ええ。そうですね……」

 確かによく見ていなかったけれど、丁度この時間帯は夕焼けが水面に反射してオレンジ色と湖の青が綺麗に混じって見えるのね……しらなかったわ。

「でも、湖よりもエイミーのがもっと綺麗だよ」
「は?」

 突然言われたせいで素で返してしまったわ!
 い、いえ、これでいいのよ!殿下に少しでも期待をさせたら負けなんだから!

「あ、あれ?おかしいな……ここで赤くなるエイミーが見れるはずだったのに?」
「残念でしたね、殿下に言われても嬉しくありません!」
「な、何で!?僕はこれでも本気で言っているんだよ?今のエイミーは水面が反射してキラキラととても美しくて、少し儚さが見え隠れしてて……そんな中に可愛さも秘めている。そんな完璧なエイミーが僕は好きだ」

 はあぁあああぁあああーーーーーーー!!!?
 もう、それ以上は恥ずかしいからやめて!!!
 しかもなんかちゃっかり告白してきてるし!

「そ、そんなこと言われても私は1ミリもなびきませんから……」
「そんなぁ~!!!」

 ここは我慢よエイミー!!
 とにかくこれ以上変な事を喋らせる前に、殿下を湖に落とさないと!

「で、殿下!」
「なんだい、エイミー?」
「その、肩にご、ゴミが付いてますので取って差し上げますね?」
「え!?エイミーが取ってくれるのかい?嬉しいなぁ……じゃあじっとしているからゆっくり取ってくれていいからね?」

 ここまではよし!
 あとは、事故を装って殿下を湖に落とせば……!

「あっ、すみません手がすべっ……え?」

 ちょっ!!なんで後一歩のところで足を滑らせてるのよ私!!
 しかもこのままいくと、私……湖に一直線なんですけどーーーーーー!!!

「エイミー!!!!」

 殿下の声がして、ザバンっと私が湖に落ちた音だけはわかったけど……。

 私!泳げないのよーー!!!
 いやぁああああ!!!!!

 一生懸命手足をバタつかせて見たけどダメだわ……沈んでいくだけなんですけど!!
 誰か、助けて!

 ーーー 助けて、私の王子様!!

 も、もうだめ……。
 ふふ、最後は自業自得で死ぬのねエイミー。
 薄れゆく意識の中で誰かが私の手を掴んで引き寄せたのが見えた気がしたわ。

 あなたは、私の王子様……?

 そう思ったところで私の記憶は途絶えた。
 そして次に目を覚ましたら私は保健室にいて……ぼんやりする頭で先程の事を思い出してみる。

 私は、さっき溺れて……はっ!!で、殿下!?
 まさか、助けてくれたのは殿下?
 あそこには私と殿下しかあのときいなかったのよ、それ以外あり得ないじゃない。
 じゃあ私の王子様は……。
 ううん。やっぱり王子様なんていなかったのね!

「エイミー、起きたのかい?」
「あ、殿下すみませんご迷惑をおかけしました」
「いや、エイミーを守るのが僕の生きがいだから、それはいいんだ。でもエイミーが落ちる前に僕は助ける事ができなくて……すまなかった」
「いや、殿下は謝らないで下さい!!」

 本当は殿下を落とそうとしていた悪女は私です!なんて言えるわけないじゃない!
 あぁ、胸がチクチクするわよ!!!

 それにしても殿下ったら、こんなにビショビショに濡れてまでわたしを助けて下さったのね。
 ちゃんと、お礼を言わないといけないわよね。

「殿下、助けて頂いて本当に有難うございます。今度何かお礼をしたいのですが?」
「ど、どうしたんだいエイミー!まさか……!ついに大天使になってしまったのかい!!」
「何でよ!?発想がおかしいわよ!!!!」

 真面目にお返ししようとしただけなのに、もう何でこうなるのよ!!!


 その後、とりあえず殿下と一日デートすると言う事で、何とかお礼を遂行することができそうなのは良かったけど……。

 1日デートってどうするのよ!!?
 いえ、まだデートまで日にちはあるから大丈夫!
 それまでに対策を取るのよ、エイミー!

 よし、負けるなエイミー!頑張れエイミー!

 そう思い私は濡れたまま急いで家に帰ったのでした。
 もちろんその後、風邪をひいたのは言うまでもありませんね。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

処理中です...