毎秒告白したい溺愛王子と、悪女になりたくないエイミーの激おこツッコミ劇場

ゆきぶた

文字の大きさ
上 下
1 / 65

今日もまた彼は来る1

しおりを挟む

「君の事が好きなんだーーーーー!!!」

 その日、私は学園に着いて馬車から降りようとしていたのに、目の前にいるその人を見て……。
 また馬車の中に戻ることにしたの。

「えぇ!!?な、なんでだい?エイミーー!!」

 なんでと言いたいのは私です、殿下!!!
 なんでこんな目立つ場所で、堂々と愛の告白をするんですか!?
 私、あなたの婚約者でもなんでもない、ただの伯爵令嬢なんですけど!!!!?

 私、エイミー・ミューシアスは静かに激怒した。

 毎日、毎日毎日毎日!
 この貴族が通う、ノーランヒルセン学園に入学したその日から、この国の第一王子クレス・グレフィアス王太子殿下は何故か私に告白してくるんですけど!?

 王子様からの告白なんて夢のよう。

 ……なんて言えるのは、5歳児までよ。
 現実に考えれば、王子に好かれて良いことなんて何一つもない!

 王子から好かれていると知れ渡ったが最後、周りから避けられて女子からいじめられるのは当たり前。そして私は一生悪女として生きる事になるのだわ!
 だから私はバレないように、コッソリ学校生活をしてきたはずなのに……あろうことか、殿下自身がこんな大勢が見守る中で大告白するなんて!!?
 きっと外では、あの馬車に乗っている令嬢は誰かしら?なんて、すでに犯人探しが始まってるに違いないもの……。

 もう、恐ろしくて馬車から出ることもできないわ!誰か助けて!!
 こんな危機に助けてくれる王子様は現れないかしら……いえその前に私を追い詰めてるのが王子様だったわ!?


「えっと、エイミー。出てきてくれないから、僕の方からきちゃった!」

 ででででーーーー殿下!!!!?
 きちゃった、じゃなーーーい!!!

 私が悩み事をしている間に、殿下が馬車に乗り込んでくるなんてなんて信じられない!?心臓が飛び出るところだった、危なかったわ……。
 だけどエイミー落ち着くのよ、相手のペースに飲まれたらそこで試合終了なのよ。

「殿下、婚約者でもない女性の馬車に相乗りするなんて、殿方としてどうかと思います。どうか、馬車から出てください!!」
「えー、せっかくエイミーと二人きりになれたのに!」

 そう言いながら、私の手を握りしめないで!!
 こっちは二人きりにならないように、最近は気をつけていたのよ!

「まさか、殿下……私と二人きりになる為にあのような場所で告白を……?」
「え?ただ、エイミーの顔を見たら口から出てしまっただけだよ?」

 このバカ王子!!身分ってものがわかって言ってるのかしら!
 あなたはこの国の王になる人で、私はただの伯爵令嬢なのよ?
 はっ、危ない危ない、口に出すところだったわ。

「エイミーの顔を見ると、この感情をどうしても抑えられないんだ」

 そう切なげに言われても困るわよ。
 確かに殿下は金髪碧眼で、どこからどう見ても御伽噺に出てくる王子様そのものよ。
 顔だって鼻筋がしっかり通っていて、優しそうな瞳とついでに泣きぼくろまで。
 こんな完璧な人間に告白されたら落ちない人間はいないわよね。

「エイミー、僕は君の事が好きなんだ」

 でもね、殿下。

「あなた、婚約者いるじゃないですか!そんな不誠実な人、私は嫌だといつも言っているではないですか!!」

 婚約者がいる人はお断りなのですよ?

「いや、フィアとは親が決めた婚約者なだけで、そんな関係じゃ!」
「何回言ったらわかるんですか!例え婚約者様とそんな関係じゃなくても、周りから見たら私はただの泥棒猫に見えるわけですよ!!殿下は私を悪女にしたてあげたいのですか!?」
「えぇっ?エイミーは泥棒猫じゃなくて、可愛い三毛猫だよ!」
「もう!殿下のアホー!!!」

 こんなアホアホ殿下に構っていられないわ!
 そろそろ周りがざわざわし始めているし、いつまでもここにいたら邪魔だもの。
 どうにか、この馬車から脱出する方法はないかしら……?


「エイミーここから抜け出すいい方法があるよ!」
「全て殿下のせいなので、自慢げに言わないでもらえますか?」

 ニコニコしているこの殿下は、私が怒ってるってわかっているのかしら?
 しかも、謎の袋から何かを取り出しているようだけど……変なもの出てこないわよね。

「ジャーン!はい、これはエイミーの分ね!さあ、被って被って」

 何かしらこれ?って、ででで、殿下!?
 なんで馬の被り物してるの!!?

「どうだいエイミー、似合ってるかな?」
「似合ってるも何も、馬じゃないですか!!まさか、私のこれも?」
「うん、馬だよ?エイミーに似合うと思って持ち歩いておいてよかった……」

 似合うかもしれないってどういう事!!?
 なんで持ち歩いてるの?

「ツッコミどころが多いですけど、被り物をして抜け出すのはある意味正解かもしれませんね」
「そうだろ!僕をもっと褒めていいよ?」
「いえ、この状況はあなたのせいですから!」
「そ、そうかもしれないけど……エイミー、君が困っているなら僕は全力で助けてあげるから」

 そんな馬の被り物つけて、キリッといわれても……。
 とりあえず、私も被り物をつけましょう。

「殿下、できました」
「やっぱり、凄く似合っているよ!エイミーの可愛いお顔が見えないけど、エイミーの可愛い体がより可愛く見えるね!!」

 この人何言ってんのかよくわからない!!!

「殿下、ふざけてないで行きましょう」
「別にふざけてないけど、まずは僕から降りるからね。……お手をどうぞ、マイレディ」

 私は殿下の手をしぶしぶ取って、とりあえずこの馬車を降りることにしたのよ。
 外では、生徒達が「殿下と一緒にいるのはどなた?」とか「殿下のお相手は一体!?」なんて囃し立てていたので、実際に危ないところだったわ。
 私の馬車には、伯爵家のマークが入っていない事だけが私の救いよ!

 そして私達が飛び出して来たら今度は皆が皆、「馬?」「馬よ!」「馬なの?」なんて違う意味でザワザワし始めたせいで、私は死にたくなりました。


 毎日のようにこんな少しおバカな殿下に、何故か好きだなんて言われて振り回される。
 今のところ最悪な展開は避けているけど、いつ何がおきてもおかしくない。

 これが今の私の日常。

 殿下のことは断固拒否いたしますから!
 早く諦めてください!!

 それが私の今の切実な願いなんです!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

雪の日

凛子
恋愛
大切な人に別れを告げた日、大切な人から告白された。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

処理中です...