やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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おまけ ()内は相手キャラ 主にギャグとイチャイチャ

短編 拐われた話6

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何故か崩落してきた天井は、俺を綺麗に避けて崩れ落ちていた。
そして砂煙が漂う中、目の前に一人の男が立っていた。そのよく知る長身の男に、俺は咄嗟に声をかける。

「ダン?」

それは、俺がずっと助けに来て欲しいと願っていた相手だった。
俺と目を合わせたダンは、いつものようにニカっと笑うと手を差し伸ばして言った。

「イル、助けに来てやったぞ!」
「ダン!!!」

その存在が嬉しくて、俺はダンの方に向かおうとしているのに、媚薬のせいで上手く歩けずにフラフラしてしまう。
それを見かねたのか、ダンが俺を優しく持ち上げてくれたのだ。
ダンの顔が近くなって、嬉しくなった俺は笑顔になってた。

「ダン、助けに来てくれるって信じてたぞ!」

そう言っただけなのに、突然ダンにキスをされて驚いてしまう。

えぇ!?今そのタイミング?
というか、ここステージの真ん中!!?

と、俺は周りを見回してみると未だに粉塵が舞い上がっているため、客が出口に殺到しているのが見えた。
何人かこちらを凝視して驚いている貴族が見えたのは……気づかなかったことにしておこう。

それよりも、ダンにキスされているからだろうか先程から手が熱い。
このままだと手から何か魔法が出る気がする。

「だ、ダン!口を離してくれ……」
「だめだ」

そう言うと、ダンはさらに深く口付けしてきた。
でも俺はそれどころじゃない。

本当に待って!!?
魔力が上手くコントロールできなくて……俺、もう無理ーーーー!!!!!

そう思った瞬間、俺の手から空に向けて白い光が飛び出したのだ。
それは会場全体の天井を丸々の見込み、空高くまで飛んでいく。

─── チュドォオォォオオオン。

音が俺の耳に遅れて聞こえてきたときには、この地下施設の天井がまるまる無くなっていた。
その光景に、誰もが天を仰いだ。

やってしまった……。
三人に地形壊さないようにとか思っときながら、俺がやらかしてどうするんだ!!
いや、これはダンが悪いから……ダンのせいにしよう。

そう思ったときだった。
ダンは突然キスをやめたと思ったら、何事もなかったかのように俺を抱えて地上に飛び出したのだ。
そしてポケットから謎の薬を取り出すと、ゆっくりと炙り始めた。

「えっと、状況が理解できないけど……ダン、それ何?」
「ルーディアにもらった睡眠薬だ。この煙は下に向かって流れるタイプだから、上からやるのは丁度いい」
「な、成る程ー」

流石ルーディア、何でそんなの作ってるの?って言うもの持ってるなんて!

そう言っている間に、上を見上げていた人達がバタバタと倒れていくのがここからでもハッキリと見えていた。
そういえば、ウルとデオル兄上は!?
と、二人を探すとすでに避難を終えておりこちらに向かって走ってきていた。

「イルーー!!!」
「デオル兄上!」

俺達は抱きしめ合うと、そのまま話始めた。

「無事か?変なことされてないか?それよりも、会いたかったよ」
「俺は大丈夫です!それに、俺も会いたかったです!」

デオル兄上に会うのは、俺の誕生日以来だ。
だからとても嬉しくてギューっと抱きしめ続けていた。
そんな幸せな俺の時間を壊す男がいた。

「じゃあ、俺も二人を抱きしめようかな~」

ウルが、勝手に俺達二人をまとめて、抱きしめたのだ。だから俺は抗議する。

「「ウル、離れろ」」

どうもデオル兄上と声が被ってしまい、俺と兄上は顔を見合わせて笑ってしまった。
それなのにウルは、さらに俺達を抱きしめる力を強くした。

「二人とも可愛いねぇ~」
「ウル、イルは可愛いかもしれないけど俺は可愛くないと、いつも言っているだろ!」
「いや、デオル兄上?俺も可愛くはないですけど……?」
「やっぱり二人とも可愛いよ!俺のところに二人ともお嫁さんに、へぶっ!!!」
「ウルっ!!?」

ウルが調子にのって変な事を言おうとした瞬間、ダンがウルを殴り飛ばした。
それを心配してデオル兄上がウルのもとへと駆け寄るのが見えた。

デオル兄上はあんな変態にも優しいなんて……流石兄上だ。

「よし、変態はいなくなったな」
「あぁ。確かにそうだな」

相変わらずダンは豪快だけどな……。

「って、煙はもう終わったのか?」
「ああ、後は煙が晴れたら全員捕縛して終わりだ。だからあとはお前の騎士達にまかせて俺達は帰ろうぜ」
「帰るって王宮に!?」
「だって、お前……昨日で視察最終日だったんだろ?」

確かに、昨日で全部の視察は終わった。
だからこそ俺はハメを外してしまったのだけど……。

「お前の騎士達にはすでに直帰すると伝えてあるから、安心しろ。それにお前……まだ媚薬の効果抜けきってないだろ?」
「あー、はい。仰る通りです……」


こうして、俺の誘拐事件?は幕を閉じた。
あそこにいた貴族や商人達はもちろん捕まり、尋問を受ける事になるだろう。
それによっては、色々剥奪されるかもしれないけどそれは俺には関係ないことだ。

そして今回の件で闇オークションが見つかったのはよかったけど、俺が拐われた理由は誰にも話せなかった。

だって、バレン兄上の挿絵に余りにも似てるから拐われたなんて、恥ずかしくて誰にも言えないよ!!
これも全部バレン兄上のせいだ!!!!


そして、俺達は王宮に戻ってきた。
それなのに、ダンは俺に言うのだ。

「イル、今すぐにライムのところに行け」
「え?まだ神殿の日じゃ……」
「この国を破壊されたくなかったらすぐに行くんだ。いいな」
「は、はい」

そして俺は今、ライムの神殿の前に立っていたのだった。













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あと1話ありますがオマケみたい話ですので、ギャグだと思ってみて下さい!!

あとまた別でおまけもあげますのでよろしくお願いしますね~!
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