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おまけ ()内は相手キャラ 主にギャグとイチャイチャ
短編 拐われた話4
しおりを挟むオークションがついに始まった。
俺がオークションに出された瞬間に作戦開始のため、とにかく今は大人しくするしかないのだ。
そして今俺がいる場所には沢山の美術品と、俺と同じように拐われたのだろう人が何人か一緒に座っていた。
しかしその人達を何度見回しても、何故か俺以外は全員子供しかいない。
もしかして、俺子供と間違われてないよな?
確かに実年齢より若く見られがちだけど、俺今18歳でこの国では成人しているうえに、王様なんですけど!?
いや、今はそれを気にしても仕方がない。
俺はコソッとまたダンに通信を入れることにした。
『ダン、まだ聞こえているか?』
『ああ、聞こえているぜ?どうした?』
『オークションが始まった』
『成る程、さっきまで人の気配がしていたが、今は全くねぇのはそのせいか……』
ダンはまだ外にいるみたいだな。
でもその様子だといつでも突入はできそうな感じでホッとする。
『ウルと、デオル兄上は?』
『あー、二人は変装して会場に入っていったぞ』
『何ではいれるの!?』
『なんか、ウルの知り合いの貴族がいたみたいで脅したとか、なんとか……』
ウルなら簡単にやりそうなのが目に浮かぶ……。
あいつのことだし、会場をいきなり壊したりはしないだろう。
『とにかくこちらの準備は万全だ。あとは、イルが変なことされなければ良いが……』
『なんで変なことされる前提なんだよ!!』
『どうもウルに聞いたところ、性奴隷も売り捌いているらしいからな、イルなら高値がつくはずだ』
『いやいや、俺にそんな価値ないから!!性奴隷とかやめてくれ!!』
でもよく考えたら、日々誰かとやってるのは変わらないなとか思ってしまい、顔が赤くなる。
『大丈夫。イルは絶対に俺が救い出すからな』
『ダン……』
感激する俺をよそに足音が近づいて来ていた。
ついに俺の番が来たのかと、気合をいれようとした。
それなのに、かけられた言葉は思ったものと違っていた。
「おい、そこのお前。お前は着てもらう服があるからな、こっちに来い!」
え、なんで服?
なんて思っている間に俺は、ぐるぐる巻きのまま持ち運ばれていた。
そして少し狭い部屋に連れ出された俺は、紐を解かれると白い服を投げられたのだ。
「これを着ろ」
俺が着替え終わるまでそこにいるつもりなのか、男はじっとその場から動く気配は全くなかった。
あまり不審に思われてもいけないと思った俺は、とにかくその服に袖を通すことした。
そして着てみて思ったことがある。
これ俺が呪いで寝込んでたときに来てた寝巻きと同じじゃね!?
なんでこんなそっくりな服が……。
「おお、その服を着るとさらに似ているな!」
そういえば、ここに来てからずっと何かに似ていると言われていた……。そしてこの服。
その二つに若干引っかかる物があったけど、とにかく今は気にしないでおこう。
「そういえば媚薬飲ませたのに、あんまり効いてないみてぇだな……もう少し強いのもってくるか」
え?さらに強いのあるの??
でも、飲まされてもこれの少し強いぐらいだろうし、きっと大丈夫大丈夫!
そんな気軽に思った俺はだいぶ馬鹿だと思う。
「これを飲め……」
と、言われて飲んだ媚薬はかなり強かった。
これはヤバイ、少し中和できないかも……。
体が少し熱くなってきたため、俺は少し焦りだす。
そんな俺に、ダンからの通信が入った。
『イル、何かあったのか?』
『いや、大丈夫……それよりも、もうすぐ俺が出る番だと思うから……ってあれ?ダン?ダン!』
突然ダンとの通信が切れてしまった。
何度呼びかけてもダンには繋がらない。
このままだとダンはすぐにでも突入するかもしれないな……まあ、もうオークションは始まってるからそれでもいいけど……。
「おい、次はお前の番だぞ」
どうやら良いタイミングで俺の番が来たみたいだ。
そして男は俺の姿を見て、ニヤリといやな笑みを浮かべた。
「おお、良い感じに媚薬が効いてて色っぽくなってるな……これならイケる、イケるぞ!!」
何がいけるのかわからないけど、変なことされる前に早く終わらせることにしよう。
そして俺は少しフラつく足取りで、オークション会場に向かっていた。
あー、これ少しヤバイか?
なんて思いながら前に進む。
「お前はとりあえずあそこの真ん中で突っ立っていれば良い。あとは他の人がしてくれるからな」
何を!?と聞きたいけどとりあえず俺はステージっぽいところの真ん中まで歩いて行く。
そして立ち止まると、司会者が声を上げるのがわかった。
「皆さまお待たせいたしました、次の商品はこちらです!!」
その声に合わせて俺に照明があたる。
俺を見た客がザワザワと騒いだのがわかった。
ついでに灯りがついたので、そこから俺も客席を見回す。
……あぁ、知ってる顔がチラホラ。
しかもあちら様も俺を見て驚いているところを見ると、バレてるな。
ふふふ、今から逃げようとしている奴らもいるけど、ここから逃げられると思うなよ!
そしてウルとデオル兄上は……いたけど、あの二人何してんだ?
なんかデオル兄上の顔が赤い気がするし、絶対ウルが何かしてる!しかもこっち見てウィンクしてるし、ウルのやつめ……許さんってあれ……?
そう憤慨しようとした俺は、媚薬の効果でふらついてしまった。
そんな俺の紹介を司会者は始めたのだった。
「こちら、今この国で大流行している小説『この絵を弟に捧ぐ』に出てくる弟の挿絵に余りにも似ている美少年がここに登場です!!」
は?それって、バレン兄上が書いてる本の名前じゃん!!!?
似てるんじゃなくて俺そのものだよ!!!
余りに流行し過ぎてそっくりさんなだけで価値があるとか、そんなことある????
そうツッコミを入れたときだった。
─── ズドォォオオォォオオオオ!!!!!!
「な、なんの音だ!?」
突然の爆発音とともに、俺の真上の天井が突然崩落したのだった。
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