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第六章 解呪編
ライム視点④
しおりを挟むチャラ男を見つけるのに数日かかってしまった私は、焦ってことの次第を話したのです。
「え?近々竜の大軍がこの王都に攻めてくるって?」
この男は有難いことに、私の話を特に疑うことなく最後まで聞いてくれました。
「なるほど、大規模討伐はそのためだったんだね」
「私の話を信じるのですか?それもいつおきるかわからないというのに……」
「もっちろんだよ!俺は闘争本能に生きてるところもあるからね。強い敵と戦えるのは大好物なんだ」
流石進化種は少し頭のネジが飛んでいるようです。
「じゃあ、ここのことは俺に任せてよ。それで悪いんだけど、もし竜が攻めてきたら俺の代わりにイルを助けにいってあげてね」
「勿論です。ですがそのために、私はどうしたらいいのでしょう?」
「あー、ことが起きたときにイルの近くにいたら逆に何も出来ないと思うから、えーっと、錬金術師のルーディア?だったかな、そいつのところにいるのがいいんじゃない?」
それに私は首を傾げました。
主の危険ならば、側にいるべきではないのでしょうか?
「今はわからないとおもうけどね、ときがくればわかると思うよ!それにイルの手にあった魔法陣は通信用の魔法陣だったから、もしかすると何か役に立つかもしれないしね!」
「まあ確かに錬金術師の男は役に立ちそうですし、何か知っていそうでしたのでさっそく聞きに言ってみます」
そう言うと、私はすぐに錬金術師の元を訪ねることにしたのです。
そして目の前には突然の訪問と、私が以前と違う姿であることに驚いた錬金術師がいました。
しかし今はそれどころではなかったので、私はルーディアに詳しい話を聞き出したのです。
そして私は納得していました。
「成る程、そのときがくれば主は別空間へと連れ出されてしまう訳ですね……」
「もし、イルがそこから出られなくなったときは、私もライムさんに全てを託します。私ではその空間に行く方法がありませんから。でも補佐するための魔法陣なら任せて下さい!」
私は従魔なので、主は私を召喚する事がでます。
でもそれは、主が魔力を取り戻せたときだけです。
だから、私は主の呪いが解けるのをひたすら待つ必要がありました。
それからというもの、錬金術師は数日かけて魔法陣を部屋に作成してくれたのです。
そしてそれが出来あがった頃、それは起きました。
突然、今まで晴天だった外が真っ暗になったのです。
それは、雲によって太陽が隠れたからではありませんでした。
「空を竜が覆い隠してる……?」
窓の外を見る錬金術師の呟きに、私はハッとしたのです。
「竜の封印が解けたのですか?」
「可能性がありますね!もしかするとイルの呪いも解けているかもしれません。今からイルへ回線を開きます。繋がらなくても怒らないで下さいね!」
そう言って私達は主への通信が繋がる事を祈りました。
そして1時間が経とうとしたそのとき、突然回線が開いたのです。
『ルーディア!?』
主の顔が見えた途端、私は少しホッとしていました。
しかしそこにいた人物を見て私は驚きました。
そんな私と同様に驚いた錬金術師は、信じられないと声を上げました。
「そこにいるのは、まさか……ダンですか?」
『お初お目にかかるな。俺の名前はダランティリア、そしてブルーパールドラゴンの成れの果てだ』
では、ダンと言う男はブルーパールドラゴンの一部だっということでしょうか?
ではあの声はやはりブルーパールドラゴンだったのですね。
でも、何故私にその声が聞こえたと言うのでしょうか?
そう思いつつ、錬金術師と位置を変わった事で私は主の顔をしっかり見る事ができたのです。
『……ライム?なんでそこに??』
スライムではなく、この姿の私をしっかりと見てくださる主の姿に、感動を覚えてしまいました。
とりあえず、主の疑問に答えた私はその奥にいると思われる男に、冷たい声を出したのです。
「主を最後まで苦しめていたのが、あのくそ男だったのは驚きですね。やはり私の目に狂いはありませんでした」
『おう言ってくれるじゃないか、だかなライムでも俺の邪魔はできねぇよ。それと、この通信は閉じさせて貰うからな!』
邪魔を出来ないとは、どういう事なのでしょうか?
そう疑問を考える時間もなくダンは通信を強制的に切ろうとしました。
それを、錬金術師が魔法陣に干渉して食い止めようと頑張っていたのです。
ですから私は主に向けて叫びました。
「主!私はあなたの従魔です!!それはつまり、あなたがどこにいても私を呼び出すことが出来ると言う事です。今までは主に魔力がなかったために出来ませんでしたが、今のあなたなら指輪の力で私を召喚出来るはずです!!」
「あぁ!!回線が切れてしまいました……」
錬金術師の嘆き声に、私は目を見開きました。
主がどこまで聞いていたかわからないなんて……。
「最後までイルに伝わったのかわかりませんが、きっとイルなら気がついてくれるはずです。さあ、次は召喚に備えましょう」
「あの、一つお願いがあるのです。魔力を少しわけて頂けませんか?」
もし召喚されてあの男に太刀打ち出来なかった場合、私は進化する事を選ぶでしょう。
そのためには、備えがすぐに必要だったのです。
「何か理由があるのですね?でしたらいいですよ。召喚されるギリギリまで私の魔力を持っていって下さい」
そう言うと、この錬金術師は私の手を握りゆっくりと魔力を流し始めたのです。
数分そうしていると、突然私の体が光始めました。
「ライム、さん。イルのこと……お願いします」
息も絶え絶えにそう呟いた錬金術師の声を最後に、私は真っ白な世界へと呼び出されたのです。
そして主とついに再会した私は、そこで知りたくない事実を知ってしまいまったのです。
私がブルーパールドラゴンから生まれた存在であると……。
今までずっと何故ブルーパールドラゴンの声が聞こえていたのか、それも全て理解できてしまったのです。
むしろ何故その可能性を今まで排除していたのか……私はそれ程、その存在に嫌悪していたのかもしれません。
そして私は今まさに、ブルーパールドラゴンであるダランティリアに体ごと吸収されそうになっていました。
でも私はそんな簡単に諦めるつもりなどなかったのです。
何故なら今までそのために頑張ってきたのですから。
ただもし、主との記憶が無くなってしまったら嫌ですと少し思っている自分がいました。
でも主を救えるのなら、私は命だって惜しくないのです。
だってあの日、私はあなたに命を救っていただいたのですから。
この命は、あなたのために使いたいのです。
─── イルレイン様。
何よりも、誰よりもあなたが大好きで愛していました。
あなたの何もかもが欲しくて、あなたに全てを捧げたかったのです。
その想いごと、私は強い光の中に溶け込みました。
しかし光の中で再び会った光の塊に、私の気持ちが誰にも負けない事を、何故か熱弁していたのです。
私はこの想いだけは失いたくなかったので仕方がありません。
それに世界の理をひっくり返しても、私があなたを救いたかったのです。
だから私が何をしても許してくださいね、愛しのイルレイン様。
─────────────────────
これでライム視点は終了です。
どうしてもライムが何故姿を現さなかったのか、書きたかったのです。
多分無くても話はわかりますが、読んで頂いた方ありがとうございます。
次からはイル視点に戻りますのでよろしくお願いします。
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