やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第六章 解呪編

ライム視点①

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ここでライムの、過去から今までの話を4話挟みます。これは1日で上げ切りますので、安心して続きを読んでください。
前回同様大変読みづらく、多分飛ばして頂いても大丈夫ですが後半でライムが裏で何をしていたか書いてあるので、知りたい方は是非。



─────────────────────



side ライム














『目覚めよ。我が眷属よ』

そう誰かに呼ばれだと思ったときには、すでに私はそこにいました。
自分がスライムであることは分かりましたが、何故突然知識がついたのか全く分かりませんでした。

ですから、仕方がなく私は沢山のものを見て回る事にしたのです。
何度か人間や魔物に襲われることはありましたが、私には撃退する知識が備わっていたのです。


そんななか、変わった人間に出会うこともありました。
それは旅の錬金術師でした。

「知識を蓄えるスライムですか……実に面白いですね。是非とも私の知識を後世に残して頂けませんか?」

そう言って男は私に知識をひたすら与えてくれました。
そのせいで私の喋り方はその男に似たような気がします。


しかし、男が死んでからその知識を役立てることはありませんでした。
何故なら私と対話をしようとする人間がそれ以降現れなかったからです。

そして百年ぐらいの月日が流れたある日、また声が聞こえたのです。

『運命の子に会いに行くがよい』

何故それが聞こえてくるのか、何故私が指示されなくてはならないのか、私はその声に嫌悪するようになり、その指示を無視するようになりました。
しかしその声は年々しつこく私の耳に語りかけてくるようになり、私はついに自棄になってしまったのです。


ああ、もう嫌です。
何故私が生み出されたのか?全てはこの声のせいだと言うのでしょうか?
それならば、いっそ死んでしまった方がいい。


そう思っていた頃、私はついに『運命の相手』に出会ったのです。


実はその人に会う数日前から、人間が私によく会いにくるようになったと感じていました。
話を聞くところによると、会話ができるスライムがいるという噂を聞きつけた冒険者が、私を見に来ているようでした。

ただでさえ声が煩くてウンザリしていたというのに、冒険者達はただ知識を求めるだけで、自分のことしか考えていない最低な輩ばかりでした。
そのせいか所詮冒険者は荒くれ者の集まりだ。と、言っていたあの男の事を少し思い出してしまったのです。

男が死んだときに私も死ねば良かった。
そう思った私は、もうこの日々が続くのならば死のう。と、すぐに行動にでたのです。


私は細長い枝を持ち自分の核に向けて突き刺そうとしました。

そのとき───。

「ちょっと待ったー!!!!」

そう言って私に突っ込んで来た黒い何かは、私を抱えたまま地面に転がりました。
一緒に横たわった黒い何かは、よく見るとそれは黒いローブを着た少年でした。

少年は「いてて……」と体をおこし、私をじっと見つめました。
そしてホッと息をつくと、ニッコリと微笑んだのです。

「ダン、見てみろ!凄い綺麗なライム色だ!!きっとこれが噂のスライムで間違いないよな?」

フードの隙間から見える金色の髪と瞳をもつ少年は、こちらをキラキラした瞳で見ていました。
その後ろには大きい男がいつのまにか立っていましたが、私はその少年に釘付けだったのです。

そして、すぐに私は理解しました。
これは声が言っていた『運命の子』じゃない。
私の『運命の相手』だと───。
きっと今まで生きてきたのは、彼に出会うためだったのだと。

「えっと、俺の名前はセイ。君はインテリスライムなんだよね?」
「インテリスライム?」

私が生きてきた中でそんな呼ばれ方をした事はありませんでした。
もしかするとそれは、最近出来た名前だったのかもしれません。

「君のような喋るスライムの事をインテリスライムって言うんだって」

そう話始めた少年は、インテリスライムは人になる者も多いと教えてくれたのです。
そして話し終えた彼は、コソッと私に言いました。

「もし、さっきのが本気で死ぬつもりだったのなら、俺の所に来ないか?今の俺には協力者が必要なんだ。でも人間になる事を強要はしないから安心しろ」

先程まであれほど死んでもいいと思っていたのに、彼に出会ってしまった私はもう死ぬなんて考えられなくなっていました。
彼のために生きていきたい。

そう思った私は、すぐに人型になることを決めたのです。
そして人になった瞬間、彼の隣にいる男の存在に気がつきました。


「人になるのって、参考になる相手がいないとダメだったんだな……」
「おい、セイ。これじゃあ、このスライムは俺とお前の息子みたいな感じになっちまってるじゃねぇか」
「ダン、このスライムに向かって息子っていうな!!」

その男の声を聞いた瞬間、あの私に直接語りかけてくる声を思い出したのです。
二つの声は余りにも似ていました。
そのため、私はそれ以降ダンという男を思い出すだけで、嫌悪感を感じるようになってしまったのです。

あの男には何かがある。
彼を守るためにもしっかり見守っていかなくてはいけないと、そのとき私は誓いました。
そして、彼は私に名前を与えてくれたのです。

「スライムのままじゃ、名前が呼びにくいな。うーん。そうだ人型になっても君の髪と瞳の色は綺麗なライム色のままなんだ。なら、名前もライムにしよう!」
「ライム……ですか?」
「気に入らなかったか?」

スライムのライムでも十分ややこしいと思ったのですが、彼のキラキラした瞳に否と言えるわけもなく、私は「気に入りました」と頷いてしまったのです。

こうして名をもらった私は、そのまま彼の住む場所へ向かう事になったのでした。


そしてこの日から、あの声は聞こえなくなったのです。
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