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エピローグ

60、神殿

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ダンの体力に付き合わされ、疲れ果てた俺が次に目を覚ましたとき、外は夕暮れになっていた。
そして目を開けた俺は、こちらをじっと見ているダンと目があってしまった。

「なんだ、目を覚ましたのであるか?」
「あれ?今はブルーなのか……?」

実はダンの中にはブルーパールドラゴンの意識もまだ存在している。名前が長いので最近ではブルーと呼んでいた。
そしてたまにダンが動けなくなったときや、ブルーに変わってあげたいと思ったときに、いきなり出てくることがあって驚いたりする。

とくにヤってるときとか……。
一人なのに二人を相手にしている気分になるからな。

「あやつは、少し休憩すると言った。だから余がかわりにイルをじっくり見させてもらったのである。それに余とも今度してくれるであろう?」
「あ、ああ……」

ダンの顔でそんな無邪気に言われたら、断れない俺がいた。

「そういえば、イルの兄上が先ほど呼んでおったのだが……」
「はい、まだここにいますよ。イルレイン陛下、おはようございます。今日は王宮の神殿に向かう日ですからお迎えに参りました。できればその前にルーディアの所に行きましょう」

突然出てきた兄上に連れられて、俺はルーディアの所に急ぐ。
ルーディアはあのときの功績を認められて、王宮直属の錬金術師となっていた。
そしてシル兄上はその頭脳から、現在は宰相の地位についている。


そんなシル兄上は俺が竜人になった日、俺を見て言ったのだ。

「本当ならばイルを誰かに渡したくは無かったのですが、イルが竜人になってしまったのなら話は別です。私達兄弟はあなたに追いつける人間になるまで、一歩引いた距離を取らせて頂きます」

それは仕方のない事だった。
俺は上位種へと進化してしまった。それはつまり、兄上達よりも長生きをするということ……兄上達の死をいつか必ず見届けなくてはならないのだ。

だけど俺の兄上達はめげない人ばかりだった。

ギル兄上はあれから徐々に元気になり、今は一家で王都を離れて進化の道を探っているそうだ。もちろんガイも一緒に頑張っているようである。
そしてバレン兄上は相変わらず芸術を極めている。この分野で進化の道を探すのだとか……。

そしてあの本について確認したら、「え?イルの事を本当に愛してるからに決まってるよ!!」と、そのままの答えがきてしまい、俺は数歩後ろに下がったのだった。


そんな事を思い出している間に、ルーディアの部屋までたどり着いていた。

「私はここにおりますので、お一人でどうぞ……」

と、シル兄上に言われてしまい、俺は緊張しながらその扉をノックした。

「はい、どうぞ~」

俺がゆっくり扉を開けると、そこには前より少し髪が伸びたルーディアがいた。

「イル、なんだか久しぶりですね。なのでいつもよりイルが綺麗に見えてしまいます。あ、でもそれは今から神殿に行くからなのでしょうか?」
「俺は綺麗なんかじゃない。ルーディアは俺にフィルターをかけ過ぎだ」
「そんなことありません。私にはあなたが一番に見えるのですから。っと、急がないといけませんでしたね」

ルーディアはそう言うと、机の上から瓶を出して俺に渡してきた。

「今日のために使ってください。これは新しく開発した精力剤です!」
「あ、あぁ……ありがとう。天才錬金術師連れて来て頼むものがこれなんて……」
「何を言っているのですか!この頑張りがこの国を守ってくれているのですから……少し悔しいですけど、いつか私の前で乱れるイルの事を考えて作っているので大丈夫です!」
「俺が大丈夫じゃない!!」

何で俺の周りの人達はこんなに精力的な人しかいないの?
もしかして、今までは呪いのせいで皆遠慮してただけとかそういう事なの!?
脳内を疑問符が飛び交ったが、ルーディアの言葉で俺は少し冷静になった。

「もし僕が進化をしたとき、その精力剤を使う事を許してくれますか?」

首を傾げて俺を見るその瞳に、何も言い返せなくなり頷いてしまう。
そんな俺の手をルーディアはそっと持ち上げた。

「ふふ、では約束ですよ。それにしてもイルは相変わらず優しいというか、隙が多いというか……」

そして俺の左手にキスを落とした。
そこはかつてルーディアの魔法陣があった場所であり、今そこにはなにもない。

「これはただの誓いです。でも、もし僕が進化したときはイルの事をいっぱい可愛がってあげますからね。それにこの約束だけで僕のやる気はとても上がりますから!」
「ああ、俺はちゃんと約束を守るから頑張ってくれよ」

ルーディアがそれでやる気を出してくれるなら、俺は何だって許してやる。
だって悩んでる間に、ルーディアに置いてかれるなんて嫌だからな……。

扉に向かう俺の後ろ姿に、ルーディアが「はい!」と元気に言ったのを聞いて、俺はその部屋を後にした。



神殿の入り口に着いた俺は、緊張を解すために深呼吸をしていた。
そんな俺を見てシル兄上が口を開く。

「では、イルレイン陛下。準備はよろしいですか?」
「ま、まって……ルーディアに貰ったこれを飲むので」

この精力剤は即効性ではないので、俺は事前に飲んでおくことにした。
1週間ぶりに会えるとはいえ、どれほど滅茶苦茶にされるかわからないのだ。
だから毎回ここをくぐるたびに、俺は緊張で震えそうになる。

「よし。シル兄上、行ってきます」
「ええ、無理をなさらないようお願いしますね」

正直それは俺ではなくて相手に言って欲しい。
そう思い、俺は神殿に足を踏み入れたのだった。


そして今俺は神殿の奥へとただ一人歩いていた。
その神殿はこじんまりとしていて、新しくできたばかりだというのがすぐにわかる。

そしてある場所を境目にして、世界が緑色に染まった。
するとその奥では、俺を待ち望んでいる人物が立っていた。

その相手を見つけた俺は、咄嗟に走り出す。

「ライム!!!」

見据える先には、人の姿をしているライムがいた。

「イルレイン様!お待ちしておりました!!」

1週間ぶりの再会に俺達は抱きしめあったのだった。


何故ライムがこの神殿にいるのかといえば、神となったライムはこの国に縛られ、ここから動くことはできない。
でも神殿を作ることで、神を呼ぶ場所を作り出すことができる。そのためこの場所では、ライムを顕現させることができるのだ。

でもそれが出来るのは俺だけで、ライムは他の人には二度と会うことができない。
それなのに、ライムは俺を独り占めできるからそれで良いと言う。
でもそれは、なんだか寂しい気がするのだ。

そしてここに来て、俺達がやる事は一つだ。
ヤってヤってヤリまくる。ただそれだけ……。

なんでもこの国の結界を維持するためにはスライムがとにかく必要であり、ライムにひたすら生み出して貰うしかないのだ。

そしてライムは興奮すればするほど沢山の個体を生み出すことができるため、毎回俺は気を失うまで責められ続けていた。
だからそのための精力剤、というわけだ。

なにより生み出すのはライムなのに、ヤられているのが俺なのは、その方がライムが興奮するからだとか……。
しかも生み出されたスライムまで俺を襲いだすから、いつも大変なことになってしまうのだ。

いつかヤリ過ぎて死なないか心配している俺がいる。


「イルレイン様、今回も無理をさせてしまいすみませんでした」

そう謝るライムを見たら、俺は全て許すと言ってしまい。
それに感激したライムにもう一回と迫られた俺は、やはり断り切れないのだった。
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