やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第五章 兄弟編

47、竜と魔法陣(後編)

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それは1000年ほど昔のこと、ブルーパールドラゴンはこの地で暴れる同族を鎮めるために、頂点に君臨していた。

しかし、ある日この地を新天地として求めた人々が攻めてきたのだ。
その戦いは人によるただの蹂躙でしかなかった。仲間達は次々倒れ、最終的にブルーパールドラゴンだけが残った。

そしてそれから数百日かけて、その争いは幕を閉じる。
人間はブルーパールドラゴンを倒すことを諦めて、その地に封印をしたのだ。
しかも、その封印には守護竜となるための契約が刻まれていた。

そのせいでブルーパールドラゴンは死ぬこともできず、魔力を守護の力として吸い取られ続けることになる。
しかし封印されても、ブルーパールドラゴンは諦めなかった。

この国に呪いをかけたのだ。

その呪いに気がついた当時の王は、どうにか呪いを王族だけにかかるようにした。
その結果、この国に生まれ落ちる王族は皆短命となってしまったのだ。

しかし何故か国王になった者だけは、その呪いの影響を受けることはなかった。そして王族として生まれてきた王以外の者達は、30歳を過ぎるといつ呪いが発動するかわからず、40歳まで生き延びた者はいない。

そして時の王は、ついに決断をした。
呪いを解くために、秘術をつかったのだ。
それが異世界からの転生者を呼び寄せることだった。

異世界転生者は、通常よりも魔力や能力を高く得られることがあるため、呪いを解くこともできるはずであると、当時の研究では考えられていた。
そしてこのタイミングで生まれる次の王子が、偶然にも第5王子だったのだ。

その過酷な運命によって迎えられた王子は、すぐに挫折を迎えることになる。
魂がこの世界と上手く融合できていなかったのだ。
そして通常よりも高い魔力量を手に入れたことにより、その力は王子自身を蝕んだ。


「そして、この方法では呪いは解けないと知るや否や、この国の者達は王子を手伝うことをやめ、その者を見殺しにしたのだ。そしてその後も第5王子は、何故か異世界転生者が生まれるようになったわけである」
「そんな……ならどうして俺は産まれてきたんだ……?」

ブルーパールドラゴンの話が本当なら、第5王子は意味もなく生み出されて死ぬ運命と言うことになる。

「王だけはこの事を知っている。だからこそ自分であれば呪いを解けるかもしれないと思い込んだあげく、無謀にも第5王子を作るものがいてもおかしいことではない」
「なら、父上は本当は呪いを解くために俺を?」
「多分そうであろうな。しかしどの王も現実を知り、そして最終的に思うのだ……自分の命を使ってまでして呪いを解く必要があるのか、と」

その言葉を俺は理解できなかった。
自分の命を使ってとは一体……?

「これも王しか知らぬ事であるが、呪いを解くためには王を生贄に捧げなくてはならない」
「王を生贄に……?」

それはつまり、父上を殺さなくてはならないという事に他ならない。

「そんなの無理だ……」
「お前も、やはりそうなのか」
「お前も?」
「そうだ。お前のひとつ前の王子も、とても優しい男であった」

それは早死にした第5王子のことに違いない。
あの王子は後一歩まで行ったわけじゃない。
ここまで辿り着いたというのに、最後の一押しで諦めてしまった人だったのだ。

「そしてあの男は、呪いを解くだけではなく余を解放する方法までも考案してくれた。お陰でお前が余を解放してくれると期待したのだが……」

あの本に載っていた呪いを解くための素材は、その第5王子によるものだ。

「つまり俺が集めていたものは、本来の呪いを解く方法じゃなかったということ……?」
「そうであるな」
「じゃあ、父上を殺す必要は……」
「残念ながらそれは絶対に必須である。何故なら余を封印したものは国王になった男なのだから。それを解くにも国王の血が死ぬほど必要となるのだ」
「そんな……」

悩む俺を見て、ブルーパールドラゴンは優しく語りかけた。

「余はもう疲れてしまったのだ。だからずっと一緒にいてくれる存在が欲しくてたまらないのである。もし、お前が余とともにいてくれると言うのなら、余はおとなしくこの地で眠り続けてやろう。しかし王族にかけられた呪いは解くことはできぬがな」
「それは困る!それにどうせ俺はもうすぐ死んぬんだぞ……」
「大丈夫である。この世界では、ほぼ時が止まっておるからな」

確かに、もう刻の調律の時間は過ぎている筈なのに、この世界が終わる気配はない。
もしかして、俺はこの世界から出られないのだろうか?

「安心せい、お前が戻りたいと言うのならば余はお前を帰してやる。ただし戻るというのであれば、それはお前の父を殺すことを決めたときだけであるがな」
「そんなの、帰れないのと一緒じゃないか!?」
「最大限の譲歩であるぞ。それにお前の兄達には、そんな時間は残されているのか?」

そう言うと、ブルーパールドラゴンは俺が先程までいたホールの様子を空中に映し出した。
そこでは俺が突然いなくなったことによるパニックが起きていた。

「何故、外の時間は動いているんだ!?」
「既に『刻の調律』の効果は切れておる。それにこの世界と外の世界は刻の流れが違うだけで、繋がっていないわけではない。そしてよく見ているが良い。呪われた王族がどうなるのかを……」

そう言って、ブルーパールドラゴンは映像を指さす。
その先ではパニックで叫んでいたギルランド兄上が、突然傾いたのが見えた。
突然倒れたギル兄上を、シル兄上が何とか受け止め呼びかけている。

「ギル兄上は、もう30半ば……まさか王族にかけられた呪いが発動したのか?」
「多分であるが、この魔法陣を発動した際に体にとてつもない負荷を与えてしまったのかもしれぬな」
「じゃあ、ギル兄上は……」
「呪いで倒れたものは1週間もせずに亡くなる。それを救いたければ、お前の父を殺すのだ」
「そんな、嘘だ……」

その映像を茫然と見続ける俺に、ブルーパールドラゴンが軽く背を押した。

「さあ、お前の世界に戻るが良い。そしてお前自身がどうするべきなのかを、考えることだ」

そして次の瞬間、俺はギル兄上が倒れている目の前に現れた。
でも俺は倒れたギル兄上を、唖然と見守る事しか出来なかったのだった。
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