やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第五章 兄弟編

43、二人の王子達

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ウルに呼ばれた俺とルーディアは、急いで会場内に戻ってきていた。
体調が悪くて急げない俺を、ウルが抱っこしているせいで数人がギョッと俺達を見ていたが、今は気にしていられない。

やうやく、人だかりが出来ている所で下ろしてもらった俺は、壇上にいた人物達を見て驚いた。
そこには第1王子であるギルランド兄上、そして第2王子のシルリオン兄上がそれぞれ立っていたのだ。

そしてギル兄上は今も話を続けていた。
その内容に誰よりも驚いたのは俺に違いない。


「今話した通り、俺たちはこの国の第5王子であるイルレインを救うため、お前たちを集めさせてもらった」

このパーティー自体が、俺のためだって!??
その事実に俺は驚きで目を見開いてしまった。
そしてその話を引き継ぐように、今度はシル兄上が話し始めたのだった。

「今回のパーティーでは、様々な分野から若手の方にお越し頂いております。それは、私達があなた方にもっと活躍の場を作りたいと思っているからです。そして今回その一つとして、第5王子であるイルレインを助けるため、私達に協力してくれる者を集めようと考えました。勿論その協力者には、最大の謝礼と名誉を贈ると必ず約束を致しましょう」

その言葉にパーティーに来ていた様々な分野の人達がザワザワと騒ぎ出す。
そしてその話し声は俺の耳にも入ってきていた。

「第5王子ってあの噂の最弱プリンスの事だろ?」

最弱プリンス。
それは庶民の間で噂されている、病弱な第5王子のまだましな呼び名である。

「あれはもう治すことのできない病気だという噂では……?」
「でもこれを成功させれば、今後の人生は安泰と言ってもいいんじゃないか?」
「馬鹿いえ、失敗したら全て俺らのせいにされるに決まってる。それにあの病気って確か……うつるんだろ?」
「ええ、どうやらそうらしいですね……」

うつるなんてそんなことない!と、声を大にして言いたかったが、そんなこと今の俺は言えるわけがない。
それにしても、いつの間にそんな有りもしない噂が流れていのだろうか?

そのせいで誰も自分から参加したがるものはいないようだった。
相変わらず俺は周りから、嫌われている存在なのだと実感してしまう。

でも俺の横にいた男は、やはり普通と違ったのだ。

「すみません、ひとつお聞きしてもいいですか?」

そんな噂なんか気にもせず、ルーディアが真っ先に手をあげる。
そのことに気がついたギル兄上がルーディアを見たため、横にいた俺はバレないように俯いていた。

「なんだ?必要な質問ならば答えてやろう」
「イルレイン殿下の症状をもう少し詳しく聞いても宜しいですか?」

途中からここに来た俺たちは、症状もなにも聞いていなかった。だからこそ詳しく教えて欲しいと言うことで、その部分をカバーするつもりなのだろう。
それにしてもルーディアが、第5王子の話に食いつくとは思ってもいなかった。

「確かに俺達は、イルレインが寝込んでいることしか話していなかったな。イルレインの症状は、倦怠感により体が動かなくなること、それに魔力を流すことができないらしい」
「魔力を……?」
「魔力を流そうとした結果、倒れたことが何度もある」

確かに病気を治す一貫で、何度か魔力を流そうと試したことはあったが、全て悪化して終わっていたことを俺は思い出す。
そして、それについて思い当たることがあったのは、俺だけじゃなかった。
隣にいたルーディアも、その一人だったのだ。

「成る程、わかりました。では私はその話に協力させてもらいます。ここにいる、セイと一緒に」
「っえ!?」

突然名前を呼ばれて、俺は驚きのあまりルーディアを見返していた。
そんなルーディアは俺に小声で話しかける。

「少し気になることがありまして、魔力を流せないというのはセイと同じですよね?だからもしかすると、第5王子とセイは同じような病気なのかもしれません。そうだとしたら、その研究に参加すればセイを治す別の方法がわかるかもしれませんからね」

ルーディア!なんてこった!?
賢すぎるその頭は、俺と第5王子をある意味イコールで結んでしまったようだ。
ただ、俺自身が第5王子だとは全く思っていないようで、セイのためになりそうだからという理由で参加するつもりなのだろう。

ルーディアに俺の内心がバレないように、冷静を装って軽く頷いておく。
そしてボロが出ないよう、すぐに兄上達の方へと視線を戻したのだった。

「そこの二人は協力してくれるのだな。それで、もう他にはいないのか?」

ギル兄上はパーティー会場をゆっくりと見回したが、他に手を挙げるものは誰もいなかった。
それを、横で見ていたシル兄上は首を軽く振り、盛大にため息をついていた。

こんなにも大規模なパーティーを開催したのに、第5王子を助けようと手を貸してくれたのは、たったの2人しかいなかったのだから。

「ならば仕方がないな。今の話は内密にお願いする。約束を破ったものはわかっているだろうな?」

ギル兄上の威圧的な態度に、会場にいた面々は顔を青白くさせて、コクコクと頷いていた。

「私たちは退出するが、皆はパーティーをそのまま楽しんでほしい。そしてそこの二人は俺たちについてきてくれ」

そう言われたらついて行くしかない俺は、ずっと横で楽しそうにしていたウルを、その場に残すことにした。
まったく俺はピンチだというのに、ウルはニヤリと笑いながら呑気に手を振っていたのだ。本当に憎たらしい奴め……。

とにかく兄上達にバレないことを祈りつつ、ルーディアにそっと支えられて俺は会場を後にしたのだった。
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