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第五章 兄弟編
42、解呪方法?
しおりを挟むデオル兄上と別れた俺たちは、とりあえずテラスに出ることにした。
休憩室だと他人の視線が気になるからだ。
テラスには座れるように椅子が設置されており、綺麗な夜空を見ながら休憩できるようなっている。
そして俺は今、何故かルーディアの膝の上に乗せられていた。
確かに今の俺はかなりふらついていたようで、一人で座る事も出来なさそうに見えたようなのだ。
いや、流石に一人で座ることぐらいは出来るから!
というツッコミも虚しく、今もルーディアの膝の上で支えられているのだった。
「セイ、本当に大丈夫ですか?なんだか顔が赤くなってきましたけど?」
「い、いや、これは恥ずかしいだけだから気にしないでくれ……」
「ああ、そうでしたか。でも大丈夫ですよ、周りには誰もいませんから」
そういう問題ではないのだけど、今はルーディアの親切心に甘えることにしよう。
正直これ以上無理はできないし、このあと戻ってくるだろうウルに抱き上げられながら、会場をまわるのだけは嫌だった。
「ところで、わざわざ俺に会いに来たんだから何か用があったんだろう?」
「そうなんです!ついに、わかったんですよ!!」
「わかったって、何が?」
「セイを治すために必要だった、7つの素材を使う方法が、ですよ!」
「……え?」
ルーディアは今なんて……いやいや、確か素材の使用方法がわかったって言ったよな?
俺はその言葉が信じられなくて、もう一度聞いてしまう。
「頼む、もう一度言ってくれ!」
「あの素材の使用方法がわかったんですよ!!」
俺は嬉しさのあまりそのままルーディアに抱きついていた。
だって、今まで苦労してきた事が全て報われるかもしれないのだ。
「セイ、今から言う話は嘘だと思うかもしれません。でもそれが本当にセイを治すことに使える方法なのか、私もちゃんとわかっていないのです。でもセイなら何かわかるかもしれませんので、よく聞いて下さいね」
「わかった」
俺は頷くと、ルーディアは話し始めたのだった。
「僕が調べた結果、セイがかかっている病気まではわかりませんでしたが、この素材を使った魔法陣を見つけたのです」
「魔法陣?」
「そうです。とても古い文献で見かけたのですが、素材の名前が全て一致したものは、僕が調べた中ではそれだけでした。そしてその魔法陣は『竜の封印を解く』ために使われる魔法陣なんです」
竜の封印を解く?
その言葉で初めに思い浮かべたのは、この国の守護竜ブルーパールドラゴンのことだった。
確かに俺の守護竜でもあるけど、呪いと関係あるようには思えない。
「本当に、それしか見つからなかったのか?」
「はい。でも謎の奇病というものは、思いがけない物が原因の場合もありますし、一度試すだけ試してみるというのはどうでしょうか?そうはいっても竜の封印されている場所に、心当たりもないですから何処で、という提案は出来ませんが……」
素材は沢山準備してあるため、一度試してみるというのは一理ある。
だとしても俺が知っている竜はこの国の守護竜だ。
その竜の封印を解くと言うことは、この国を危険に晒すことと同じである。
だからそんな簡単に出来ることではない。
そして俺たちはその先の解決案を思いつくことなく、ただ夜空を見上げるしかできなかった。
暫くそうしていると、ルーディアは俺に話しかけてきた。
「あなたの病気を必ず直して見せると約束したのに、こんなにも不甲斐なくてすみません。それにとても期待させてしまったのに、期待外れでガッカリしましたよね?」
「そんなことないから安心しろ。ルーディアは何も情報が無い中から、それを見つけたんだ。それだけでも凄いことだと俺は思ってる。それにルーディアは俺のこと、こんなにも助けてくれてるじゃないか。俺には返せるものがないから、申し訳ないよ」
「いいえ、僕はいつもセイから貰ってばかりです。セイは僕が知らなかった感情をひとつ教えてくれましたから」
そう言うとルーディアは俺の顔を両手で挟み、無理矢理目を合わせた。
「本当はセイの病気を治してから言うつもりでした。でも、セイの周りにいる人のことを考えたら、次会ったときに言おうと決めてたんです」
「ルーディア……?」
俺を見上げるその瞳は、愛おしげにこちらを見つめていた。
「セイ、僕はあなたのことが好きみたいです」
その告白を俺の頭は上手く咀嚼してくれなかった。
それなのに目の前にある紫色の瞳から、俺は目を離せない。
「こんな感情、僕は初めてなんです。その相手が男であるセイなのが今でも不思議で……それでもこの気持ちを僕は抑えることが出来ませんでした。こんなこといきなり言われたら戸惑うと思いますし、迷惑なのかもしれません。だから答えは今じゃなくてもいいです。ですからどうか、僕が想いを寄せることを許して頂けませんか?」
許すも許さないも、ようやくそれを理解し始めた俺の頭は、ルーディアの言葉で軽くパニックになっているところだった。
え?ルーディアも俺のことが好きだって!?
そんなことある!!?
これじゃあウルが言っていた、男のハーレムが本当に出来上がっていることになってしまう。
実はこの呪いには、男が惚れやすくなるという副作用がついていたりしないだろうか?
そう思いかけ、俺はすぐに否定する。だって初代第5王子はちゃんと結婚して子供がいた……。
つまり、呪いなんて関係なく男である俺のことを、皆は好きだと言ってくれたのだ。
そして今の俺は、目の前にいるルーディアと見つめ合っているだけなのに、何故か心臓が高鳴ることに戸惑っていた。
あ、あれ……俺ってばまさか、ルーディアにもドキドキしてる?
もしかして俺、物凄く惚れやすかったのか……!?
一度頭が恋愛脳になったせいなのか、ダンとライムそれにルーディア、それぞれのことを考えると俺は胸が苦しくなってしまう。
そんな俺が本当に好きなのは誰なのか、頭が混乱していてもう訳がわからなくなっていた。
それにこのままでは、優柔不断最低野郎になってしまうため、とにかく今は考える時間が欲しかった。
「ルーディア、その気持ちは嬉しい。でもやっぱり戸惑ってしまってすぐには返事ができないと思う。だから俺に少し時間をくれないか?」
「……わかりました。あなたに気持ち悪いと拒否されなかっただけ、マシですから」
「俺がそんなこと言うわけないだろ!」
「ふふ……そうですね」
そう笑うルーディアを見つめて、そういえば顔がめちゃくちゃ近かったことを思い出し、なんだか恥ずかしくなる。
顔が赤くなる俺を見て、ルーディアも顔を赤くする。互いに見つめあっていると、そのままゆっくりと唇が近づいてきていた。
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「お二人さん!お楽しみのところ悪いけど、会場で大変なことが始まったから早く行った方がいいよ!!」
その声の持ち主はウルだった。
ハッと驚いた俺は、顔を赤くしたまま咄嗟にルーディアから離れたのだった。
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