やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

文字の大きさ
上 下
55 / 110
第四章 悪魔召喚編

40、葛藤

しおりを挟む

ダンと別れて部屋に戻ってきたその日、俺は泣き疲れたままベットに倒れ込んだ。
そしてそれからの数日間、俺の心は荒れに荒れていた。

まったく、一体全体何故なのか!?

俺はハーレムが作りたかったはずなのに、何故か男を好きになるし。
好きだと思った男は、俺のことを愛してると言ったのに、俺の前からいなくなるし。
そして惚れてると言ったくせに、戻ってこない奴もいる。


「あーー!!!俺は一体どうしたらいいんだ!!」

俺は我慢できずに、ベットの上で声を上げていた。
そんな俺を見て、相変わらず部屋にいるウルが呑気に声をかけてくる。

「おー、またやってる」

そうなのだ、もうかれこれ何度目かわからないほど俺は叫んでいる。
だって思い出すたびに、何故かイライラしてしまうのだから仕方がない。

「いいねぇ、なんか面白くなってきたじゃん」
「何処が面白そうなんだよ!!」
「全部?」

こいつの態度が、さらにイライラを増長しているのではないかと思ってしまう。
でもウルはダンのことを何か知ってるんじゃないかと疑っているため、追い出す事もできない。

「本当に、ウルはダンがあんなこと言った理由に心当たり無いのかよ?」
「全くないね……って、その顔は信じてないね?」
「だって仕方がないだろ。あんなこと言っていなくなったんだから……」

ダンには、呪いを解くための素材を取りに行く手伝いをしてもらっていただけで、俺はその種類や数については何も教えていない。
それなのに、何故かダンは素材集めが終わったことを知っていた。

でも前にアイスドラゴンを倒したときは、俺の呪いについて何も知らなそうな顔をしていたのに……あれは演技だったとでも言うのだろうか?

「うーん、俺にはさっぱりだよ」
「でも、久しぶりに会ったんだろ?前と違うところがあったりしなかったのか?」
「前と違うところねぇ……君にだけ甘々なのは変わってないけど、そういえば俺を押さえ付けているときの雰囲気が全くの別人だった気がする。それとイルのことを自分のもの、なんて言ったときの顔は……以前のダンでは考えられない顔してたね」

『俺のもの』発言は、あの声を思い出して顔が赤くなるからやめてほしい。
でも、最近ダンが変わったのは間違いないようだ。

「そういえば、ダンって出会った頃は昔の記憶が無いって話をしていた気がするよ?」
「記憶がない?」
「うん、だからもしかすると記憶が戻ったとか……?そのせいでイルといられなくなっちゃったのかもねぇ」

ダンが記憶喪失だったなんて、そんな話は聞いたことがない。
そもそも、ダンがソロで冒険者をやっていた話さえも聞いたことがないのだ。

「でも、俺のものだっていったくせに、俺の前から居なくなる意味がわからないんだけど!!」
「まあまあ、ある意味両思い?なんだからいいじゃない」
「全然よくない!!それに、俺はまだ完全にハーレムを諦めたわけじゃないからな!」

その発言に、ウルは首を傾げるとニコリと笑っていったのだ。

「え?ハーレムって女の子じゃないといけないの?」
「そ、それは……そうじゃないのか?」

ウルにはハーレムについて話してある。
というか、こいつの日常生活はハーレムみたいな生活をしてやがったので、俺がキレて話をしてしまったのだ。

「じゃあ言い方を変えるよ。イルは男の人達でハーレム作ってるね。凄いや!」
「…………え?」
「だって、イルの周りにはイルの事が大好きで大切に思ってる男性しかいないじゃないか。俺も含めてさ!イルおめでとう、ハーレムだよ!よかったねぇ~」

無駄に拍手までするウルの言葉で、俺は初めて気がついた。
おかしい、俺が作りたかったハーレムはこうじゃなかったはずなのに……なぜだ?

「ほら。夢が叶ったんだから、後は自分の本当の気持ちを大切にする事が大事じゃない?」
「ウル……流されてる気もするけど、確かにそうだよな。今は混乱して頭の整理がつかないだけかもしれないし、もう少し考えてみる」

だって俺はまだ、ダンのことを好きだと認めただけで、それ以外のことには全く頭が回っていなかったのだ。

「それで、最終的に俺が全部壊してイルを手に入れれば全て解決じゃない?」
「おいぃ!そういいながら、俺を押し倒すな!!」

やはり、ウルへの好感度は上がったり下がったりが激しい。
こいつはただ俺を困らせて、楽しんでるだけなのかもしれないけど。

「大丈夫大丈夫、一線越えようとすると君のその指輪が反応してくれるからさ」

それはライムが俺にくれた指輪の事だ。
あれからちゃんと話せていないため、指輪の事だって聞けていない。
俺は指輪を見て、こんなに長いことライムが帰ってこないなんて……と、なんだか寂しくなってしまった。

……ライム、早く帰ってきてくれ。
ライムがいないと、俺は……俺は凄く寂しいんだ。

そう思っただけなのに、俺は何故かライムの唇が当たったときの感触を思い出してしまった。
そして突然、ドキドキと俺の心臓が早くなる。

あれ?前までこんな風にならなかったのに、なんでいきなり……それにこの気持ちは?
このとき初めて、俺はライムを恋愛対象として意識した。

「あれ?イル、顔真っ赤だけど大丈夫?からかいすぎて熱がでたかもしれないね。もう寝た方がいいよ」

ウルがそういいながら、俺の体勢を整えて布団を被せてくれた。
なんだかんだいって俺の世話を焼いてくれる。
そんないい奴だからこそ、憎めないのかもしれない。

こうして顔を赤くした俺は、さらに頭を悩ませるのだった。


何故だ、おかしい。
俺はダンのことが好きなはずなのに……ライムの事を考えても、あのときのことを思い出して、恥ずかしくて顔が熱くなってしまう。
何なんだこの気持ちは───。

まさか俺は二人とも好きってこと……?
そんな、俺ってば超優柔不断野郎なのか!!!?

そう思いながら、しばらく布団にこもる俺がいた。
こうして俺は数日さらに頭を悩ませることになってしまったのだ。

そしてせっかく全ての素材が集まったのに、いまだにその使用方法はわかっていない。
きっとダンは何かを知っていたのかもしれないけど、もういない相手なのだと思うと俺はさらに落ち込んでいた。

一応ルーディアには既に素材が全部揃ったことを手紙で伝えてある。
だから次会うときまでには何かわかればいいのだけど……。

なんてことを考えている間に、王宮で行われるパーティーが開かれる日は、もうすぐそこまで迫っている事を、俺はすっかり忘れていたのだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...