やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第四章 悪魔召喚編

36、悪魔の溜息とは?

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いまだ両手を押さえつけられたままの俺は、ウルの笑みを見てこの窮地をどう脱するべきか考えていた。
とにかく今からでも断れるのか、ウルに聞いてみる。

「もし契約しないと言ったらどうするんだ……?」
「そうだなぁ、せっかくこんなところまで来たのに何もないのは嫌だから、嫌がらせにセイが王子様だってことばらしちゃうかもしれないな~」
「ぐぅ……ただの脅しじゃないか!……じゃあ、わかったよ。そのお願いとやらを俺に教えてくれ……」

契約してもしなくても、もう逃げる事は出来ない。
それならとりあえず聞いてみて、なるべくましな内容であることを祈るしかない。

「それはもう決まってるんだ。イル、俺のパートナーになってよ」
「そ、それは……」
「もちろん条件をつけてあげる。まあ、そうならないと俺が困るって言うのもあるからね。それにその条件は、イルにとって悪ことじゃないと思うよ?」

首を傾げるこの男の言葉は全く信用できない。
でもこいつのパートナーになりたくない俺は、とりあえずそれを確認することにした。

「……わかった、条件を聞く。だから早く手を離せ」
「ふふ、大人しいのも可愛いけど、やっぱり抵抗されると燃えるよね……」
「いいから、ちゃかしてないで早く言えよ!」
「そうだった。危ない危ない、ついイルの可愛さで我を失うところだったね。じゃあ教えてあげる、条件は『イルがもし進化した場合、僕と誓約をすること』だよ」

その条件に俺は首を傾げてしまう。
だってこの俺が、進化する可能性なんてあるわけが無い。
それにこの先どれだけ生きられるかも、俺にはわからないのだ……。

「イルは自分が進化できる存在な訳がないと思ってるでしょ?でも俺にはわかるんだよ、イルは絶対に進化するってね。だからそうならないと思っているのなら、俺と契約を結べばいいのさ」
「……わかった。俺はお前と契約を結ぶ」
「本当に後悔しないね?」
「ああ。俺は進化なんてしないからな」

そう言うと、ウルは笑いながら俺の手を離した。
アッサリ離したことに驚き、ウルを見る。

「じゃあ契約しようね。でも確かイルは魔力で契約出来ないんだよね?ならとりあえず俺の方に契約を残すから、手を出して」

俺は警戒しながら言われた通り手を差し出す。
その指を掴んだウルは、俺の人差し指をパクリと口に加えた。
そのことに驚いていると、チクリと痛みが走った。

「いっ……」
「ごめんね、痛かったかな?契約にはどうしても血が必要になるからね。じゃあそのまま舌の上に血でサインを書いてね」

言われた通り舌の上にサインを書こうとして、そのヌルヌルとした触り心地が気になってしまう。
それに血が出ているせいなのか、凄く指を意識していた。
ようやく書き終えた俺は、すぐに指をウルの口から離す。

「あらま、すぐに指を離しちゃったか。もっと触って欲しかったのにな」
「ば、馬鹿なこと言うな!!それで契約出来たのか?」
「ほら、見る?」

ベロっとだしたウルの舌には契約を刻んだ魔法陣が浮き出ていた。どう言う仕組みかわからないけど、とにかく契約出来たみたいだ。

「契約出来たから言うけど、これ別に舌じゃなくても良かったんだよ」
「はぁぁあ!!?」
「どうせ契約終了するとき誓約するから、俺的には誓約は熱い接吻にしたくてね。凄く良いアイデアだと思わない?」
「おい、ふざけんな!接吻なんて誰がするか!!人が恥ずかしい思いで書いたって言うのに!!!」
「ふーん、こんな俺でもドキドキとかしてくれたんだ?」

そう言われて、先程少しでも意識してしまったことに自分で驚き固まってしまった。
数分動かない俺を見て、ウルは笑い出したのだった。


「まあ、今はいいや。それで俺にお願いって何かな?」
「あ、ああ。俺は『悪魔の溜息』という素材を探しているんだけど、ウルは悪魔だし何か知らないか?」

その名前を聞いて、ウルが瞳を見開いた。
知っているのか知らないのかわからない反応に、俺はウルを見つめる。

「……まさかそれだけのために俺と契約したの?」
「え?それだけ……?」

嫌な予感に俺はウルを問い詰めた。

「それだけってなんだよ!探しても全く見つからなかったんだぞ。ウルは『悪魔の溜息』が何か知ってるんだな……」
「ああ、知ってるよ。でも聞いても怒らないでね」
「…………わかった、怒らない」

俺の態度にウルはしょうがないと、近くにある金色に輝くクマの置物を手に取った。
そしてウルから、魔力が込められた灰色の息がその置物にかかる。
するとその置物は瞬く間に灰色に染まった。それはまるで、石化したようにみえた。

「はい、これが『悪魔の溜息』」

そう言って、ウルはその灰色に変わったクマの置物を机の上に置いたのだった。
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